意味ルート(復唱のルート) 通常の単語の復唱における中心的なルートです。 意味ルートは以下の通りです。 音声入力 ↓ 音響分析 ↓ 音韻照合 (入力音韻辞書) ↓ 語彙照合 (入力語彙辞書) ↓ 意味照合 (意味記憶の活性化) ↓ 語彙選択(出力語彙辞書) ↓ 音韻選択(出力音韻辞書) ↓ 音韻配列 (音韻出カバッファー) ↓ 構音運動プログラム ↓ 構音運動実行(音声出力) 復唱の意味ルートは、言われた単語の意味を理解した上で、あらためて同じ単語を自ら発話するというルートです。 つまり、単語の復唱とは、単なる模倣ではなく、いったん理解したことばを自ら改めて表出するという「再生」の要素を含んだ処理になります。 意味照合の段階に障害がある場合、聴きとった語が、単語であると感じながらも、その意味を解せないまま復唱をせざるを得なくなります。 意味ルートの場合には、語彙照合の障害の場合と異なり、聞き取った単語に対して、単語であるという既知感は持っています 。 健常者における単語の復唱では、 音響ルート 、 非語彙的音韻ルート 、 非意味的語彙ルート 、意味ルートのすべてが重畳して機能していると考えられます。そのため、復唱は、これらいずれの処理過程が障害されても復唱能力は低下してしまいます。 復唱は、聴覚的理解や呼称など、口頭言語に必要な、ほぼすべての言語情報処理を含むため、重要な処理過程になります。 注意するべき点は「復唱が障害される」=「把持力の低下」ではないことです。 把持という用語は、使うとすれば入力音韻辞書から出力音韻辞書 (および音韻出カバッファー)に 直接、音韻情報が転送される場合です。そのため、把持は語彙処理および意味処理の段階がバイパスされる場合に限定されます。