スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

5月, 2018の投稿を表示しています

幼児期の言葉の発達の過程や特徴を言語聴覚士が解説!「初語」「一語文」「潜伏期」「命名期」とは?

初語そして一語文へ 初めての言葉(初語)は一般的には生後10~12か月に発生する ことが知られている。初語は「ママ」や「ブーブー」「マンマ」など同音の反復で構成されている場合が多く、口唇を閉じた状態から開くことで発生する子音である/m/や/p/、/b/などの音韻が使用されている場合が多いといえる。 もともとはコミュニケーションの機能をもっていなかった哺語がジャルゴンの段階を経て初語となるのである。 初語の時期の特徴としては、第1に幼児は単語レベルで言葉を発するのであって一続きのいわゆる文章では話せない。第2に彼らが発生する単語の多くが成人が普通に使っている単語ではなく、いわゆる幼児語(「犬」に対して「ワンワン」、「猫」に対して「ニャンニャン」など)である点だ。 第1の特徴「一語文」について 第1の特徴である単語単独の発声であることを 「一語文」 と呼んでいる。 しかし、この場合、幼児は1個の語彙として、あるいは1個の名詞として発語しているというのではなく、そこにははるかに多くの機能を同時に含んでいる場合が多いのである。 たとえば、食べ物のことを「マンマ」と発語したとき、その意味は「あっ、食べ物がある」とか「この食べ物を食べたい」とか「あの食べ物をこっちに寄こせ」とかいろいろな意味の可能性があり、機能的には、単なる叙述から要求、意図などいろいろなものが含まれている。 すなわち、単語1つであるけれどもそこには1つの文としての機能をもつ表現であることから「一語文」と呼ばれているのである。したがって、幼児が発語する一語文の意味やその解釈は、単にその前後の文脈的なものだけでなく一語文が発せられた相手との関わりを抜きにはできないのである。 そのため、児童期に発達する不特定多数の聞き手に一方向的に発話していく「二次的ことば」と区別して「一次的ことば」と呼ばれている。 「一次的ことば」の特徴 「一次的ことば」の特徴としては、①1対1の対話的関係のなかで機能するもので話し手と聞き手が交互に交代しながら行うキャッチボールのようなもの、②その相手は生活を共にするなかで経験を共有できる特定の親しい人であること、③その場で起きていることや共有している経験の具体的内容が発語されること、④言葉だけでなく場面の状況からその内容を理解することがあるこ...

子供が言葉を覚えるために大切なことは?指さしや共同注視、社会的参照などを言語聴覚士が説明

子どもは1歳を迎える頃から言葉を発し始め、2歳近くになるとまさに「爆発的に」言葉を覚え、急速に語彙数を増やしていく。 中学、高校時代に英単語を覚えるのに苦労をしていた皆さんも多いと思うが、子どもはなぜ生まれて数年の間に数多くの言葉を覚えることができるのだろうか。 言葉を覚えるにはタイミングがある 言葉を覚えることに関してまず大事なことは、言葉の獲得をはじめ、発達の多くの側面には、その特性を獲得するための限られた期間(臨界期)があるということだ。 その典型的な事例として、幼少期に人間の環境で育たなかった野生児として有名な 「狼に育てられた少女」 の事例をみてみよう。 この少女は狼の群れから保護されたときには推定8歳位だったのだが、その時点では言葉を話すことはできなかった。 そして、その後亡くなるまでの約9年間をシング牧師の熱心な教育の下、人間の社会で過ごすのだが、その間に不明瞭な言葉を50語ほどしか獲得することができなかった。 この事例からもわかるように、出生から乳幼児期にかけての生育環境が適切であることが、子どもが言葉を獲得する能力を発達させるのに重要な意味を持っているといえる。 もちろん、英語など母国語以外の第二外国語の習得の例などを考えてみれば、乳幼児期を過ぎても言葉を覚えるのは不可能ではないことはわかるが、それらは母国語という下敷きがあってこそ成立するものだし、なによりも単語の暗記や文法の学習など、乳幼児期に母国語を獲得する際には必要としない、非常に多くの労力を要するのである。 狼に育てられた少女について インドの山中で狼の群れから2人の少女(アマラとカマラ、推定8歳と1歳半程)が、シング牧師によって救出された。発見された当初は狼の習性を身につけており、言葉を話すこともできなかった。 この少女を人間の社会に適応させようとした記録が残されている。この事例に関してはその記述や解釈にさまざまな議論があるが、少なくともこの例から、人間の発達における初期環境の重要性と、発達における臨界期の問題について考えることができよう。 親子のコミュニケーションによって言葉を覚える 指差しと共同注視 言葉を話し始める前の1歳前後から、子どもは自分の身の回りのものに対してしきりに 指差し をするようになる。また多...

