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筋収縮の種類と特徴

等尺性収縮 isometric contraction

抵抗に対して筋が収縮する場合、筋の張力が増し収縮しているにもかかわらず、筋の起始・停止が一定の長さを保っている収縮のことをいいます。
実際には筋内部における収縮性部(筋線維)の短縮と両端の弾性部(腱など)の延長が起こっています。

等尺性収縮の特徴

  • 酸素消費は少ない。
  • 最大張力を得やすい。
  • 関節を動かしてはならない場合でも、筋力増強訓練として使用することができる。
  • 特別な機器を利用せずにどこでも簡単に行うことができる。
  • 運動痛のある四肢の筋力増強に適している。
  • 比較的短時間に急速に筋力を向上させる。
  • 関節角度特異性がある。
  • 大きな力をだしていなくても疲労感が強くなりやすい。
  • 強い負荷を持続的に与えた場合、末梢血管抵抗を増大させて血圧の上昇を招く恐れがある。
  • 運動負荷が過負荷になる傾向がある。
  • 固有感覚障害により位置覚・運動覚力、喪失している場合には、運動を自覚することが困難となる。

等張性収縮 isotonic contraction

抵抗に対して筋が収縮し、張力がかかり、関節運動が起きる場合の収縮をいいます。 (同量の負荷抵抗に対して筋収縮を行うため、等張性収縮といいます)
実際には、筋の牽引角度・角速度・てこの原理による負荷量が変化するため一定の張力を保持することは不可能です。

等張性収縮の特徴

  • 筋のポンプ作用の賦活により静脈血・リンパの還流を多くする。
  • 心肺機能の働きの促進に適している。
  • 運動感覚刺激を向上させることができる。
  • 筋力を規則正しい速度で改善していく傾向がある。
  • 強度が強く、時間を延長するに従って酸素消費が大きくなる。
  • 最大張力を得にくい。

求心性収縮(短縮性収縮) concentric contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が近づいていく、筋張力が抵抗より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 負荷量よりも筋張力が強く、筋の長さが短縮しつつ運動する。
  • 一定の割合で筋力増強をするのに適している。
  • 少ない負荷量で運動回数を増やすことにより筋持久力の増大が図れる。

遠心性収縮(伸張性収縮) eccentnc contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が遠ざかる、抵抗が筋張力より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 筋張力よりも負荷量が強く、筋の長さが伸張しつつ運動する。
  • 発揮される筋力は、伸張性1又縮、等尺性収縮、短縮性収縮の順であり、筋力増強運動に適している。
  • 負荷量としては、最大筋力の120~130%が最適とされている。

等速性収縮 isokinetic contraction

関節運動における角速度を一定に保持した筋収縮の相のことをいいます。 このとき、運動速度はあまり問題とされておらず、また、いかに速度を一定にしようと努力しても等速にはなり得ないといわれています。

等速性収縮の特徴

  • 種々に運動速度を変化させることにより等尺性収縮や等張性収縮特徴をもっています。
  • 運動後の疲労・痛みの出現が比較的少ないとされています。
  • 各々の角度で最大の抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 運動痛があれば、痛みの許容範囲内での最大抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 等尺性収縮・等張性収縮より大きな筋の活動電位を示し、より多くの運動単位を活動状態にしています。

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