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障害者就業・生活支援センターの定義、適応、課題と展望について

障害者就業・生活支援センターの定義

障害者就業・生活支援センターは、雇用、保健、福祉、教育などの地域の関係機関との連携のもと、利用者の身近な地域において就業面および生活面における一体的な支援を行うことを目的とする支援機関です。
同じ厚生労働省内でも障害保健福祉部が所掌する総合支援法下の就労移行支援事業、就労継続支援A型事業、同B型事業による支援機関と異なり、職業安定局と障害保健福祉部の連携事業である「障害者就業・生活支援センター事業」により平成14(2002)年より創設されましました。

障害者就業・生活支援センターの適応

障害をもつ人のための就労支援は、就職に向けた準備、求職活動、就労後の職場適応・職場生活支援、といった段階を経るのが一般的です。
一連の支援活動のなかで就業・生活支援センターは「働きたいが、何から始めればいいのかわからないので相談したい」と思っている人に対する職業訓練や職場実習のあっせんといった就労準備のごく初期の支援や、就労後に職場でのさまざまな悩みに関する相談を受けるといった職場定着のための支援を行う機能を担っています。
いずれの支援も生活面での支援と一体的に行われることが同センターの特徴です。
こうした支援ニーズは多くの人に共通のものであり、障害をもちながら就労を希望する人はみな同センターの利用が適応であると考えられます。

障害者就業・生活支援センターの課題と今後の展望

平成25(2013)年の障害者雇用促進法の改正により精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える措置が追加され、平成30(2018)年より雇用が義務化されるにあたり、精神障害者への就労支援はますます重要となっています。
その一方、課題も明らかになりつつあります。
障害者就業・生活支援センターは身体障害、知的障害、精神障害のいずれの障害をもつ人も対象としており、精神障害をもつ人に特化した機関ではありません。
障害者就業・生活支援センターでは、十分なアセスメントと繰り返し実施されるトレーニングのあとにさらに実習などを経て就労する、という従来知的障害者に対して行ってきた支援方法を精神障害者の支援にも援用することが多いです。
このような「Train-Placeモデル(訓練のあとに実際の就労現場に入る)」による就労支援は、知的障害の障害特性には非常にマッチしています。
しかし、精神障害では同じ人が複雑な作業を短期間で身につけることもあれば、決まった時間に決まった場所に行くこともままならないこともある、といったように病状が不安定になることがしばしばあり、よいときと悪いときのパフォーマンスの落差も大きいです。
この障害特性ゆえに「Train-Placeモデル」による就労支援では、最初のアセスメントやトレーニングの段階でトレーニング内容への不満や就職への焦りから調子を崩してしまい、なかなか実際の就労までたどり着かないといったケースもみられます。
近年、精神障害の特性を踏まえた支援方法として、利用者の好みと選択をできるだけ尊重する、迅速に仕事探しを始める、トレーニングは仕事探しと並行して行う、ないしは実際の就労現場で実施する(つまり「Place-Trainモデル」に基づく)といった原則をもつIndividualPlacementandSupport(IPS)とよばれる支援方法も脚光を浴びています。
今後はこうした精神障害の特性に合わせた支援が、全国の障害者就業・生活支援センターや総合福祉法下の就労支援関連の事業所で提供されることが望まれます。

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