慢性硬膜下血腫(CSDH)の認知症の特徴とアルツハイマー型認知症の比較

慢性硬膜下血腫に伴う認知症の場合



  • 主症状:注意障害、会話内容の混乱、活動性低下
  • 意識障害:あり
  • 見当識障害:さまざま巣症状の合併:片麻痺、失語、失禁などあり
  • 歩行障害:多い
  • BPSD:基本的になし
  • 日内変動:あり
  • 経過:発症時期は明瞭で、1〜2カ月で増悪する


アルツハイマー型認知症の場合



  • 主症状:近時記憶障害、語想起などの障害
  • 意識障害:重症になるまでなし
  • 見当識障害:あり
  • 巣症状の合併:なし
  • 歩行障害:少ない
  • BPSD:あり
  • 日内変動:なし
  • 経過:発症時期は不明瞭で、緩徐に進行する

脳神経外科速報 vol.26 no.2 2016.2.より参照

パーキンソン病統一スケール(UPDRS)の評価項目

パーキンソン病統一スケール(UPDRS)の評価項目


UPDRS その1 精神機能,行動および気分


1.知的機能の障害


 0 なし

 1 軽度.健忘が一貫してみられるが,部分的に思い出す.他の障害はない.

 2 中等度の記銘力障害と見当識障害あり.複雑な問題への対処に中等度の障害.

      家庭内でも軽度ながら明らかに障害あり,ときに介助を必要とする.

 3 重篤な記憶障害と時間と,ときに場所に対する見当識障害.問題の対処に重篤な

障害.

 4 重篤な記憶障害と見当識は人に対してのみ保たれている.判断や問題解決は不可

能.身の回りのことにもかなりの介助が必要で,ひとりにしておけない.

2.思考の障害(痴呆または薬物の中毒による)


 0 なし

 1 生々しい夢をみる.

 2 たちの良い幻覚.幻覚であることはわかっている.

 3 時々あるいはしばしば幻覚・妄想があるが病識がない.日常生活に支障をきたす

ことあり.

 4 持続的に幻覚・妄想あるいは病勢盛んな精神病がある.自分でケアをできない.

3.抑うつ


 0 なし

 1 ときに正常以上の悲しみや罪悪感に悩まされる.数日や数周続くことはない.

 2 うつが1週間以上続く

 3 不眠,食欲不振,体重減少,興味の消失をともなう抑うつ状態.

 4 上記の症状に自殺念慮あるいは自殺企図をともなう.

4.意欲・自発性


 0 正常

 1 通常より受動的.より消極的.

 2 選択的活動(ルーチンでない)を進んでおこなわない.興味の喪失.

 3 日々の活動(ルーチン)を進んでおこなわない.興味の喪失.

 4 引きこもり,意欲の完全な消失.

UPDRS その2 日常生活動作(on/off時に分けて評価)


5.会話


 0 正常

 1 軽度の障害.理解するのに障害なし.

 2 中等度の障害.ときどきもう一度くり返すように頼まれる.

 3 高度の障害.しばしばもう一度くり返すように頼まれる.

 4 ほとんどの時間,聞き取り不能.

6.唾液


 0 正常

 1 口中の唾液が軽度ながら明らかに増加.夜間の流涎をみることあり.

 2 中等度に唾液が増加.軽度の流涎があることもある.

 3 著明に唾液が増加.ときに流涎.

 4 著明に流涎,ティッシューやハンカチをつねに必要とする.

7.嚥下


 0 正常

 1 まれにむせる.

 2 ときどきむせる.

 3 柔らかい食事にしないとむせる.

 4 鼻管や胃瘻でチューブフィーディング.

8.書字


 0 正常

 1 軽度書字が遅いか字が小さい.

 2 中等度に遅いか字が小さい.すべての語は読める.

 3 高度に障害.すべての語が読めるわけではない.

 4 語の大多数は読めない.

9.食べ物のカット,食器の取り扱い


 0 正常

 1 いくらか遅くぎこちないが,助けはいらない.

 2 遅くぎこちないが,たいていの食餌はカットできる.部分的に介助.

 3 食べ物は他の人に切ってもらわないといけないが,ゆっくりと食べられる.

 4 他人に食べさせられる.

10.着衣


 0 正常

 1 いくらか遅いが,介助は要しない.

 2 ボタンを留める,そでに腕を通すなどで時に介助を要する.