子供の言葉の習得の過程【模倣説】【生得説】について言語聴覚士が解説!

はじめての言葉 人間の乳児は1歳前後から言葉を話し始める。 個人差はあるが、2歳の時点ですでに100ぐらいの言葉を話し、500ぐらいの言葉を理解することができる。 言葉を話す能力は、ある時期が来ると急に現れるわけではなく、それ以前にも言葉を話すために必要なさまざまな準備段階を経ている。 また、言葉をしゃべることができるようになった後も、大人と同様の文法に沿った会話ができるようになるには、もう少し時間がかかる。 言葉を覚える道筋:模倣説と生得説 子どもが言葉を覚えるようになるには、どのような過程をたどっていくのだろうか。 たとえば、中学生になって初めて英語を学習する場合、単語や文法を先生から教わったり、教科書を読んだり、書き取り練習をしたり……と言葉を習得するためには特別な勉強が必要になるが、子どもが母語(親と同一の言語)を覚える際には、多くの場合親が特別な教授をしたり、子どもが特別な訓練をするわけでもなく、言葉を自然に習得していく。 子どもがこのように自然に言葉を覚えていくメカニズムについては、さまざまな説がある。その代表的なものをいくつかあげてみよう。 模倣説 模倣説とは、親の言葉がけを中心として、テレビやラジオの音声など、周囲に子どもが聞くことのできる言語刺激がある場合、子どもはそれを物まね(模倣)することによって言葉を獲得するというものだ。 子どもは出生後に放っておかれただけでは、自動的に言葉をしゃべれるようにはならない。つまり、出生後の生育環境が重要なのだ。特に重要なものが、母親をはじめとする人的な環境である。 特に出生後間もない乳児は、母親との密接な1対1の関わり(母―子相互作用)のなかでその後の成長、発達に必要となるさまざまなことを学習するが、言葉もその一つであるといえる。 はじめのうちは模倣しているかどうかもわからない物まねが、やがて模倣の対象である親がようやく理解できる程度になり、その模倣によって親子の間のコミュニケーションが続けられていくうちに、段々とはっきりとした、意味のある言葉へと変化していく。 また、言葉の発達の遅れについて、知的発達の問題と並んで、言語的な環境が一つの要因になると考えられている。すなわち、たとえば親がとても早口であったり、極端に子どもへの言葉がけが少なかったり...

乳児の遊びの意味とは?乳児における遊びの意義を言語聴覚士が解説!

