機能的口腔ケアの訓練法について言語聴覚士が解説

機能的口腔ケアは、摂食嚥下リハビリテーションの間接訓練(食物を用いずに行う訓練)に相当します。口腔ケア時に行えるものとして、口腔周囲のマッサージや口唇・舌・頬の運動訓練などがあります。

間接訓練には、自分の力で動かして運動する方法(自動運動)と、自分では行わず介助者が行う方法(他動運動)があり、患者の状態に合わせて選択します。
これらの訓練内容をふだんの口腔ケアのなかに組み込むことで、口腔ケアの効果をさらに高めることができます。

今回は主に、口唇・舌・頬の運動訓練を紹介していきたいと思います。

口唇・舌・頬の運動訓練

口唇・舌・頬の運動訓練は、口腔器官の筋力・拘縮・感覚などの低下を予防し、主に食べ物を咀嚼し飲み込みやすい食塊(飲み込みに適した1つのかたまり)にする(準備期)、舌によって咽頭へ送り込む(口腔期)という2つの機能向上を目的として行われます。

1.      口唇の運動訓練
他動運動の場合、第1指と第2指で上唇を軽くつまんで伸ばす、収縮と伸展運動を繰り返します。下唇に対しても同じように行います。指示に従える場合は、同様の動きを自動運動として行ってもらいます。

2.      舌の運動訓練
他動運動の場合、まずは湿ったガーゼで舌の前方を包むようにしっかりと保持し、前方、上方、左右の側方への運動を行います。自動運動ができる場合は、舌を突き出す、挙上する、左右への側方運動を行ってもらいます。
視覚的フィードバックができる場合は、鏡などを用いて動きを見てもらいながら行うと効果的です。
また、抵抗運動が可能ならば、ブラシの背などを使って負荷をかけて行うのもよいでしょう。

3.      頬の運動訓練
頬全体は手のひらで円を描くように、ゆっくりとストレッチをかけながらマッサージを行います。ガーゼを巻いた指や歯ブラシの背、スポンジブラシやくるリーナブラシなどを用いて、内側から頬の筋肉を伸ばす運動を行います。

4.      運動訓練前後の注意点
これらの運動は、口腔内が乾燥している状態で行うと痛みをともなったり、口腔内の粘膜を傷つけたりするため、口腔内が湿潤していることを確認して行います。
乾燥している場合は、保湿剤などを塗ってから行うとよいでしょう。
また、口腔ケア後は、口腔内への刺激や口腔内が湿潤することによって嚥下反射が誘発されやすくなるため、空嚥下を促す嚥下運動を取り入れるのも1つの方法です。

協調運動訓練

可能であれば口腔ケアはできることは自分でやってもらうことも大切です。
歯ブラシを自分で持ってブラッシングを行うことは、肩から指先までの力加減や協調運動となり、食べるための動作のリハビリにもつながっていきます。
また、ブクブクうがいは、水を口腔内にためてうがいをするために、口唇・舌・頬の運動が必要です。唇の力が不十分だと口から水が流れ出たり、ブクブクしたときに口唇の隙間から水が飛び出たりします。
ブクブクという動きができなければ頬の運動機能の低下、水を含んだだけでむせる場合は舌の運動機能や嚥下機能の低下が考えられます。
明らかに嚥下機能に問題がある場合には危ないため避けますが、意識がしっかりしており、指示動作ができて嚥下機能が保たれている場合、口唇・舌・頬の運動や一連のこれらの動きによる協調運動の訓練として、「口に水を入れる→口に水をためる→ブクブクする→強く吐き出す」とメリハリをつけて意識的に行ってもらうのもよいでしょう。



参考文献

日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会.訓練法のまとめ(2014 版).日本摂食リハビリテーション学会雑誌.181),201455-89.



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