純粋語聾の症状
純粋語聾とは、話し言葉の理解障害が選択的に起こり、自発話、自発書字、文字言語の音読と理解が保たれた病態をいいます。
聴覚的理解は、語音認知あるいはそれよりも前の段階に障害があり、復唱と書き取りも障害されます。
単語、文のいずれの理解も悪いのですが、文で障害が明らかとなる場合もあります。ただし検者の回の動きを見て読唇を行ったり、表情や身振りを手掛かりとしたり、文脈や状況を判断して、簡単な口頭命令の理解が改善する場合があります。
純粋語聾は、ゆっくりと話すことによって理解が改善することが多いのですが、改善しない例もあります。
語音の認知は、母音については比較的容易ですが子音の弁別が障害されている場合と、両者で障害が明らかな場合があります。
患者は、自覚的には、人の話し声が雑音や外国語のように聞こえると訴えることが多いを言われています。
しかし、話し声の男女、老若の区別、母国語と外国語の識別、実在語と非実在語の識別、声の主の判別が可能な症例も報告されています。
「純粋」語聾という場合は、言語音以外の聴覚的認知が、障害されていないことが原則となります 。
語聾の症例について非言語音に関する詳しい検討を行えば、環境音の認知や音楽的認知の障害が明らかとなり、より広範な聴覚失認を呈している場合が多いほか、初期には皮質聾を呈することが少なくないといわれていますが、最近では発症当初からほぼ純粋な語聾を示した報告も少なくありません。
音の空間的定位は正常である場合が多いと言われていますが、障害されている場合もあります。
純粋語聾といっても、音楽的能力について調べられた例では、たいてい何らかの側面で障害がみられています。
熟知していると考えられるメロディーの認知が悪い場合、メロデイーの異同弁別が悪い場合、歌が歌えない場合の、リズムの複製が悪い場合、 リズムの異同弁別が悪い場合などの報告があります。
純粋語聾は軽度であれば音韻性錯語ゃ呼称障害の存在は許容されるようです。
左側病巣による語聾例は、ウエルニッケ失語から回復した例である場合が多いといいます。
しかし、純粋語聾に移行した例については、 はっきりとウェルニッケ失語であったと記載されているものは少ないとのことです。