そもそも遊びとはなにか? 遊という字は、子どもが水上にただようさまを表す字形から発展したとされていることからも、ゆらゆらと浮いていたり、さまよい歩いていたりという無目的な状態を示していると思われる。 ホイジンガは、「遊びの目的は行為そのもののなかにある」と説明している。 つまり、遊ぶ目的を検証することや、その結果を評価することが無意味であることを指摘しているのである。 自発的でおもしろく、その行為を楽しむことが、遊ぶという意味なのだということだ。それでは、乳児の遊びとはいったいどのような意味があるのだろうか。 乳児における遊びの意義 心地よさの追体験 授乳の場面を見たことがあるだろうか。乳児はお乳を懸命に飲んでいるかと思うと、時折、飲むのを止めて、親に話しかけたり微笑んだり、乳房や哺乳瓶をさわったりしていることがある。そのようなとき、親は、「遊ばないで飲もうね」などと飲むことを促すことがある。このとき、乳児は周囲の世界を積極的に探索していると考えられている。 生後半年くらいまでの乳児は、周囲の人やものを見つめたり、手を伸ばしてつかんだり、さらにはつかんだものを口に運んで感触を楽しんだりする。そして、興味のあることは繰り返し繰り返し行おうとする。 たとえば、小さな玉を手にいっぱいつかんで、それを床に一気にまき散らす場面を考えてみよう。 散らす、危ない、食べてしまわないかなどという心配が、私たちの頭をよぎることが多いと思う。しかしながら、その活動(動作)をしている乳児にとってはどのような意味があるのだろうか。 小さな玉をつかんで放り投げるというのは、単に楽しいというだけではなく、どのくらいつかめるか、どのくらい広く、あるいは遠くに飛ばせるかを確かめているようにも見受けられる。 つまり、実験とか挑戦のような要素が含まれた活動と考えられる。乳児は心の内面の思いを周囲の世界に一気に吐き出すような活動を通して、心地よさを追体験しているといえる。私たちの心配をよそに、実に楽しい活動(遊び)をしているに違いないと思われる。 働きかけと待ち受け これらの活動は、乳児個人での活動ばかりでなく、周囲の人との関わりのなかで行われることも多く、人との関わりへの関心を育むことになる。その代表的な活動が、いないいないばあに...

乳児の身体面の発達を解説!ハイハイから二足歩行へ

身体面の発達 乳児は約3か月で首がすわるようになり、4か月で支えられると座れるように、8か月でハイハイ、9か月でつかまり立ち、そして生後1年頃にひとり歩き、いわゆる二足歩行が可能になる。これは、完成する基本動作の集大成であるといえる。 乳児の二足歩行が可能になるためには、まず身体面の発達が必要である。2本足で移動するためには、足底で重心の高い身体を支える必要がある。つまり姿勢保持機能の発達が必要になる。 さらに、歩くためには、重力に反して足を持ち上げるという抗重力機能が必要である。そして、一方の足を踏み出し、持ち上げている間、他方の足で体重を支え、身体の重心をコントロールし、バランスをとっておかねばならない。これは平衡機能が発育してはじめて可能になる。 二足歩行はこうした複数の機能の協応関係のうえに成立している複雑な運動である。 そのため、乳児は、二足歩行を始めた頃は、身体を支える足の強さの程度がわからず歩行に失敗したり、足の踏み出しを早くすることで身体を支える時間が短くなるように工夫したり、といった試行錯誤を繰り返す。そして次第に二足歩行に必要な身体運動が可能になっていく。 これまでみてきたように、二足歩行は生後約1年後に可能になるが、生まれた直後の乳児でも二足歩行と似たような動作をすることが知られている。 これは原始歩行と呼ばれている。乳児の脇をもってやり、少しずつ前に進めてあげるのである。すると乳児は足を交互に動かして、歩くような動作をする。 ただ、この原始歩行は生まれた直後に現れるものの、2、3か月すると消える。そして生後1年経った頃に二足歩行が再び現れるのである。 この現象はどのように考えられるのか。現在のところ、歩行動作が消えている期間に、身体機能面でのレディネス(readiness)が少しずつ整えられ、それが1年後の独立歩行として出現すると考えられている。 心理的要因 2つめの要因は、こうした身体面での発達に基づき、乳児自身が自らの力で立ち、歩き出そうとする意欲をもつ、ということである。 一般に、ある行動が可能なだけの準備ができている状態を レディネス と呼ぶ。 身体の発達により、歩行可能な身体機能面のレディネスができると、それを活用したい、という意欲が生まれる。そして、二足歩行への...

親と子のやりとりでかみ合うために必要な赤ちゃんの能力とは?

