標準失語症検査(SLTA)とは
標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。
一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。
開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。
基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。
標準失語症検査(SLTA)の概要
目的
失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。構成
「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。所要時間
所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。
特徴
- 6段階評価:大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。
- 普及度の高さ:日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。
- 刺激の統一:SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。
- 「話す」側面の充実:動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。
記録用紙
図中の実線は非失語症者150人の平均を、破線は一1標準偏差を示しています。
プロフィールは失語症状を視覚的に表現できるので理解しやすいです。ただし、本検査は失語症のタイプ分類を目的とはしていないので、プロフィールから失語症のタイプを読みとるには熟練を要します。
また、各下位検査の賜度は必ずしも等価ではありませんので、被検者間での成績比較は可能ですが、被検者内で項目間での成績比較には注意が必要となります。
下記サイトから「標準失語症検査(SLTA)」のプロフィール部分を電子的に表記するためのソフトウエアを無料でダウンロードすることができます。
信頼性・妥当性
再検査信頼性は失語症者45名に対し10日間隔で2回検査を行い、2段階評価にて検討しています。相関係数は一部を除き0.70~0.96でした。
内部一貫性は検査を1回だけ施行した200人のデータを用いてCronbachのα一係数を計算していて、α係数は0.79~0.97でした。