ホールディング 乳幼児は柔らかくて暖かな存在を求め、その近くに身を置くことによって安心感を得て生活していく。 ウイニコットは、母親が子どもの安心感を保障するこのようなシステムを ホールディング という言葉で示している。 ウイニコットは、母親の機能として、子どもを抱き支えるホールディング、子どもをあやし大切に扱うハンドリング、さまざまな対象や人的環境を差し出し経験させるオブジェクトプレゼンティングという3つの機能をあげている。 このなかで、ホールディングとは、子どもを抱き、支える機能である。 これは、単に物理的に子どもを抱っこしたり支えたりすることだけを指すのではない。 生きている世のなかのほとんどの事柄がまだわからない、理解できない、人生のごく早期の乳幼児にとっては、ホールディングされることによってまず安心感を得る。 そして、人格を持った存在として大切にハンドリングされることによって徐々に自己の存在や大切さに気づき、さらに、さまざまな経験を与えられる オブジェクトプレゼンティング のなかで対人関係をひろげ、少しずつ外界の様子を学び適応していくすべを身につけていくのである。 子育ての初期においては、普通、子育ての主役は母親になる。 これには、女性にしか妊娠や母手しの授乳ができないこと、また、妊娠期間からおなかのなかの子どもと一体感を持って過ごすことなどの生物学的な条件や、社会や文化の背景が大きく影響しているようである。 この時期は、さまざまなことに注意を向けなければならない一方で、生活上の多くの制約を受けている、非常に大変な時期なのである。 そして、子育ての主役となっている母親を精神的に抱き支えることが、父親をはじめとする家族の大切な役割なのである。 「お母さんは、お父さんをはじめとする家族にホールディングされていてはじめて、わが子をホールディングできる」のである。 母親を支え、また、配偶者としてその他の家族のホールディングをリードするという父親の役割は、つい見過ごされがちだが、子育ての重要なポイントなのである。 オブジエクトプレゼンティング 正高信男は、絵本の読み聞かせ実験を通して、より積極的な父親の役割を述べている。 彼の行った実験は、1歳半の女児に対して、計34人の男子学生が子どもに向かっ...