親と子のやりとりでかみ合うために必要な赤ちゃんの能力とは? 親と子どものやりとりがどのようにして、かみ合うのかについては、2つの問題があるといえる。1つは、かみ合うために必要な能力の問題であり、もう1つは、かみ合っているように見えるという問題である。 第1の問題に対しては、子どもと大人のコミュニケーションがどのように展開していくのかについて説明する必要がある。これまでの研究から、人はコミュニケーションをとれる能力をもって生まれてくることがわかっている。 たとえば、生後間もない赤ちゃんは、大人の発声に対して、それに呼応するかのように、発声したり、微笑んだり、握った手を広げたりする。もちろん、親もその反応に呼応する形で、徴笑んだり、発声したりする。また、赤ちゃんが大人の表情を模倣できるという証拠もある。 大人が、舌を突き出す、日を開ける、唇を突き出すというそれぞれの表情に対して、偶然よりも高い確率で、同じ表情をしていたという報告や、さらに幸福、悲しみ、驚きといった表情においても模倣が確認されたという報告がある。 このような結果は、赤ちゃんが、大人の働きかけに対して、ただでたらめに応答しているのではなく、ある意味、コミュニケーションをコントロールする能力をもっていることを示している。 さらに、こうした赤ちゃんの働きかけは、大人がどのように関わればよいかの反応を引き出すものにもなっている。 たとえば、お乳を吸う行為において、赤ちゃんが吸うのを止めたときを、お母さんの方は赤ちゃんを揺り動かして関わるための手がかりとして解釈しているようである。それはまるで、一方が話をしているとき他方が黙っていて、話が終わったら話し始めるといった基本的なリズムを作り上げているかのようである。 また、母親が赤ちゃんとのコミュニケーションに反応しなくなると、赤ちゃんの方から母親にコミュニケーションの参加を促すかのような働きかけがしきりに行われるという結果も報告されている。 これらの結果を総合すると、コミュニケーションをするための能力を赤ちゃんが少なからず持っており、大人も自然にそれに呼応しているのだといえる。 代弁というやりとり しかしその一方で、上にあげた第2の問題のように、親と子どものやりとりがかみ合って見えるということも考えられる。赤ちゃん...

赤ちゃんは泣くことで情緒を知らせているのか?社会的参照とはなにか?

赤ちゃんは泣くことで情緒を知らせているのか? 「赤ちゃんの仕事は泣くことだ」とよく言われている。 驚くべきことは、生後3日目までに母親は自分の赤ちゃんの泣き声と他人の赤ちゃんの泣き声には異なる反応を示すようになると言われていることだ。 生後1か月の頃になると養育している多くの親が、自分の赤ちゃんの泣き声が「空腹」のためなのか、どこか「痛い」のか、「怒り」なのか、「眠い」のかのその意味を感じとるようになると言われている。 養育している親の「敏感さ」にも支えられ、新生児や乳児の生理的な状態は泣き声を通して伝わっていく。これは彼らの「喜怒哀楽」の表現なのか?それとも、単に彼らの「生理状態」の表れに過ぎないのか? 赤ちゃんは喜怒哀楽を模倣するのか? フィールドらの報告では、新生児(生後平均36時間)の眼前で検者が「喜び」「悲しみ」「驚き」という3つの表情をしてみせると、新生児がそれらを「識別」し、模倣することを報告している。もちろん模倣ができたから情緒を産出していることにはならないが、興味深い知見であることは確かだ。 フィールドらの研究結果は、赤ちゃんがお母さんの喜怒哀楽の表情に自分の表情をシンクロしようとしているかのように感じさせる。 お母さんの「喜び」の表情を「喜び」として、あるいは「驚き」の表情を「驚き」として理解して反応しているというよりは、ここでは模倣という行動を通して相互作用するという客観的事実に限定する慎重さが必要だが、まさにその相互作用にこそ、この現象の意味を解く鍵があるように思える。 母親は自分の赤ちゃんの「泣き」に非常に敏感である。生理的現象としての「泣き」にいろいろな意味を感じようとする。そして一方で、赤ちゃんはお母さんの喜怒哀楽の表情に敏感に反応するのだ。 社会的参照とは? むしろ新生児や乳児における喜怒哀楽の表出を単なる生理的反応の問題としてとらえるのではなく、母子を中心とした社会的相互交渉の視点で考えてみることが重要だろう。 産科病院の新生児室で一人の新生児が泣き出すと他の新生児も一斉に泣き始めることがよく知られているが、サギとホフマンによれば、この現象は人の「共感性」の最も早い出現としてとらえられるというのだ。 最初に述べた新生児の種々の泣き行動もその微妙な違いに敏感な養育者の選択的な反応に...

