吃音の病因について





遺伝子異常

双生児研究から、発達性吃音の原因の7割以上が遺伝子異常によると考えられます。しかし遺伝形式や浸透率は明らかではなく、また、家族歴がある者は半数程度です。連鎖解析等から、発症には複数の因子が関与すると考えられています。

脳領域間の接続異常

MRIの拡散テンソル画像法(DTI)で、左腹側運動野(発話関連の器官の領野)の深部において、左弓状束ないし大脳基底核との接続神経線維の減少が生じます。これによって、発話関連運動野と、ブローカ野や大脳基底核との接続が不良になり、円滑な連続発話が困難になると考えられます。ほかに、小脳脚や脳梁等の白質の異常も報告され、予後との関連が指摘されています。

 通説の否定

「周囲が吃音だと考えることで吃音になる」という吃音診断起因説が日本では永らく流布しており、親は児の吃音を気がついていないかのように振る舞うということがよく行われます。しかし、「モンスター研究」という孤児院での人権無視の実験の結果、この説は否定されています。親が児の吃音を無視する態度を取ると、児は吃音がタブーであると思い込み、話したり相談したりできなくなります。家庭では、吃音についてオープンに話すことができる雰囲気を作り、児を心理的に孤立させないことが重要です。

小児保健研究  第77巻 第1号,2018 より参照



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