スキップしてメイン コンテンツに移動

構音の発達について言語聴覚士が解説!

構音の発達について

構音の発達は、誕生とともに始まります。
子どもが初めて発する音は、いわゆる産声です。
あの「オギャー」という声は、肺呼吸の結果、発せられる生理的な発声であり、意図的に「オギャー」と言おうと思って発している音ではありません。
意図的な発声が見られるようになるのは、生後3~4か月ごろからです。
生後1か月ごろまでは一定のリズムで泣くばかりであり、発声とはつまり泣くことです。
誕生とともに発声するということは、誕生のとき発声するために必要な器官を備えていることを示しています。
生後1か月を過ぎるころから、状況によって異なる発声が見られ始めます。
泣くという不快を示す発声ばかりでなく、笑いをはじめとする快の発声が出現します。
これは、リラックスした状態での発声が可能となったことを示しています。
赤ちゃんの泣き声と笑い声をまねてみると、その発声時における緊張の差が実感できるでしょう。このリラックス時の発声が喃語につながっていきます。
生後3か月を過ぎると、徐々に噛語が盛んになっていきます。
これは、それまでの呼吸と同じリズムでの発声から、呼気をコントロールしての発声へと変化していることを示しています。
また、これまで偶発的で単発的であった発声が再現性を持ち始め、繰り返し同様の発声をすることが可能となります。
生後7~9か月ごろには、さまざまな音を発するようになります。
このころの子どもが発する音の種類は、日本語の語音よりも多いと言われています。
哺語期に発せられる音がそのまま言語音につながるわけではありませんが、さまざまな音を出します。
離乳食を食べるといった行為が、構音器官の運動能力を向上させていきます。
これに模倣力の向上などが加わり、構音のための準備がなされていきます。
1歳近くなると、意思伝達を目的として音声を使用することが見られ始めます。
また、音声と意味の結びついた有意味語が見られるようになります。
構音面では、母音や両唇音を中心とした同音反復(マンマン、ワンワン、ブーブーなど)が多く、音も歪んでいますが、理解語彙・表出語彙の拡大につれて徐々に構音操作も学習していきます。
構音の習得過程では、子音を省略したり、獲得が遅い音を構音点や構音法の近い音へ置き換えることが見られ、これを発達途上の誤りといいます。
同じ音でも語によって正しく発音したり誤ったり、あるいは同じ語のなかでもできたりできなかったりと浮動性があることが特徴です。
構音器官の成長、構音運動の巧緻化、自己モニタリング力の向上、音韻分析能力の確立などに伴って、おおむね5~6歳までにすべての音が一貫して正しく構音できるようになります。
下記の図は、構音の完成時期を示したものです。
一般的に視覚的に確認しやすく、動きがダイナミックな両唇破裂音が早期に習得され、/s//ts/dz//r/の習得は5歳前後となってからです。その他の音は、4歳を過ぎるころまでに習得されていきます。
発達途上によく見られる音の誤りは下記のとおりです。
機能性構音障害の評価に関しては、音の完成時期の知識に加えて、発達途上の誤りと、発達途上にはあまり現れない特異的な誤りとを区別できることが大切です。

コメント

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