子供は乳児の頃から親の行動を見て学ぶ能力がある

乳児には、親の行動もまねる能力がある 昔から、「子は親の背中を見て育つ」「子は親の鏡」「この親にしてこの子あり」ということわざがあるように、親は子どもが世のなかのことを理解していく上で貴重な存在であるといえる。 親から学ぶ上で、子ども、特に赤ちゃんがもっている能力としては、模倣と社会的参照をあげることができる。赤ちゃんには、舌を突き出す、口を開ける、唇を突き出すというそれぞれの表情の模倣がみられる。これを共鳴動作と呼ぶのだが、ちょうど一方の音叉を鳴らして他方の音叉に近づけたときに、ふるえて音が出るように、大人の表情に対して、同様の表情をつくる。これがすでに生後1か月未満の赤ちゃんに見られることがあるのだ。 ところで、生後間もない赤ちゃんが自分の表情を客観視することなく、大人の表情を模倣できるというのは不思議なことである。 この点に関して、赤ちゃんが自らの動作によって、親の動作に一定の変化が起こることを発見することに喜びを感じると言われている。 たとえば、赤ちゃんが「あっうう」と声を出せば、親がその声をまねることで、赤ちゃんの働きかけに応答する。そうした親による赤ちゃんの行動の模倣を、赤ちゃんはおもしろがって、繰り返す。親も、それに応えて、また模倣する。 そうしたやりとりが繰り返された結果、赤ちゃんは大人の表情や動作という「手がかり刺激」に対して、同じ表情や動作で反応するようになると言われている。 その後、8~9か月くらいになると、モデルの声やしぐさが観察されたすぐ後に模倣するといったように、模倣も意図的になり、特に、興味を覚えたものが模倣されるようになる。 例えると、テレビを見て興味を引いたキャラクターの声やふりをまねるようになる。さらに、1歳半ばくらいになると、ある程度時間が経過した後に、模倣が見られるようになる。 これを延滞模倣というのだが、かつて見たり聞いたりしたものが表象(イメージ)として記憶のなかに定着していることをうかがわせられる。例えば、親のなかには、普段あまり意識していないような言葉ぐせやしぐさを、あるとき突然赤ちゃんがまねて、思わず苦笑した経験がある人もいるのではないか。 親の表情を参照する能力 一方、親の反応をみて、赤ちゃんがすべきかどうかを決めているようにみえる行動がある。これを社会...

エントレインメント、情緒的コミュニケーション、基本的信頼感、愛着(アタッチメント)、安全基地について言語聴覚士が解説!

