姿勢制御機構の階層性

下位中枢の機能は上位中枢に統合され、下位中枢独自の機能は抑制されています。

静的姿勢制御

頭部・体幹を重力方向に対 して正しい位置に戻し、構えを正常位にすることを立ち直り反射といいます。

動的姿勢制御

支持基底面を移動させて姿勢を保持する反応をバランス反応、平衡反応といいます。
1つの反射による運動が次の反射運動の刺激となリー連の反射が連続して起こる連鎖反応です。 個々の反射が連続して規則的に機能します。

脊髄反射

脊髄反射には、①伸張反射、②屈曲反射、③陽性支持反応と陰性支持反応、④交叉性反射、⑤長脊髄反射があります。

低位脳幹(延髄、橋)の反射

①緊張性頸反射(非対称性緊張性頸反射 、対称性緊張性頸反射)、②緊張性迷路反射 、③頸の立ち直り反射があります。

高位脳幹(中脳)と視床の反射

①迷路性立ち直り反射、②頸に対する体の立ち直り反射、③体に対する体の立ち直り反射があります。

大脳皮質の反射

①視性立ち直り反射、②踏み直り反応、③跳び直 り反応、④足踏み反応があります。

筋収縮の種類と特徴

等尺性収縮 isometric contraction

抵抗に対して筋が収縮する場合、筋の張力が増し収縮しているにもかかわらず、筋の起始・停止が一定の長さを保っている収縮のことをいいます。
実際には筋内部における収縮性部(筋線維)の短縮と両端の弾性部(腱など)の延長が起こっています。

等尺性収縮の特徴

  • 酸素消費は少ない。
  • 最大張力を得やすい。
  • 関節を動かしてはならない場合でも、筋力増強訓練として使用することができる。
  • 特別な機器を利用せずにどこでも簡単に行うことができる。
  • 運動痛のある四肢の筋力増強に適している。
  • 比較的短時間に急速に筋力を向上させる。
  • 関節角度特異性がある。
  • 大きな力をだしていなくても疲労感が強くなりやすい。
  • 強い負荷を持続的に与えた場合、末梢血管抵抗を増大させて血圧の上昇を招く恐れがある。
  • 運動負荷が過負荷になる傾向がある。
  • 固有感覚障害により位置覚・運動覚力、喪失している場合には、運動を自覚することが困難となる。

等張性収縮 isotonic contraction

抵抗に対して筋が収縮し、張力がかかり、関節運動が起きる場合の収縮をいいます。 (同量の負荷抵抗に対して筋収縮を行うため、等張性収縮といいます)
実際には、筋の牽引角度・角速度・てこの原理による負荷量が変化するため一定の張力を保持することは不可能です。

等張性収縮の特徴

  • 筋のポンプ作用の賦活により静脈血・リンパの還流を多くする。
  • 心肺機能の働きの促進に適している。
  • 運動感覚刺激を向上させることができる。
  • 筋力を規則正しい速度で改善していく傾向がある。
  • 強度が強く、時間を延長するに従って酸素消費が大きくなる。
  • 最大張力を得にくい。

求心性収縮(短縮性収縮) concentric contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が近づいていく、筋張力が抵抗より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 負荷量よりも筋張力が強く、筋の長さが短縮しつつ運動する。
  • 一定の割合で筋力増強をするのに適している。
  • 少ない負荷量で運動回数を増やすことにより筋持久力の増大が図れる。

遠心性収縮(伸張性収縮) eccentnc contraction

筋収縮時に筋の起始・停止が遠ざかる、抵抗が筋張力より大きい場合にみられる相のことをいいます。
  • 筋張力よりも負荷量が強く、筋の長さが伸張しつつ運動する。
  • 発揮される筋力は、伸張性1又縮、等尺性収縮、短縮性収縮の順であり、筋力増強運動に適している。
  • 負荷量としては、最大筋力の120~130%が最適とされている。

