人間の赤ちゃんの視覚の世界
猫の赤ちゃんは、生まれてしばらくの間(1~2週間程度)、目は閉じたままで周りの様子を見ることはできません。
それに比べて、人間の赤ちゃんは、お母さんのお腹の外に出ると、すぐに自分の力でまぶたを開け、光にみちあふれた世界を体験することができます。
目を通して外界の様子をとらえる感覚を「視覚」と言います。
目から入る情報の多くは、脳の後ろの部分にある後頭葉というところで処理されています。
生まれたばかりの赤ちゃん(新生児:生後4週間以下)は脳の成熟がまだ十分でありません。
視覚の処理も、赤ちゃんの発育とともにゆっくりと段階的に発達していきます。
それでは新生児は、どの程度の視覚の能力をもっているのでしょうか?
生まれたばかりの赤ちゃんでも、ある程度の視覚能力があります。
たとえば、光の強さや線の傾きや色、形の認識や顔の認識など、新生児は外界の様子を目を通して、ある程度把握していることが研究で分かっているのです。
赤ちゃんの視力
私達は物の見えの指標として「視力」をよく用います。新生児の視力はどの程度あるのでしょうか?
一般的な視力測定では、ランドルト環というアルファベットのCのような形をしたものを使って、円の切れ目の部分が自分から見て上下左右のどちらにあるのかを報告してもらうことで検査をします。
しかし、赤ちゃんの場合、まだ言葉を使って報告するということができません。それでは、どのような方法で赤ちゃんの視力は測定されるのでしょうか?
赤ちゃんの視力を調べる方法には、選好注視法や視運動性眼振測定などがあります。
選好注視法とは
視運動性眼振測定赤ちゃんには好きなもの(興味のあるもの)を見つめるという特性があり、選好注視法では、調べたい2つの刺激を並べて、赤ちゃんが2つのどちらを見るかという頻度や、 どれくらい長く見つめるかという注視時間を測定する検査です。
視運動性眼振(OKN)とは
眼前を相次いで移動する画面を眺めると、ものが流れていく方向へのゆっくりとした眼球運動と逆方向への急速な眼球運動を繰り返すという眼球運動。円柱ドラムに貼 り付けられて回転提示された縞を観察すると視運動性眼振(OKN)が生じ、赤ちゃんでも縞が見 えている視運動性眼振(OKN)を起こします。
それらの測定では、縞模様を主に刺激として用います。選好注視法による測定では、赤ちゃんは灰色の紙よりも縞(ストライプ)の紙の方を好んで見つめるが、縞の幅を細くしていくと灰色の紙と同じように見えてくるため、どちらか一方を注視するということがなくなります。こうした2つの刺激の間に注視の違いがでてくる最小の縞の幅を測定することにより、赤ちゃんの視力を調べることができます。
この視力は縞視力(しましりょく)と呼ばれています。
生後1週間の新生児の場合、赤ちゃんが見える縞模様の限界の細さは、30センチ離れたところから縞を見たとき、縞の幅が2.5ミリ程度になるようで、これはふつうの大人が見分けることのできる30倍の大さに相当するようです。
つまり、それだけ生まれたばかりでは、視力は弱いということになりますが、その後の発達で、2か月児は新生児の半分くらいの細さの縞模様を、4か月児では新生児の4分の1くらいの細さの縞模様を灰色の紙と見分けることができるようになります。
しかし、これらはあくまでも縞の自と黒の明るさの対比が大きい場合であり、縞模様がぼやけていたり、縞の自黒の明るさの対比が小さかったりする場合には、さらに太い縞模様でないと赤ちゃんは縞模様と灰色を区別することができません。
赤ちやんの色覚
新生児は色をどの程度見ることができるのでしょうか。赤ちゃんの色彩に関する感覚(色覚)は、眼球の裏側にある網膜の細胞の成熟と関係があります。
網膜には、明かりに対して感度が高い桿体(かんたい)と呼ばれる細胞と、色に対しての感度が良く視力の高い錐体(すいたい)と呼ばれる細胞からなっています。
錐体の細胞はさらに3種類に分けることができ、赤・緑・青を感じる3種類のものがあります。
これらの細胞がすべて興奮すると白になり、全く興奮しなければ黒になり、3つの 細胞がいろいろな割合で興奮することで、すべての色を作り感じることができ るというわけです。
生後8週くらいまでの間は、錐体細胞の中でも青(正確にいうと波長が短い色)に対して感じる細胞が未熟なままであるために、大人とは異なる色の見え方をします。
一方、赤や緑に対して感じる細胞は生後するに利用できます。
赤ちゃんの色覚の検査法はいろいろとありますが、視力測定でも使われるOKNドラムを使う方法が簡単です。
同じ明るさをもち、十分に見える縞を2つの色から作ります。
2つの色が区別できていれば視運動性眼振(OKN)を起こしますし、区別できていなければ視運動性眼振(OKN)を起こさないのです。
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