社会的な存在としての乳児 みなさんは、親と子供(乳児)が楽しそうに関わりあっているところを見たことがあるだろうか? 親の「○○ちゃんはかわいいね」等という愛情豊かな語りかけに対して、その声に合わせるように、乳児は手足をバタバタと動かしたり、はほえんだり、声を出したりする。また、乳児が泣いたり、ぐずったりすると、親はそばに来て、抱き上げ揺すると、機嫌がよくなったりもする。 このように親子のやりとりで大切なことは、乳児の行動が親の行動によって上手に引き出されている、また、親の行動も乳児の行動によって引き出されているのである。 つまり、乳児は親からの働きかけに対して自分の手足を動かして応答し、その様子を見て親はまた働きかけるのだ。 このやりとりでやがて、親の言葉と乳児の体を動かすタイミングが同調するようになる。 この現象は「 エントレインメント 」と呼ぶ。 能動的な存在としての乳児 乳児の動きやはほえみ、発声、泣きなどは、親によって敏感に感知され親がその状況に応答するということも多い。このことから、親子間での相互の交渉は、互いに情緒的な信号を発しており、それらを感知し、適切に反応するという形で進行しているといえる。このことを、「 情緒的コミュニケーション 」と呼ぶ。 20世紀の中頃まで、乳児は目も見えず耳も聞こえない何もできない存在と思われてきた、近年までの乳児の研究によって、彼らがさまざまな能力を持って生まれてくることがわかってきた。確かに、乳児は、歩くことも話すこともできないが、自ら積極的に外界(周囲の人や物)に働きかけ、全身を使って周囲の人とコミュニケーションする存在なのだ。 基本的信頼感の獲得 子どもは、自分を保護してくれる大人の存在なしでは生きることは難しい。保護されている間、子どもの養育を行う大人(多くの場合、親)の関わり方が、子どもの発達に大きな影響を与えることは容易に考えられることである。 エリクソン(Erikson,E.H.)は、乳児期の発達課題として「 基本的信頼感 」の大切さをあげている。つまり、乳児の時期に親が子どもに抱かせる大切な気持ちとは、生まれてきた社会(または家庭)は信頼できるのだという感覚を持てるということだ。 ほとんどの子どもにとって、生まれて初めて体験する社会は家庭...

カンガルーケアとタッチケアを知っていますか?スキンシップはやはり大事なこと。

カンガルーケアとタッチケアを知っていますか? 子どもたち、とりわけ乳幼児期の小さな子どもたちにとってのスキンシップとはどのようなものなのか?私たちヒトは哺乳動物である。哺乳動物の特徴は、母親が自分の母乳を与えてわが子を育てるという非常に特殊な動物である。 自分の身体の一部(母乳)を与えるわけなのだから、その行為には報償機構が組み込まれているのだ。その報償(損失の償い)機構が“母子の愛着(アタッチメント)"と呼ばれる心理・行動といえる。 この愛着行動の発達に不可欠な伝達機構が、養育者と子どもの密着という感覚を通した情動の交換もしくは共有ということになる。そう考えてみると、新生児・乳児期あるいはそれ以後であっても、皮膚感覚を通してのスキンシップがヒトの場合にも不可欠なものであることがわかる。 この皮膚感覚を通しての交流、あるいは成長・発達促進の手法としてカンガルーケアとタッチケアがあげられるので紹介する。 カンガルーケアとは? カンガルータアとは、オムツだけをつけた赤ちゃんを、母親が素肌に胸と胸を合わせるように直接抱く方法である。カンガルーが子どもを哺育する姿に似ているためにそう呼ばれている。親子が直接肌を合わせるところから、皮膚直接哺育(skin to skin care)とも呼ぶ。 カンガルーケアは、南米コロンビアの首都ボゴタで、保育器を用いない低出生体重児の在宅ケアとして2人の小児科医により始められたものである。 カンガルーケアの特徴は母子の広範な皮膚接触であり、赤ちゃんは広い範囲の皮膚について触覚や温覚を刺激され、圧覚への刺激は軽度なことだ。お母さんは上体を起こした体位で赤ちゃんを胸に抱くため、前庭固有覚も刺激され、運動覚の刺激は軽度である。 カンガルーケアは、全身の抱擁により母子が密着し、赤ちゃんの静睡眠が増し持続する。また、お母さんとの接近感が急速に育つことで、あたかも子官内に戻ったような相互の安心感・親密感を育み、親の子育ての原動力を生み出す効果がある。 カンガルーケアについて詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。 カンガルーケア - 日本産婦人科医会 日本における 「カンガルーケア・ガイドライン」 タッチケアとは? タッチケアは感覚刺激マッサージとも呼ばれ、ゆっくりとした圧迫マッサー...

機能性構音障害に対する構音訓練の開始年齢ついて言語聴覚士が解説!