等速性収縮 isokinetic contraction

関節運動における角速度を一定に保持した筋収縮の相のことをいいます。 このとき、運動速度はあまり問題とされておらず、また、いかに速度を一定にしようと努力しても等速にはなり得ないといわれています。

等速性収縮の特徴

  • 種々に運動速度を変化させることにより等尺性収縮や等張性収縮特徴をもっています。
  • 運動後の疲労・痛みの出現が比較的少ないとされています。
  • 各々の角度で最大の抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 運動痛があれば、痛みの許容範囲内での最大抵抗を筋に負荷させ得ます。
  • 等尺性収縮・等張性収縮より大きな筋の活動電位を示し、より多くの運動単位を活動状態にしています。

リハビリテーションの時期と特徴

リハビリテーションの時期と特徴

急性期

早期離床による廃用症候群の予防と早期からの運動学習によりセルフケアなど日常生活の早期自立を目指します。理学療法であれば、疾患や障害特性への配慮、リスク管理、廃用症候群の予防を考慮しながら早期離床、基本的な運動、動作の獲得を目標とします。

回復期(亜急性期)

セルフケア、移動、コミュニケーションなどの日常生活動作(ADL)を最大限に改善するような介入を行い、寝たきりの防止、家庭復帰、早期社会復帰を目指します。 基本動作練習、日常生活動作(ADL)練習、こころのケア、家族への対応、家屋改修などが行われます。

維持期(慢性期)

通院、通所、訪問でのリハビリテーションを継続して回復期で獲得した日常生活動作(ADL)を維持します。獲得した機能・体力維持、生活環境整備、社会参加の促進など効果的な日常生活活動の能力を維持します。

終末期

尊厳のある終末期を支援します。最後まで人間らしさを保証するように、清潔保持、不動による苦痛の解除、不作為による廃用症候群の予防、著しい関節の変形・拘縮の予防、呼吸の安楽、経口摂取の確保、尊厳の排泄手法の確保、家族へのケアなどが必要となります。

強直と拘縮と関節機能異常

強直と拘縮と関節機能異常

強直 ankylosis

関節内にある組織の病理的変化に基づいて関節面が癒着し、可能性を喪失した状態を言います。 骨性強直(完全強直)と結合織性強直(不完全強直)とがあります。 理学療法では、ほとんど治療困難なものです。

拘縮 sontracture

関節外にある軟部組織が病理的変化に基づいて短縮し、伸展性が喪失したために、可動域が制限された状態を言います。対象となる組織によって皮膚性拘縮、筋性拘縮、神経性拘縮、関節性拘縮などと呼ばれます。 感染に、またはある程度改善される余地のあるものをいいます。

関節機能異常 jaoint dysfunction(Mennellによる)

病理学的に変化がない関節で遊び、滑り、回転などの関節内運動の機能が傷害された状態を言います。 改善が可能なものを言います。

NIHSS

NIHSSとは

NIHSSとは、脳卒中の重症度を評価するスケールです。
National institute of Health Storoke Scaleの略でNIHSSです。1989年ごろから臨床現場でよく用いられています。
脳梗塞の治療法の1つであるrt-PA静脈注射中は、1時間までは15分毎に、投与開始から7時間までは30分毎、24時間までは1時間毎にこのNIHSSを行うことが管理指針で定められています。

