幼児期前期の声道の特徴
乳児期に比べると声道が長くなり、咽頭腔や口腔のスペースも広くなります。山根ら(1990)の随意運動発達検査によると、舌運動の90%通過年齢は「舌をまっすぐ前に出す:2歳2カ月」、「舌を出したり入れたりを交互に繰り返す:2歳8カ月」、「舌で下口唇をなめる:2歳11カ月」、「舌で上口唇をなめる:3歳10カ月」となっています。
舌の随意運動は前後方向の運動が最初に獲得され、次いで下方向、最後に上方向の運動が獲得されていきます。
幼児期前期の音声知覚について
1歳を過ぎると、「ブーブーは?」などの問いに指差しで応えるようになります。1歳3カ月頃には「お姉ちゃんにあげて」など簡単な指示に従えるようになります。
1歳6カ月頃には、気に入った絵本を繰り返し読んでもらいたがったり、絵本なしでも簡単な物語を喜んで聞くようになります。
2歳から3歳にかけて、上・中・下など位置関係を表すことばや色名を理解するようになり、「テーブルの上の赤い箱とってきて」というような指示に従えるようになります。
また「ご飯を食べるとき使うものはなに?」と聞くとスプーンを指さすなど、物の用途がわかるようになります。
同じ物語を何回も聞きたがり、間違えると怒って訂正したりします。このように短いことばから次第に長い発話を理解するようになります。
幼児期前期の音声産生について
生後1歳前後から「ワンワン」などの有意味語を使い始めますが、四つ足の動物や毛の生えたものをすべて「ワンワン」と言うなど、まだ言語の機能としては未熟です。しかし、音声を表現の手段として使用するという基本的な構えが獲得され、ここから母国語音声の体制化が進みます。
初期の単語に現れる音声的特徴は、母音では「ア、エ、オ」などが多く、舌の緊張を伴う「イ、ウ」はまれです。
子音では破裂音「パ、タ、カ」が最も多く、次いで鼻音「マ、ナ」が使われますが、構音操作が見てわかりやすい「パ」「マ」など口唇音を含む単語が多いです。
1歳6カ月になる頃には25個程度のことばを言えるようになり、1歳9カ月には「パパイッタ」など2語文を、2歳頃には「パパアッチイッタ」など3語文を話すようになります。
3歳頃になると、電話ごっこなど交互に会話することを楽しむようになり、絵本を見て自己流の物語を話すようになります。
すべての日本語音を正しく産生するのは4歳以降になります。
参考文献
1 ) 中島 誠:音声の体制化過程.児童心理学講座3 言語機能の発達,第11 版,桂 広介,園原太郎,波多野
完治,他(監),33‒67 頁,金子書房,東京,1982.
2 ) 山根律子,水戸義明,花沢恵子,他:改訂版 随意運動発達検査.音声言語医学31:172‒185,1990.
3 ) Bernthal JE,Bankson NW(著),船山美奈子,岡崎恵子(監訳):構音と音韻の障害―音韻発達から評価・
訓練まで,協同医書出版社,東京,2001.
4 ) Cheng HY, BE, Goozee JV, et al:Electropalatographicassessment of tongue‒to‒palate contact patterns and variability in children, adolescents, and adults. J of Speech, Language, and Hearing Research 50:375‒ 392, 2007.
5 ) 中村哲也,小島千枝子,藤原百合:健常発達における音韻プロセスの変化.聖隷クリストファー大学リハ
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