注目獲得が目的で困った行動をする場合の対応方法
子どもの困った行動に影響を及ぼす大きな因子のひとつとして、親や周囲の人々が子どもに“注目を与えること"があげられる。
例えば、幼稚園や保育所に通う子どもが時力下品な言葉を覚えてきてしまうことをあげよう。
家庭に帰って子どもがこのような言葉を口に出すと、お父さんやお母さんは思わず吹き出してしまったりすることがある。
そうすると子どもは得意げに何度も何度も繰り返す。
そして、大事なお客さんが来ているときに、子どもがお父さんやお母さんの注目をひきたくて下品な言葉を口に出してしまい、お父さんもお母さんも大赤面などという事態が稀に生じる。
さて、上記の例のなかにあるように、子どもの行動に反応して笑ったり声をかけたり、微笑みかけたりすること、あるいは誉め言葉を与えることや、叱ることも含めて、これらはすべて子どもに“注目を与えること"に相当する。
最も身近で信頼できる存在である、お父さんやお母さんから注目を与えられることは、乳幼児の行動に大きな影響を及ぼす。
親が与える“注目"は、子どもが行動を学習する際の行動を強める因子(強化子)としては、最も強力で汎用性に富んだものである。
先ほどの例では、お父さんとお母さんが、子どもの下品な言葉に対して吹き出してしまい、楽しい雰囲気が形作られたことが、子どもの「下品な言葉」という困った行動を強める強化子となってしまったのである。
周囲の大人の注目を獲得するために繰り返し行われるこのような行動を、注目獲得行動と呼ぶ。
この注目獲得行動は、幼稚園や保育所で着手の先生がよくはまってしまうトラップの例でもある。
保育活動中に、クラスの集団から離れて困った行動を繰り返す子どもを、他の子どもたちを待たせておいて叱りに行ったりすることがよくある。
当該の子どもは叱ったときにはシュンとなるのだが、先生が目を離すと、また困った行動をし始める。
これは、先生が叱ること(この時間は先生を独占できる)が、子どもにとって困った行動を強める強化子となってしまっているためで、子どもは先生の注目をひきつけるために困った行動を繰り返しているのである。
このようなときには、行動を強めている強化子を取り去ることが有効である。
つまり、あらかじめ危険なものをできるだけ取り除いておいた上で、一時的に子どもに注目を与えない(計画的無視)ようにするのである。
このようにすると、子どもの困った行動は一時的に激しくなったりするが、さらに注目を与えないようにしつづけると、やがて子どもの困った行動はみられなくなっていく(消去)。
計画的無視について
先生や親にかまってもらうことを目的として行われる注目獲得行動に対して、計画的無視の手法がよく用いられる。
この方法では、子どもの特定の困った行動を無視する。
決して子ども自体を無視することではない。また、親や先生自身が興奮してしまっているときには、自身が一時的に子どものいる部屋から出て行く非隔離型のタイムアウトも有効である。
注目獲得が目的ではない困った行動
子どもの困った行動は、親や保育者の注目を目的としない形でも現れる。
たとえば水遊びをしていて、おもしろくておもしろくて、自分の服や周囲のものがびしょぬれになってしまっても、それにかまわずに遊び続けてしまうことがある。
この場合は、親や保育者の注目が困った行動の強化子になっているのではなく、活動そのものの楽しさが因子(強化子)になっているのである。
そのため、親や保育者が注目を与えなくても、活動そのものにはほとんど影響を及ぼしない。
このような注目が目的ではない困った行動に対しては、あらかじめルールを定めておくことや、子どもの興奮を冷まさせるためのタイムアウトなどのテクニックが有効である。
タイムアウトについて
なにか困った行動に熱中してしまっている子どもを、退屈な場所に連れて行き、ひとりで座らせておいて興奮を覚まさせる方法。
暗いところや恐怖を覚えさせることが目的ではなく、ねらいはあくまで感覚遮断による沈静化であることに注意する必要がある。
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