語義失語(ごぎしつご)の症状
語義失語は、語の意味(語義)の理解障害を呈し、喚語困難(言いたい言葉がでてこない症状)と呼称障害(言おうとする物の名前がでてこない症状)が明らかで、しかも目標の語を言われても、それとわからない再認の障害を伴う失語症です。
障害の中心となる語は、固有名詞と具体的な事物を示す名詞(動物や植物の名等)であり、ついで動詞、形容詞、副詞などの順になるといわれています。
例としては、「調子はいかがですか」と聞くと、「調子?調子ってなんですか、調子の意味がわかりません」のような反応があります。
文法的理解は基本的に保たれていて、トークンテスト(失語症に対する理解力の検査)で良好な成績を示すことに反映されます。
構音は良好で流暢な話し方になりますがが、文意を担う語彙が貧困化し、遠回しな(迂遠)表現を示すほか、語性錯語(例:時計を鉛筆と言い誤る)を伴います。
語義失語は、復唱は保たれ、反響言語(オウム返し)もみられます。
そのため、語義失語は超皮質性感覚失語の一型といえます。
ただし、理解障害が語の意味主体である点が、文レベルの障害を伴う一般的なタイプと異なるのが特徴です。
症状のみから言えば、語義失語は、音声学的および視覚的語形態と意味が結びつかない二方向性の障害で田辺らは語の意味の選択的障害と表現しています。
語義失語は本邦に特有の失語型であるとする考え方がありますが、理由としては読みと書字の特徴を診断基準に入れていることに起因すると思われます。
通常の超皮質性感覚失語では理解を伴わない音読が可能とされるのに対して、語義失語では漢字の読みにおいて、「相手→ソウシュ」、「この布を→このフを」のように語の意味に対応しない音訓の誤読を呈する点が特徴があります。
通常の超皮質性感覚失語では理解を伴わない音読が可能とされるのに対して、語義失語では漢字の読みにおいて、「相手→ソウシュ」、「この布を→このフを」のように語の意味に対応しない音訓の誤読を呈する点が特徴があります。
一方、漢字の書字では漢字をその音によつて、意味を無視しつつ表音文字のように用いる類音的錯書(いわゆる当て字)がみられます。
このほかの語義失語の症状として、ことわざや比喩的表現の理解障害があり、「瓜二つ」について「瓜が二つあるっていうこと」と答えたりします。
また、文の補完現象がみられず、呼称で語頭音ヒントが有効でないこと、語に対する既知感が喪失していることも特徴です。