語義失語の病巣





語義失語の病巣

定型的な語義失語を生じるのは、左側に強い側頭葉の葉性萎縮例です。
その病理学的診断は確定していないものが多いですが、側頭葉を主に侵すタイプのPick病の可能性があります。
語義失語例では、人格の解体がみられないことからPick病とされない場合がありますが、もともとの性格に比べると明らかな人格変化を有する症例が多いと言われています。
しかし、長年にわたつて明らかな痴呆を呈さず、失語症を主症状とする緩徐進行性失語と診断される症例の病理学的診断は一定していません。
ヘルペス脳炎は側頭葉下部を内側から外側まで損傷し、左側の障害が強い場合に語義失語に近い症状を呈するといわれています。
ヘルペス脳炎では、語の意味の障害が軽く再認がある程度保たれるほか、読みと書字の障害が目立たないといいます。
脳血管障害例でも、ヘルペス脳炎例と同様に部分的な症状を呈する場合がありますが、語義失語を生じるには、少なくとも左側頭葉の中間部が損傷されることが必要と考えられています。
側頭葉後下部ないしは後部は失書や失読を生じることが、本邦では報告されており、この部位が含まれな い方が語義失語の病像が明確になるといえる。
側頭葉前部については、ほぼ常に障害が及んでおり、側頭葉切除術で明らかな呼称障害を起こさないことが知られているとは言え無視はできません。
しかし、側頭葉の前~中間部の損傷が語義失語を起こすのに十分とは言えず、右側にも障害がある場合に定型的症状が起こる可能性があります。
葉性萎縮では語の意味を支える系あるいはネットワークが選択的に侵される可能性を指摘した報告がありますが、進行性の病変か否かも脳機能の修復や再構築と関連して重要な要素と思われます。

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