注意欠如・多動症(注意欠如・多動障害)の特徴などを解説

注意欠如・多動症の特徴

中核症状として、不注意、多動、衝動性を特徴として、幼少期に発症し持続的な経過を取ることが多い発達障害です。小児期に保護的な環境にあったり、構造化された環境のなかにあると事例化せず、成人になって事例化することがあります。DSMの診断に基づいて診断がなされることが多いです。児童・思春期と成人では診断閾値が異なります。

 注意欠如・多動症の診かた

診断は問診、行動観察、第三者(教師、上司など)からの情報提供によって評価し行われます。問診では、受胎から成育、発育歴、現在に至るまでの症候を丁寧に行う必要があります。新規な場面では、普段の行動をある程度コントロールできるので、過度に診察の場面の症候に診断時依存せず、縦断的な経過観察が重要です。

検査とその所見の読みかた

成人においてはASRSが、スクリーニングテストとして用いられます。DSMに基づいて作成された評価尺度(小児・思春期:ADHD-RSConners3、成人:CAARS)を用いて、症状の重症度、治療による変化に関する情報が得られます。WISC-Ⅲ、KABC-Ⅱ、田中-ビネーなどの知的検査、DN-CASなどの認知機能検査によって、認知プロフィールを理解することにより、患者への治療計画・介入計画を立てることが容易になります。

CBCL-TRFなどの親や教員による子どもの行動全般を評価することも必要です。また、抑うつ尺度、不安尺度を用いて二次障害の把握を行うことも重要です。比較的年齢が高い小児で発症がみられた場合には甲状腺機能、稀ではあるが白質ジストロフィーとの鑑別などのためにMRIなどの画像診断が必要なこともあります。成人期での事例化した症例では、一般的な採血、MRIなどの画像検査を行うことが推奨されています。

鑑別すべき疾患と鑑別のポイント

l  うつ病
l  双極性障害:エピソードが挿話性かどうか、症状が変動するかどうかが重要な鑑別のポイントです。
l  不安症:しばしば鑑別が困難であるが、不安、心配の存在、自律神経症状の有無などによって鑑別を行います。
l  児童虐待:被虐待児はしばしばADHD様の症状を呈することがあります。詳細な成育歴をとることによって明らかになることもあります。
l  てんかんなどの器質的な疾患との鑑別:身体的な鑑別のため、神経学的所見、脳波、画像診断などが必要となってきます。
l  重篤気分調整症:持続した易怒的感情と些細なことでのかんしゃく発作を特徴とし、しばしば鑑別が困難なことがあります。

 予後判定の基準

多動は、学童期に改善することがしばしば認められるが、他の症状は持続することが多い。併存症の有無が予後に影響を与える。治療的介入により寛解に至った期間が数年にわたる症例は、その後の予後がよいと報告されています。

吃音の現状について


小児の吃音はほとんどが幼児期に好発する発達性吃音です。

近年、その原因探索が進み、遺伝要因が7割以上であることや、脳内白質の異常とそのために言語関連の脳領域間の機能接続の不良が明らかになってきています。

これらにより、吃音の原因が親の育て方に問題があるからではないことと、親が吃音に気がつかない振りをしても吃音の改善にはあまり貢献せず、却って児の心理的な孤立を招くので問題があると考えられるようになりましましました。

幼児期に大多数は自然治癒しますが、2年以上かかることも多く、その間は専門家のサポートが必要になります。

また、自然治癒の割合は高いものの、発症率も高いので、自然治癒しない絶対人数も多いです。

そのため、放置せずに児が話しやすいように環境調整をしつつ、定期的に経過を観察し、苦悶や悪化がみられるか、就学前1年程度までに改善がない症例には直接的介入を行います。

近年は有効率が高い介入方法が増えており、できるだけ幼児期に積極的に治療することが勧められます。

学齢中期以降は自然治癒が少なくなり、からかいやいじめが起きやすく、心の傷を残すことがあるので、環境調整や心理面を含めた総合的な対応が必要です。

治療は行動療法を中心として発話の自動化を目指し、吃音についての教育や認知行動療法を導入することで、自尊感情の維持・向上を図るようにします。

吃音は一般に、「どもり」として知られていますが、マスコミでは差別用語として使用禁止となっているため、医学用語であってあまり一般には知られていない吃音として報道され、吃音者・児には情報が到達しにくい。