 3 いくらか自分でできることもあるが,かなり介助が必要.

 4 自分では何もできない.

11.衛生(入浴・トイレ)


 0 正常

 1 やや遅いが介助は要しない.

 2 シャワーや入浴に介助を要する.とても遅い.

 3 洗顔・歯磨き・くし・風呂に行くなど介助を要する.

 4 膀胱カテーテル.

12.寝返りおよびシーツをなおす


 0 正常

 1 すこし遅く,不器用だが,介助は必要ない.

 2 ひとりで寝返りをうったりシーツを直せるが,たいへんな努力を要する.

 3 寝返りやシーツをなおす動作は始められる.しかし完結できない.

 4 自分ではまったくできない.

13.転倒(すくみ現象とは関係なしに)


 0 なし

 1 まれに転倒

 2 時々転倒.平均して一日に一回はない.

 3 平均して一日一回転倒.

 4 一日数回転倒.

14.歩行中のすくみ


 0 なし

 1 歩行中にまれにすくみ.歩き始めにすくむことがある.

 2 時々歩行中にすくむ.

 3 しばしばすくむ.これにより時に転倒する.

 4 しばしばすくみ足により転倒する.

15.歩行


 0 なし

 1 軽度障害.腕の振りが無かったり,足を引きずることがある.

 2 中等度障害.しかし介助はほとんどいらないか不要.

 3 高度障害.介助を要する.

 4 介助をもってしても歩行不能.

16.振戦


 0 ない

 1 軽度そしてまれにある.患者にとっては煩わしくない.

 2 中等度.患者は気になる.

 3 高度.多くの日常生活動作ができない.

 4 著明.ほとんどの日常生活動作が妨げられる.

17.パーキンソン症候群に関連した感覚障害


 0 なし

 1 時々感覚鈍麻,ちくちく,または痛みを感じる.

 2 しばしば 感覚鈍麻,ちくちく,または痛みを感じる.苦痛ではない.

 3 しばしば痛みを感じる.

 4 耐え難い痛み.

UPDRS 3 運動機能検査(on時に検査する)


18.言語

 0 正常

 1 表現,用語,and/or 声量の軽度の障害がある.

 2 中等度の障害.単調で不明瞭だが理解できる.

 3 著しい障害.理解が困難.

 4 理解不能

19.顔の表情


 0 正常

 1 わずかに表情が乏しい.ポーカーフェース.

 2 軽度だがあきらかな表情の減少.

 3 中等度の表情の乏しさ.口を閉じていないときがある.

 4 仮面様で,ひどくあるいは完全に表情がない.口は 0.6cm 以上開いている.

20.安静時の振戦


 0 なし

 1 わずかの振戦が,時に見られる程度.

 2 軽度の振幅の振戦が常にある.または中等度の振幅の振戦がときどきある.

 3 中等度の振戦がほとんどの時間ある.

 4 高度の振戦がほとんどの時間ある.

21.手の動作時または姿勢時振戦


 0 ない

 1 軽度;動作にともなっておこる.

 2 中等度の振幅;動作にともなっておこる.

 3 中等度の振幅;動作時,姿勢時におこる.

 4 著明な振幅.食事が妨げられる.

22.固縮(患者は座位で安静にしている.主要な関節で判断する.歯車現象は無視.)


 0 ない

 1 軽微またはミラームーブメントないし他の運動で誘発できる程度.

 2 軽度ないし中等度の固縮.

 3 高度の固縮.しかし関節可動域は正常.

 4 著明な固縮.関節可動域に制限あり.

23.指タップ(親指と示指をなるべく大きく早くタップする.左右は別々に)


 0 正常(>=15/5秒)

 1 すこしおそいか,振幅が減少している.(11-14/5秒)

 2 中等度の障害.疲れやすい.ときどき運動が止まることがある.(7-10/5

秒)

3 著明な障害.はじめにしばしばすくむ.または運動中にとまる.(3-6/5秒)

 4 ほとんどできない.(0-2/5秒)

24.手の動作(できるだけ大きく,すばやく手の開閉をくり返す.左右は別々に)


 0 正常

 1 すこし遅いか,振幅が小さい.

 2 中等度の障害.すぐ疲れてしまう.ときに運動が止まることがあっても良い.

 3 著明な障害.しばしば開始時にすくみ,運動がとまる.

 4 ほとんどできない.