機能性構音障害に対する構音訓練の開始年齢ついて 機能性構音障害の訓練開始年齢については、一般的には言語発達レベル 4 歳程度以上が適切であるといわれています。 ただし、誤りの起こり方や誤り方に一貫性がない場合や、被刺激性が見られる場合は、獲得の段階にあるので自然治癒する可能性も高いと考えられています。 しかし、本人が構音のことを気にして話さなくなる、いじめの対象にされるなど、社会心理的に不適応症状がある場合には構音訓練の適応となります。 また、誤り音を指摘されて話すことを避けようとするなど、二次的な問題が見られた場合も、構音訓練を積極的に検討する必要があるといわれています。 多田らは 99 例の機能性構音障害症例の検討で、訓練が順調に進まなかった要因として、訓練音数が多い、訓練開始年齢や訓練終了年齢が高い、低年齢で動機づけが低い、高年齢でコンプレックスが強く自信がもてない、訓練が就学に掛かり通院が困難となる場合などを挙げています。 さらに、訓練結果と訓練開始時期には関連があり、訓練開始が 7 歳以上になると訓練結果が「ほぼ正常」にとどまる症例が多く、就学後の構音訓練のほうが訓練効果は悪くなる結果となっています。 これらを考慮すると、発音に問題をもつ症例への介入は、就学前が妥当であると考えられます。 また自然治癒するであろうと考えられている症例においても、自然治癒しない症例も存在します。 構音の評価や音に結びつけた指導は専門性の高い領域であるため、言語聴覚士の介入時期の判断については、一般的な適応に縛られることなく、症例ごとに生活環境や対人関係なども考慮して慎重に検討すべきであると思われます。

【性の分化について】染色体レベルの性分化と器官レベルの性分化について解説!

染色体レベルの性分化 受精から出生までの時期を胎生期と呼ぶ。男女の分化はこの胎生期から始まり、 性分化 と呼ぶ。 性分化を性染色体レベルでみると、受精した時点で性染色体の組み合わせの違いによって男女間の差は存在しているといえる。ヒトの細胞には、 常染色体44本と性染色体2本の合計46本の染色体 がある。 性染色体は、 男性がXY、女性がXX となっている。精子と卵子の生殖細胞が形成される過程で減数分裂が生じ、精子、卵子の染色体の数は半分になる。ここで精子は、X染色体をもつもの(22+X)、Y染色体をもつもの(22+Y)の2種類に分かれるのである。 一方、卵子はすべてX染色体をもつ(22+X)。そして受精によって再び46本の染色体をもつ個体ができる。受精の際、X染色体をもつ精子が卵子と結ばれると44+XXで女子、Y染色体をもつ精子が卵子と結ばれると44+XYで男子となるのである。 器官レベルの性分化 上記に記した性染色体レベルの男女の違いはまだ絶対的なものではない。男性の精巣、女性の卵巣のもとになる性腺原基は、胎生6週までは男女による構造上の違いはなく、精巣、卵巣のどちらにでもなれる可能性をもっている。 ここで重要な働きをするのが、Y染色体のなかにある 精巣決定遺伝子 だ。性染色体の組み合わせがXYの個体では、精巣決定遺伝子が働き、性腺原基は精巣(睾丸)になるように導かれる。この時期は7週前後であることがわかっている。 一方、性染色体の組み合わせがXXの個体は、精巣決定遺伝子が働かず、性腺原基はそのまま分化し、卵巣になる。このようにみると、精巣決定遺伝子のような特別な遺伝子が働かない限り、身体的性はもともとは卵巣に分化するようなかたちになっている、ということができるでしょう。 さらに、個体の内性器の発育には、ウォルフ管かミュラー管のどちらが発達してくるかが関与してくる。この段階では、男の子の場合、精巣のなかから抗ミュラー管ホルモンが分泌され、ミュラー管を退縮させ、同時に精巣からアンドロジェンが分泌され、ウォルフ管の発育を促す。その結果、ウォルフ管が男性内性器に分化していくのである。 一方、女の子の場合、抗ミュラー管ホルモンやアンドロジェンの作用を受けないで、ミュラー管がそのまま女性内性器に分化する。 性分化を外性器のかたち...

アーカイブ

もっと見る