NIHSSの評価方法

NIHSSの評価方法は、1a~1cと(2)~(11)までの合計13の項目をチェックして点数を計算して行きます。
最高は42点で、点数が高いほど重症度が大きくなります。
  • 1aは、意識水準です。0点が完全覚醒で、1点が簡単な刺激で覚醒する、2点が繰り返して刺激したり強い刺激で覚醒する、3点が強い刺激に対しても完全に無反応、となっています。
  • 1bは、意識障害の評価です。今は何月ですか?あなたは今何歳ですか?といった質問に正確に答えられるかどうかをみます。 0点が両方正解、1点がどちらか片方のみ正解、2点が両方不正解となっています。
  • 1cは意識障害の評価で、開眼閉眼の指示や手を握る開くの指示に従えるかどうかを見ます。 同じく2つともできれば0点、どちらか片方だけできれば1点、両方ともできなければ2点です。
  • (2)は、注視がどのくらいできるかです。 0点が正常、1が部分的注視麻痺、2点が完全注視麻痺です。
  • (3)は、視野を評価します。 0点が視野の欠損なし、1点が部分的半盲、2点が完全半盲、3点が両側性半盲です。
  • (4)は、顔面の麻痺のチェックです。 0点が正常、1点が軽度の麻痺、2点が部分的麻痺、3点が完全麻痺の4段階で判定します。
  • (5)は、上肢の運動で、座位で90度、仰臥位(仰向けに寝る)で45度の挙上ができるかどうかを見ます。 0点の45度を10秒保持可能、1点が45度を保持できるが10秒以内に下垂してしまう場合、2点が45度の挙上や保持ができない場合、3点が重力に抗して動かない場合、4点が全く動かないと5段階で判定します。
  • (6)は、下肢の運動で、仰臥位で下肢を30度挙上させます。 0点の30度を5秒間保持可能、1点が30度を保持できるが5秒以内に下垂してしまう場合、2点が重力に抗して動きが見られる、3点が重力に抗して動かない、4点が全く動かない、となっています。
  • (7)は、運動失調・指鼻指試験です。 0点のなしから2点の2肢で評価します。
  • (8)は、感覚の評価でpin pickテストです。 0点が障害なし、1点が軽度から中等度障害、2点が重度から感覚脱失です。
  • (9)は、言語の評価です。 0点の正常から1点の軽度から中等度の失語、2点の高度の失語、3点の無言・全失語まであります。
  • (10)は、構音障害のチェックです。 0点が正常、1点が軽度から中等度の障害、2点が高度の障害です。
  • そして最後の項目(11)は、消去や無視の程度です。 0点がなし、1点が軽度から中等度、2点が高度です。
このようにして1つ1つ判定して行き、それぞれの点数を足していきます。 全部が最高得点だった場合は42点となります。

NIHSSでわかること

このNIHSSでわかることや用いられ方は、点数に応じて投薬治療や手術の適応の有無を判断することが可能です。 また、その後の神経回復やどれくらい自立した生活ができるかといった、予後の予測をつけるために用いられています。 この点数が高いほど退院後の自立した生活が難しくなるということで、退院後のおよその生活状況がわかります。 家族で介護ができるか、デイサービスや訪問看護が必要か、他施設への転院を考えるべきかといった看護計画やその後のリハビリなどの判断にも用いられます。
しかし、NIHSSではいくつかの欠点も指摘されています。
1つ目は、脳神経のチェック項目が少なく、循環系の障害は評価が不十分であること、2つ目は、言語機能の点数配分が高いことから失語症があると点数がアップして重症度が高くなることがあげられます。 そして3つ目に、意識障害があると点数が高くなること、4つ目は、軽微な麻痺がカウントされないことです。 さらに5つ目に、同じ点数でもADLの程度が全く違うことがあって、ADL障害を反映していないことです。
全般的な機能を評価することはできますが、この点数で治療効果の判定ができると言うものではないでしょう。
また、NIHSSは、いつ評価しても同じ結果が得られるという点や、誰が評価しても同じ結果が得られるという点は優れていますが、同じ人が複数回評価すると同じ結果になるかどうかの検者内信頼性は確認されていない、と言うデメリットも指摘されています。
NIHSSによる脳卒中の重症度評価のこれらの欠点を補うために、NIHSSだけではなく他の評価方法を併用することが多いです。 例えば、modified rankin scale(mRS)やstroke impairment assessment(SIAS)があります。
それぞれのスケールのメリットやデメリットを知ったうえで、上手く併用することが大切です。