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11月, 2017の投稿を表示しています

人工指関節置換術と術後のリハビリテーション

人工指関節置換術とは ①人工指関節置換術の適応 各関節に対する人工関節置換術は、骨や軟骨、関節周囲の軟部組織が破壊されているために関節を温存したまま治療を進めても痛みが残ってしまったり、日常生活の中で必要とされる動作(ADL)が困難となってしまったりする症例に適応されます。 破壊された組織と人工関節を置き換えることで除痛やADLの向上が図られるのです。中でも特に人工関節置換術の対象となることが多い関節は、動作中体重を支える役割を果たす膝関節や股関節です。 しかし、症例数はこの2つの関節より大幅に減ってはしまいますが、末端に近い関節である指関節でも人工関節置換術が適応となるケースがあります。特に手術の対象となることの多い疾患は、関節リウマチです。 関節リウマチでは骨や軟骨が破壊されてしまうことで関節に痛みが生じたり、変形により正常の動作が困難になってしまったりします。この症状は特に小さな関節である指関節に多くみられるため、強い痛みや関節の変形によって巧緻動作が困難となり、人工指関節置換術が適応となるケースが多くなるというわけです。 しかし、すべての関節リウマチの方に人工指関節置換術が行われるわけではありません。多くの方には強力な治療薬を使った薬物療法が適応されます。そのような中でも手術が選択される症例があるのは、手術に対してある目標の達成が期待されているためです。 人工指関節置換術を行う際に掲げられる目標とは、関節の見た目と機能を正常関節により近くなるように治すというものです。冒頭で説明したとおり、人工関節置換術では破壊された組織と人工関節が置き換えられます。 このため関節を温存したときとは異なり、見た目は正常関節に近くなること、機能面は痛み無くADLを行うということが可能となります。指関節の場合は特に人目に付くことが多い関節ですし、ADLやIADLにおいて巧緻動作を行うという大きな役割を果たす関節です。このため、これらの目標を達成する意義は大きくなると言えます。 ②人工指関節置換術の実施 人工指関節置換術を行う際には、解剖学的知識や人工関節自体に対する深い知識が要求されます。例えば、関節リウマチで生じるのは骨や軟骨の破壊だけではありません。関節周囲の軟部組織が破壊されることによる影響も把握し、考慮した上で手術を行う必要があり...

人工肘関節置換術後のリハビリテーション

置換術の適応 肘関節はADLと呼ばれる日常生活動作や、IADLと呼ばれる手段的日常生活動作の中で特に多く運動する関節の1つです。例えば、高いところのものを取ったり、着替えをしたりする時などは肘関節が十分に伸展する必要がありますし、食事や家事動作を円滑に行うためには肘関節が十分に屈曲する必要があります。 このように肘関節には高い可動性が求められますが、重要なのは可動性だけではありません。肘関節の動作性はADLやIADLのみならず巧緻動作にも大きな影響を与えるため、正確な動作を行うためにも関節の高い安定性が要求されます。 また、日常的に使用される頻度の高い関節であることもあり、痛み無く動作を行うことのできる無痛性も重要な要素となっています。 このように肘関節には高い可動性、安定性、無痛性が求められます。そしてこれらの要素が侵されるとADLやIADLが障害され、日常生活を快適に送ることが困難となってしまいます。このため、可動性、安定性、無痛性が侵される疾患では人工肘関節置換術(total elbow arthroplasty:TEA)の適応となることがあります。 特にTEAの対応となる頻度が高いのは、関節リウマチです。関節リウマチでは骨や関節が破壊されてしまうため痛みを伴いますし、骨や関節の破壊や異常な癒合などにより関節は異常な可動性を持ってしまったり、不動と呼ばれる関節が全く動かない状態に陥ってしまったりします。 このように、関節リウマチは関節可動性、安定性、無痛性のすべてを侵す疾患ということになります。このためレントゲン上でも関節破壊が認められるほどに病態が進行したケースでは、TEAが適応されることが多くあるのです。 使用される人工肘関節の種類とその特徴 TEAで使用される人工肘関節は、コンポーネントと呼ばれる関節面に使用される部品の特徴により表面置換型と半拘束型の2種類に分類されます。それぞれの人工肘関節はその特徴により、適応となる疾患も大きく異なります。 ①表面置換型人工肘関節 表面置換型人工肘関節は上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネントの間が連結しておらず、TEA後の関節は解剖学的な肘関節とほぼ同じ構成となります。表面置換型では人工関節自体の安定性が乏しいというデメリットがあり、通常の肘関節と同様、筋や靭帯をはじめとし...

