子供の発達で大切な見立て遊びとは?見立て遊びでの発達分類や「象徴」「象徴機能」について言語聴覚士が解説!

見立て遊びとは?


幼児期の子どもたちの遊びのなかで多くみられるものに、「ままごと」や「電車ごっこ」などの「ごっこ遊び」がある。
そのなかでは、たとえば砂がご飯に、泥水がコーヒーに、縄が電車に、というように現実とは異なった物を用いて、いわばその「ふり」をして遊んでいるといえ、このような活動を「見立て」と呼ぶ。
見立てはだいたい1歳半頃から見られはじめ、2歳を過ぎると、遊びのなかで見立てを行う「象徴遊び」が活発化する。
心理的発達に伴って、子どもは身の回りの事物を心のなかで別のものに見立てることが可能になり、それによっておもちゃや素材などの事物との関わり方も変化していく。
幼児期後半では、友達同士でイメージを共有することができるようになり、見立てたものを友達同士で共有することによって、遊びはよりいっそう複雑化していく。
この、見立てる能力の発達という観点から、村田は遊びを下記に示すような4段階に分類している。

「見立てる」能力の発達による遊びの分類

・第1段階(0~1歳)

事物はそのままの形で、子どもの身体運動遊びの対象となる。

・第2段階(2~3歳)

事物は別の事物の象徴となる。たとえば枕が人形になる。子どもの関心は象徴されているもの、およびその行為活動に注がれる。

・第3段階(4歳~)

事物はそれを媒介として対人活動が行われるものとなる。たとえば、風呂敷はドレスとして白雪姫遊びの展開をうながす。これは、象徴が仲間のあいだで共通化されるときに可能となる。

・第4段階(5歳~)

事物は遊びのなかで純粋に記号となるか、さもなければ不必要になる。

「見立てる」ために必要な力

この「見立てる」という活動は、非常に高度な認知的能力を持っているからこそ可能になるもので、特にこの活動にとって必要な能力には、表象と象徴機能とがある。

表象とは

表象とは、日の前にそのものがない場合でも、心のなかにそのものや事柄を思い浮かべる、イメージすることのできる能力のことだ。
たとえば、ままごとで茶碗に入った砂をご飯に見立てることができるようになるには、当然ながらご飯に関する知識がなくてはいけないが、それに加え、目の前にご飯がなくても、それを心のなかに思い浮かべることができなくてはならないのである。

象徴機能とは

象徴機能とは、事物や事象を、記号などの別のものによって認識する働きのことを指す。
砂をご飯に見立てている場合、子どもは砂を本来のものとは異なった、ご飯という別のもの(象徴的記号)としてとらえていると考えられる。
つまり子どもは「砂一ご飯」の関係を、「意味するもの一意味されるもの」として認識しているのだ。
このようなことができるということは、子どもが、日の前に存在する現実世界をそのまま認識するだけではなく、別のものに置き換えて、心のなかで操作する能力を持っていることを意味する。

見立てからわかる、子どもの持つ概念

見立てるという活動は、表象によって心のなかにイメージしたものを、日の前にある別のものに置き換えるという象徴機能によって成立していると考えることができる。
また、子どもは見かけが似ているものを見立てるだけではない。たとえば、大きい積木を「お父さん」、小さい積木を「赤ちゃん」というふうに見立てていることがある。これは、子どものなかに「大きいもの=大人」「小さいもの=子ども」という概念があることを示すものだが、このように漠然としたイメージもまた、見立てには利用されているのである。

ものを見立てる子どもの心


ものを見立てている子どもの心理状態は、どのようなものなのか。たとえば、ままごとで泥水をコーヒーに見立てている場合、おいしそうに飲むふりはしても、本当に飲んでしまうことはない。
それは、確かに遊びのなかでは「コーヒー」であっても、子どもは心のなかで、「本当は泥水だけれども、ここ(ままごと)のなかではコーヒーの『ふり』をしている」ということを認識していることを示している。
つまり、子どもなりに現実の世界と想像の世界とを区別しているのである。

また、時折大人に対して泥水のコーヒーを見せて喜ぶなど、見立てているものをアピールすることがあるが、これは、「泥水を、コーヒーに見立てているよ」という面白さについて、大人の承認を求めている行動と考えることができる。
子どもの「ごっこ遊び」は一見、本物が手に入らないのでとりあえず代わりのもので妥協しているような、いわゆる「子どもだましな世界」に見えるかもしれない。

しかし、子どもは高度な認知能力を働かせながら、見立てること自体を楽しんでいるのだ。
そのように考えると、子どもはわれわれが思うよりもずっと多くの能力を発揮しながら遊んでいるといえよう。



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