25.手の回内回外運動.垂直や水平の位置で,できるだけ大きく.左右は別々に.


 0 正常

 1 すこし遅いか,振幅が小さい.

 2 中等度の障害.すぐ疲れてしまう.時に止まっても良い.

 3 著明な障害.しばしば開始時にすくむ.あるいは途中で止まる.

 4 ほとんどできない.

26.下肢の敏捷性.下肢をあげてかかとで床をタップする.かかとは7.5cm あげる.


 0 正常

 1 すこし遅いか,振幅が小さい.

 2 中等度の障害.すぐ疲れてしまう.時に止まっても良い.

 3 著明な障害.しばしば開始時にすくむか運動が止まる.

 4 ほとんどできない.

27.イスから立ち上がる.(まっすぐの背もたれの木か金属のイス.腕を組んだまま
立ち上がる)


 0 正常

 1 遅い.または1度でうまく行かないことあり.

 2 肘掛けに腕をついて立ち上がる.

 3 イスにふたたび倒れ込む.一度ではうまく行かないことあり.介助なしで立ち上

がれる.

 4 介助なしでは立ち上がれない.

28.姿勢


 0 正常

 1 軽度の前屈姿勢.高齢者では正常な程度.

 2 中等度に前屈姿勢.明らかに異常.すこし左右一方に偏っていても良い.

 3 高度に前屈姿勢で,脊柱後彎(亀背)をともなう.中等度に左右一方に偏ってい

てよい.

 4 高度の前屈姿勢.姿勢は極端に異常である.

29.歩行


 0 正常

 1 歩行は緩慢.数歩はひきずり足になる.加速歩行や前方突進はない.

 2 歩行は困難をともなう.介助は要しない.加速歩行や数歩の前方突進あり.

 3 いちじるしく障害.介助を要する.

 4 介助があっても歩行不能.

30.姿勢の安定性.(患者はまっすぐに立ち,開眼し,足はすこし開いて準備する.
肩を後方に勢いよく引いて後方突進現象をみる)


 0 正常

 1 後方突進あり.自分で立ち直れる.

 2 姿勢反射がおきない.検者が支えなければ倒れてしまう.

 3 きわめて不安定.自然にバランスを失う.

 4 介助なしでは立てない.

31.からだの動作緩慢.(動作緩慢,ちゅうちょ,腕の振りの減少,運動の振幅の減
少と運動全体の少なさを総合的に評価する)


 0 なし

 1 わずかに緩慢.ゆっくりとした動作.人によっては正常のこともある.運動の振

幅がやや小さいこともある.

 2 軽度に動作が緩慢.運動量があきらかに低下している.運動の大きさがやや低下.

 3 中等度に動作が緩慢.運動量が低下し,または運動の大きさが低下している.

 4 著明に動作が緩慢.運動量の低下.または運動の大きさが低下している.

UPDRS 4 治療の合併症


A. ジスキネジア

32.持続時間(起きている時間の何%か)


 0 なし

 1 1-25%

 2 26-50%

 3 51-75%

 4 76-100%

33.ジスキネジアによる障害.


 0 なし

 1 軽度障害

 2 中等度障害

 3 重度に障害

 4 完全な障害(なにもできない)

34.痛みをともなうジスキネジア.どのくらい痛いか.


 0 なし

 1 軽度

 2 中等度

 3 重度

 4 著明な障害

35.早朝のジストニア


 0 なし

 1 あり

B.症状の日内変動

36.服薬時間から予測可能なオフ期間はあるか.


 0 なし

 1 あり

37.服薬時間から予測不可能なオフ期間はあるか.


 0 なし

 1 あり

38.とつぜん(数秒以内など)おこるオフ期間はあるか


 0 なし

 1 あり

39.起きている時間の何%が平均してオフ期間か.


 0 なし

 1 1-25%

 2 26-50%

 3 51-75%

 4 76-100%

C. その他の合併症状

40.患者は食欲低下,嘔気,嘔吐をともなっているか.


 0 なし

 1 あり

41.不眠や眠気があるか.


 0 なし

 1 あり

42.起立性低血圧症状はあるか.