最近はインターネット検索の普及でこの問題は小さくなりつつありますが、啓発のためには吃音の表記だけでは問題があることに留意が必要です。

吃音には小児期に他の原因となる疾患がなく起きる発達性吃音と、脳損傷によって起きる神経原性吃音と、成人発症の心因性吃音があります。

小児期にみられる吃音のほとんどは発達性であり、成人でも9割以上は発達性吃音であります。

吃音があると、笑われ、からかわれ、いじめられることも多く、年齢とともに症状が進展し、PTSD様の反応を示したり、多人数の前では強い羞恥心で話せなくなるなど、重症化することも多いです。

社交不安障害やうつを続発することも稀ではありません。

知的には正常な者がほとんどですが、吃らないこと、あるいは吃りを隠すことが人生の最優先事項となってしまい、自己実現を困難にすることがあります。

しかし、わが国では吃音の専門家が少なく、特に青年期以降は専門家へのアクセスが不足するため、実質的に吃音の治療が受けられない地域も多いのが現状です。

一方、世界的にはここ20年ほどの間に原因解明や治療対応が進んでおり、ガイドラインや詳細なレビューも発表されています。

次のページでは、症状や検査、診断について解説してきます。

ケースマネジメントの定義、適応、分類、手順について解説します。

ケースマネジメントの定義

ケースマネジメントとは、多様なニーズをもった人々が、自分の能力を発揮し健康に過ごすことを目的として、フォーマル・インフォーマルの支援ネットワークを組織し調整し維持することを、計画的に実施する人やチームの活動である(参考文献より)。日本の精神障害領域では1990年代後半から注目され始めました。
法制度や強調点で名称が変わることがありますが、日本の介護保険や障害福祉領域では「ケアマネジメント」と表記されることが多いです。
英国では「ケアプログラムアプローチ」とよばれることがあります。

ケースマネジメントの適応

単一サービスでは支援が困難な複雑なニーズをもち、慢性の障害がある人がケースマネジメントの対象になります。
疾病や障害が一過性の場合は治療やリハビリテーション、緊急ニーズが強い場合には救急サービスといった、専門的な単一サービスが優先されます。
ケースマネジメントは対人援助の基礎技術であり、さまざまな場面で応用されています。
例えば、障害福祉サービスを利用するときに「計画相談支援」によって「サービス等利用計画」が作られるが、このときに活用される「ケアマネジメントの手法」がそうです。

ケースマネジメントの分類

スタッフの職種、担当者1人あたりの受け持ち人数、直接提供できるサービスの違いなどによって、関係機関への紹介が主な業務の仲介型、直接的な援助関係を強調する臨床型、利用者の人数を限定した集中型、利用者の技能向上と環境調整に注目したリハビリテーション型、利用者や環境の強みに注目するストレングス型、精神科治療を含めた包括的支援を提供するACT(包括型地域生活支援プログラム)型などがあります。

ケースマネジメントの手順

多機関や多職種が協働し、医療を含めた多くのサービスを組み合わせ、目標と期間を明確にして効果的なサービスを提供するために、定式化された手順があります。
1)契約を結ぶ(インテーク、受理):利用者と支援者が出会って合意を形成します。コミュニケーション技術や、ストレングスやリカバリー概念の理解が必要です。
2)情報の整理(アセスメント、査定):生活史、1日の過ごし方、サービス利用状況などの情報を、健康、居住、経済、日常生活活動、対人関係といったニーズ領域ごとに整理し、包括的に理解します。
3)計画作り(プランニング、計画策定):まず支援者が、利用者にとって最適と思われる仮の計画を作ります。次にケア会議を開き、支援者と利用者が一緒に仮計画を検討して、実際の支援計画を作ります。
4)支援の実行(インターベンション、介入):利用者に直接あるいは間接的にかかわって支援を提供します。専門機関が提供するサービスだけでなく、図書館やコンビニといった、誰でも利用しているインフォーマルサービスを積極的に活用します。
5)進行状況をみる(モニタリング、追跡):計画通りに支援が行われているか、進行状況を常に追跡し、現実場面の変化に合わせて、計画に細かな修正を加えます。
6)何が達成されたか振り返る(エバリュエーション、評価):課題が達成されたり、決められた時期に達したら、援助の過程を振り返って、達成された事項や残された課題を明確にします。
7)一連のプロセスの終了(クローズ、終結):ケースマネジメントを終了し、必要に応じ他の支援機関に紹介します。新たな目標のためにマネジメントが必要であれば再契約します。
一連のプロセスを通じて精神科医には、他の職種と協働する能力や、医療場面だけでなく生活場面での医学的アセスメントを行う能力が求められています。

参考文献

1)野中猛、加瀬裕子(監訳):ケースマネジメント入門。中央法規出版、1994