スキップしてメイン コンテンツに移動

訪問リハビリテーションの制度や適応、実施内容や流れについて解説!

訪問リハビリテーションの制度

病院・診療所・介護老人保健施設

訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)とは、介護保険制度上、要介護者および要支援者に対し、医師の指示、ケアプランに基づき、病院・診療所・介護老人保健施設から理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、理学療法士など)が居宅においてリハビリテーション(以下、リハ)を提供することをいいます。
訪問頻度は、1回20分週6回を限度とし、急性増悪などの際は、1日4単位14日に限り(6か月に1回)、在宅患者訪問リハ指導管理料として医師の指示に基づき、医療保険で対応します。
医療保険制度では、在宅患者訪問リハ指導管理料として医師の指示に基づき、病院・診療所から理学療法士などが居宅においてリハを提供します。
訪問頻度は、1単位20分を週6単位が限度(末期の悪性腫瘍の患者の場合は除く)です。
ただし、退院の日から起算して3月以内の患者に対し、入院先の医療機関の医師の指示に基づき継続してリハを行う場合は、週12単位が限度となります。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションからの理学療法士などの訪問は、看護業務の一環としてのリハを提供する場合に看護職員の代わりに訪問させるという位置づけであり、厳密には訪問リハと称しません。
介護保険制度上では、「訪問看護Ⅰ5」の単位名となります。
訪問頻度は、1回20分週6回を限度とします。
医療保険では週3日を限度とするが厚生労働大臣が定める疾病等の患者(末期の悪性腫瘍など)については、週4日以上算定できます。
診察に基づき、前述を除く疾病等の急性増悪などは、一時的に14日に限り週4日以上(月1回)算定できます。

訪問リハの適応・実施内容

訪問リハの対象疾患など

訪問リハの適応は、疾患別リハ対象として、脳血管・運動器・心大血管・呼吸器疾患が代表的ですが、難病(パーキンソン病、神経筋疾患など)、末期の悪性腫瘍、外科的術後の虚弱者、高齢者の廃用症候群、障害児者(脳性麻痺、発達障害、先天性疾患)、など疾患も年齢層も幅広いです。

訪問リハの実施内容

訪問リハは、理学療法士などの評価に基づき、心身機能、ADL・IADLの改善をはかる練習、さらに社会参加や趣味活動など各利用者の生活の自立、QOLを促進するための場面・場所でも実施します。
また、住環境の整備、福祉機器の活用、家族の介護指導、精神的負担軽減など利用者を取り巻く人的・物的環境にも介入します。
そして、リハの実施内容は、多職種協働の広がりとして訪問介護員や訪問看護師などに伝達し、生活の実質性を高める活動も重要です。

訪問リハの流れ

診療情報提供書

訪問リハの開始には、訪問リハの属する病院・診療所以外が主治医の場合、主治医からの診療情報提供書の交付が必要です。
そして、診療情報提供書の交付を受けた医師は、利用者を診察し、理学療法士などにリハを指示します。
介護保険では、診療情報提供書の交付および利用者の診察は、3か月に1回以上、医療保険の場合は、月1回以上が必須です。

訪問看護指示書

訪問看護ステーションからの理学療法士などの訪問は、主治医から訪問看護指示書の交付を受け開始となります。
訪問看護指示書の有効期間は、主治医により6か月以内の期間内で定められ、交付月1回限りで、訪問看護指示料が算定されます。

訪問リハの指示

医師が利用者の疾患や心身状態を診察により評価し、提供するリハ内容を理学療法士などに指示します。
その指示においては、医師の医学的所見と国際生活機能分類(以下、ICF)の分類に基づいた心身機能、活動、参加レベル、そして個人因子、環境因子といった個別的な因子も考慮し、多職種評価や情報も吟味していきます。
また、理学療法士などの評価および経過の報告から指示も適切に修正、追加していきます。
一方、利用者によっては、医療機器・器具などの使用、意識状態、血圧、褥瘡など医療依存度や転倒、骨折などのリスク、禁忌事項、感染症の有無などの注意点を記載するとともに緊急連絡先、夜間時や停電(人工呼吸器などの使用)、急変時の搬送病院なども必要に応じて明記しておくとよいでしょう。

リハマネジメント

リハマネジメントは、調査(survey)、計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(action)のサイクルの構築を通じて、心身機能、活動および参加について、バランスよくアプローチするリハが提供できているかを継続的に管理することによって、質の高いリハの提供を目指すものです。
参加や活動に焦点を当てたリハを促進するために医師をはじめ理学療法士など、介護支援専門員、多職種協働でリハ会議を実施し、医師は利用者またはその家族に対し、リハ計画を説明し、同意を得ることが推奨されています。

リハ計画

前述のICFの分類に基づき、包括的に心身機能やADL・IADL状態の評価、活動や参加状態、目標設定の到達および終了時期、利用者、家族の希望を明記し、リハ計画書を作成します。
利用者または家族に対し、説明のうえ同意を得られれば、署名してもらいます。

リハ報告

訪問リハ実施の該当月の訪問日、病状の経過、訪問リハ内容、家庭での介護状況などを記載し、主治医に訪問リハ実施状況について報告します。

訪問リハの開始および終了時期

訪問リハの開始は、医療機関などの退院直後や廃用症候群の前兆など生活時期における活動性が多様な要因で阻害される前に医師の介入と訪問リハの指示が出されることが重要です。
そのためには、かかわるサービス機関・職種、本人、家族へのリハ教育や啓発活動が必要となります。
訪問リハの終了は、難病や進行性疾患、ターミナルなどを除けば、訪問リハ目標の達成により終了とし、また、訪問リハの必要な状態となれば迅速に再開できるように医師、多職種協働で情報共有していくとよいでしょう。
訪問リハは、単に身体機能面のみや本人、家族の希望だけで漫然と継続するのではなく、自立を支援する明確な目標に向けたリハマネジメント体制を確立していくことが必要不可欠です。

参考文献

1)日本訪問リハビリテーション協会:新版 訪問リハビリテーション実践テキスト。青海社、2016
2)日本訪問リハビリテーション協会:平成27年度老人保健健康増進等事業「訪問リハビリテーションの適切な実施に関する調査研究事業」報告書。
3)日本訪問リハビリテーション協会:平成27年度老人保健健康増進等事業「訪問リハビリテーションの適切な実施に関する調査研究事業」訪問リハビリテーションマネジメントマニュアル。

コメント

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