 0 なし

 1 あり

http://www.treatneuro.com/wp-content/uploads/updrs.pdfより参照

進行性核上性麻痺 (PSP)の重症度機能評価スケール

進行性核上性麻痺 (PSP)の重症度機能評価スケール


機能評価スケールは、症状の有無や重症度の定量化、治療の効果検証などに役立ち、包括的なリハビリテーションを提供する上で重要です。

PSPの機能評価スケールには、2つの評価スケールがあります。

Unified Parkinson’s DiseaseRating Scale(UPDRS)


一つは、Unified Parkinson’s DiseaseRating Scale(UPDRS)が一般的に普及してます。

この評価スケールは、パーキンソン病をもとにデザインされているが、運動項目においてPSPにも適応されます。

検査方法や評価表はこちら↓

http://www.st-medica.com/2012/12/updrs.html

Progressive Supranuclear PalsyRating Scale(PSPRS)


2つ目は、Lawrence I GolbeによってデザインされたProgressive Supranuclear PalsyRating Scale(PSPRS)があります。

精神機能、嚥下機能、眼球運動機能、四肢体幹機能等を評価します。

このPSPRSには、Lawrence l Golbe監修のもと、湯浅と濱田の両博十が翻訳した進行性核上性麻痺機能評価尺度日本語版(PSPRS-J)があります。

各項目の重症度に応じた点数が配分されていて、重症度が高いほど点数が高く、最高で100点となっています。

PSPRSの評価表はこちら↓

遂行機能(executive function)

遂行機能とは


遂行機能(executive function)とは神経心理学的な立場から形成された概念です。

目的をもった一連の活動を有効に成し遂げるため、自ら目標を設定し、計画を立て、実際の行動を効果的に行う能力のことをいいます。

一般的な遂行機能の特徴は、目標指向性、新規の問題の解決、ルーチンである反応の抑制、複数のアプローチ法、複数の課題が同時に存在すること(同時処理)、状況に応じた柔軟な解決、規則の推論、概念化や概念の形成といった機能をいいます。

日常生活と遂行機能


日常生活では、買い物や料理の手順、銀行などでの手続き、対人関係の構築や維持には必要とされる機能で、職場では遂行機能を多用しています。

遂行機能に問題があると


遂行機能が保たれていれば自立した生産的な生活ができますが、逆に遂行機能障害を認めると他の認知機能や身体機能が良好であっても自立した生活や社会的に意味のある生活を送ることは困難となります。

言語、行為、視覚認知、視空間認知、記憶といった比較的要素的な領域では、なにをどれだけできるかという指標で表されるが、遂行機能はどのように物事を行うか、あるいは物事を行うか否かで判断されます。

そのため、遂行機能障害は、計画を立てる際やルーチンではない、新たな状況や問題が生じた際に出現しやすいといわれています。

遂行機能に問題があると、変化した状況では、計画のない場当たり的な行動になってしまったり、以前にとった行動と同じ行動を続けてしまったりします。

嚥下障害スクリーニングテスト

嚥下障害スクリーニングテスト


嚥下スクリーニングテストは以下と通りです。


反復唾液嚥下テスト RSST


反復唾液嚥下テスト:RSSTは被検者の喉頭隆起および舌骨に第2指と第3指の指腹を軽くあて、随意的に空嚥下運動を繰り返させるもので、3回/30秒未満を異常とします。

改定水飲みテスト MWST


改訂水飲みテスト:MWSTは冷水3mLを口腔前庭に注いで嚥下を命じ、可能なら追加して2回嚥下をさせます。
最大3回実施し、最も悪い嚥下活動を評価し、3点(嚥下あり、呼吸良好、むせるand/or湿性榎声)以下を異常とします。

いずれもベッドサイドにおいて短時間で行え、比較的安全性が高いです。

また、摂食の可否を判定するために、唾液や液体の嚥下評価のみでは不十分であるため、2001年には段階的フ一ドテスト(food test:FT)が考案され、少量の、難易度の異なる食材を直接嚥下させ、その時点における至適食材を判定する方法もよく用いられています。

最大3回実施し、最も悪い嚥下活動を評価し、3点(嚥下あり、呼吸変化はないが、むせあるいは湿性嗅声や口腔内残留を伴う)以下を異常とすることはMWSTと同様です。

MWSTとFTの判定のための観察項目は、嚥下の有無、呼吸変化の有無、むせの有無、湿性榎声の有無、追加嚥下の可否となっています。

注意点としては、FTでは約2割、MWSTでは4割以上で不顕性誤嚥を見落とす可能性があるため、これらの検査で異常がなかったからといって、摂食・嚥下に問題がないとは言い切れないことに注意が必要となります。