人工肩関節置換術後のリハビリテーション

解剖学的人工肩関節の概要 変形性肩関節症患者に対して行われる術式の1つである解剖学的人工肩関節置換術(anatomic total shoulder arthroplasty:aTSA)では、肩関節の解剖学的構造と同様、骨頭を上腕骨側に、関節窩コンポーネントという部品を肩甲骨側に設置します。この術式は腱板の機能が正常である症例であった場合、5年生存率が98%、10年生存率が96%、20年生存率が84%という非常に高い安定性を誇ります。しかし、変形性肩関節症自体が修復不能なほど重度な腱板断裂に起因して生じている場合、aTSAは禁忌となります。これは腱板の持つ働きに関係があります。 腱板とは肩関節の安定性に寄与するインナーマッスルの総称で、上腕骨頭を関節窩の方へ引き寄せる働きがあります。しかし、腱板断裂などでその働きが損なわれてしまうと、上腕骨頭を関節窩の方に引き寄せておくことができなくなってしまい、上肢を挙上した際に骨頭が頭側へ移動してしまいます。この状態で解剖学的人工肩関節を入れた場合、上腕骨は関節窩コンポーネントを木馬のようにゆらゆらと揺らす作用を持ってしまいます。 このようなストレスがかかり続けることで人工関節には早い段階で緩みが生じてしまうので、重度な腱板断裂に起因する症例ではaTSAは禁忌となっているのです。しかし、このような症例の場合は人工骨頭置換術を行っても予後はよくありません。この術式を選択した場合、関節窩を残すことに起因する疼痛が後遺症として生じてしまうのです。 このように、重度な腱板断裂に起因する変形性関節症患者に対する有効な手術が無い、という状況が日本では長年続いていました。しかし、2014年に日本でも反転型人工肩関節が導入されたことにより、状況は好転しました。 反転型人工肩関節の概要 反転型人工肩関節(reverse total shoulder prosthesis)とはフランスで開発された人工関節で、他の先進国から遅れる形で2014年に日本でも導入されました。これにより、日本でも反転型人工肩関節置換術(reverse total shoulder arthroplasty:rTSA)が行えるようになったのです。 この術式は、欧米では「奇跡の術式」とまで称されています。また、日本においてはrTSAの適応となる腱板...

人工股関節置換術を行った方に対するリハビリテーション

人工股関節置換術を行った方に対するリハビリテーション 人工股関節置換術をはじめとした外科的手術を必要とする疾患を持つ方には、術前術後のリハビリテーションが適応される場合が多くあります。その目的は立つ、座る、歩くといった基本的動作能力の維持・向上です。 これらの目的を達成するため、運動療法を中心としたリハビリテーションによる筋力、持久力の維持・向上が図られます。しかし、一口に運動療法を行うといっても、患者様の身体状況や年齢などによって内容は異なります。今回は人工股関節置換術の適応となる場合の多い、高齢者に適した運動プログラムについて説明します。 高齢者の身体的特徴と運動療法の基礎事項 高齢者は運動しても筋肉はつかないと考えられがちですが、若年者と比較してゆっくりではあっても筋力の向上や筋肥大は可能です。しかし、ただ筋力向上だけを目指した運動をすればよいわけではありません。高齢者の身体的特徴と運動療法の基礎事項について押さえた上でプログラムを立案することが重要です。 高齢者の身体的特徴 まず、高齢者は一般的に加齢による筋力低下がみられます。この傾向は下肢にて顕著にみられます。下肢筋力は30代から徐々に減少が見られ始め、80代になる頃には20代の頃のおよそ半分にまで低下してしまうとされています。 このため、運動療法による筋力維持の重要性は高いのですが、若年者と同様のプログラムを行ってしまうと過負荷となってしまい、身体構造の破綻を招いてしまう可能性があるのです。そして、関節や筋肉、骨だけではなく循環器系への影響も十分に考慮することが必要となります。 このため、体に負担をかけないよう、適切な負荷の運動をゆっくりと行うプログラムを立案し、また患者自身にも運動の注意点を把握してもらうことが重要です。 運動療法の基礎事項 運動療法の中の1つである筋力トレーニングには運動効果を上げるための原則があります。まず、過負荷の原則です。筋力トレーニングは軽い負荷では効果が上がりにくいため、少し強めの負荷が用いられます。 ここでいう負荷とは運動の強さだけでなく、運動の頻度も含まれます。筋力増強効果を望むためには、最低でも最大筋力の60~65%の強度が必要であり、通常は4回から10回反復できる程度の強度が適切であるとされています。 頻度は週2~3...

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