幼児期後期の声道の特徴
山根ら(1990)の随意運動発達検査によると、「パパパ」「タタタ」「カカカ」など一音の繰り返しは2歳代でできるが、「パタカ」のように構音場所が異なる三音の連続発話は3歳5カ月、「パタカパタカ」を繰り返すのは5歳となっています。
このように幼児期後期になると、声道の拡張とともに口唇・舌・喉頭など発声発語器官の協調運動も発達してきます。
幼児期後期の音声知覚
4歳を過ぎると「ねこ、にんじん」といった個々の名称だけでなく、「動物、野菜」などカテゴリーの名称を理解できます。
しかし語彙はまだ少なく、おとなの会話の中で知らない語よりも知っている語をより正確に知覚します。
5歳では子供かるたをほとんどとれるようになり、数や文字に対する興味も出てくる。ことばの意味を変える音韻の違いにも気付き、「た」のつくことば、「か」のつくことばなどを見つけることができます。
また「すいか」を「す」と「い」と「か」に分解し、「か」は3番目の音と抽出することができます。
幼児期後期の音声産生
幼児期前期に産生できるようになった音に加え、摩擦音(は行、さ行)、破擦音(ち、つ)、弾音(ら行)などを正しく言えるようになります。
この中でも特に難しいのは「さ、す、せ、そ、つ、ず」であり、これらの音は6歳までに獲得できれば個人差と考えてよいでしょう。
健常な発達過程でみられる音産生の誤りの規則性を音韻プロセスといいます。
たとえば音の省略(テレビ→テエビ)、構音場所の前方化(とけい→とてい)、破裂音化(らっぱ→だっぱ)、破擦音化(すいか→ちゅいか)、硬口蓋化(つくえ→ちゅくえ)などがあります。
中村(2015)は2歳から6歳の健常なこどもを対象に音韻プロセスの使用率を調べたところ、2歳台で多く出現した音韻プロセスは年齢とともに減少し、5歳台ではほとんど使われなくなっていると報告しています。
つまり、健常発達のこどもは6歳までにはすべての日本語音を正しく産生できるようになります。
5歳になると経験したこと、これからしようと思っていることなどを話すようになり、「しりとり遊び」や「なぞなぞ」を楽しむようになります。
参考文献
1 ) 中島 誠:音声の体制化過程.児童心理学講座3 言語機能の発達,第11 版,桂 広介,園原太郎,波多野
完治,他(監),33‒67 頁,金子書房,東京,1982.
2 ) 山根律子,水戸義明,花沢恵子,他:改訂版 随意運動発達検査.音声言語医学31:172‒185,1990.
3 ) Bernthal JE,Bankson NW(著),船山美奈子,岡崎恵子(監訳):構音と音韻の障害―音韻発達から評価・
訓練まで,協同医書出版社,東京,2001.
4 ) Cheng HY, BE, Goozee JV, et al:Electropalatographicassessment of tongue‒to‒palate contact patterns and variability in children, adolescents, and adults. J of Speech, Language, and Hearing Research 50:375‒ 392, 2007.
5 ) 中村哲也,小島千枝子,藤原百合:健常発達における音韻プロセスの変化.聖隷クリストファー大学リハ
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