病態と評価について
病態
褥瘡とは、「圧迫、ずれや剪断力などの外力の持続による局所の循環不全の結果、不可逆的な阻血性障害により生じる皮膚や皮下組織の損傷」のことをいいます。
発生や悪化には、局所的要因、全身的要因、社会的要因など複雑に関与します。
評価
評価は、視診、触診で総合的に行います。
好発部位は、骨突出部や圧がかかる部位です。(仙骨部、坐骨部、踵部、大転子部、背部、頭部など)
皮膚の色調変化、消退しない発赤などは褥瘡を疑って皮膚の観察を行います。
褥瘡発生後から1~3週間は、局所状態が不安定であり、重症度など病態の判断が困難となります。
経過とともに進行することを想定し、こまめな創部の観察を行います。
鑑別診断は、反応性充血、末梢動脈疾患、皮膚悪性腫瘍による潰瘍、接触性皮膚炎、膠原病による皮膚潰瘍、真菌症などで、これらを除外する必要があります。
重症度および経過の評価には各種評価ツールがあります。
深さ、浸出液の量、大きさ、炎症/感染の有無、肉芽組織の形成、壊死組織、ポケットの有無などから評価します(DESIGN-R、日本褥瘡学会、2008)。
治療方針について
褥瘡は、予防、治療ともに、褥瘡発生危険因子の評価、危険要因の除去が基本となります。
危険因子の評価には、ブレーデンスケール(「知覚の認知」、「湿潤」、「活動性」、「可動性」、「栄養状態」、「摩擦とずれ」の6項目をスコア化)などが用いられます。
予防
体位変換
自力体位変換能力がない場合、基本的には2時間ごとの体位変換が推奨されています。
体圧分散寝具
自力体位変換能力の有無を基に体圧分散寝具の素材を選択します。自力体位変換能力がある場合は可動性を妨げないことを優先します。
自力体位変換能力がない場合は体圧分散を優先します。
適宜アセスメントを行い、状況に応じて寝具を変更していきましょう。
坐位での体圧分散用具
坐位を保持できるようにウレタンクッションを用います。
坐位姿勢に問題がある、あるいは坐位がとれない場合には、車いすの変更やエア、ジェルクッションを使用すると良いでしょう。
リング型あるいはドーナツ型円座は底付きの原因となるため使用しないようにしましょう。
スキンケア
皮膚の浸軟の原因となる発汗に対して除湿シーツを使用する、オムツの重ねあてをしないなど、通気性をよくします。
尿失禁、便失禁による皮膚障害には、皮膚保護剤などで対応します。
栄養管理
低栄養は、褥瘡発生のリスクであり、創傷治癒遅延の原因となるため、蛋白、アミノ酸、ビタミン、亜鉛などの栄養素の補給を行うと良いでしょう。
治療について
褥瘡の治療は、ずれや圧、骨突出など危険要因の除去が最優先されます((A)予防参照)。局所管理では、TIME理論に基づき、①壊死組織(T)、②感染・炎症(I)、③湿潤(M)、④創縁(ポケット)(E)、の創傷治癒を阻害する要因の除外が目標となります。
保存的治療
浅い褥瘡(真皮まで、皮下組織に達しない)
ハイドロコロイドなどの創傷被覆材や軟膏で湿潤環境を保つようにします。
深い褥瘡(真皮を超え、皮下組織に達する)
褥瘡に感染や炎症を認める場合、感染抑制作用のある薬剤(ヨウ素軟膏、スルファジアジン銀)を使用します。
感染が全身に波及している場合、全身管理および局所管理を併せて行います。
感染や壊死組織の除去後にはbFGF(フィブラストスプレー)など肉芽形成を促進する薬剤や被覆材を選択します。
広範なポケットの縮小、浸出液の管理、肉芽形成促進のため局所陰圧閉鎖療法も有用です。
外科的治療
膿汁、汚臭あるいは骨髄炎など明らかな組織感染を認める場合、外科的デブリードマンを行います。
保存的治療に抵抗性のポケットに対しては、ポケット切開術を考慮します。
また、感染の沈静化、創の縮小の目的に植皮術も考慮されます。
皮弁による再建術の適応は、患者のADL、全身状態、栄養状態、局所の状態、予後などを総合的に判断するようにします。
患者教育
予防、治療、再発予防のため、生活習慣、環境の整備を含めて患者および家族への指導が重要です。
専門医へのコンサルト
保存的治療を継続し2週間しても改善しない場合には処置の変更とともに、専門医へのコンサルトを行うようにします。
局所の感染徴候、熱発など感染の悪化を認めた場合にはすみやかに専門医へコンサルトしましょう。
看護・介護のポイント
褥瘡の予防、治療、再発予防のいずれにおいても危険因子の把握と体位変換、スキンケアなど愛護的なケアが重要となります。
文献
・日本褥瘡学会 編:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版) 褥瘡会誌 17:487−557、2015
・真田弘美、他 監訳:褥瘡の予防&治療クイックリファレンスガイド(第2版) 2014
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