口腔ケアの定義と目的

口腔ケアの定義と目的


口腔ケアの定義

口腔ケアという用語には、広義の意味と狭義の意味とがあります。広義には、口腔のもっているあらゆる働き(咀嚼、嚥下、発音、呼吸など)を介護することを意味します。狭義では、口腔衛生の維持・向上を主眼に置く一連の口腔清掃を中心とした口腔ケアを指します。介護予防における口腔ケアにおいては、リハビリテーションの観点からも、口腔の機能を増進、賦活化することを目的とした、口腔機能の向上に重点が置かれることになります。

口腔ケアの目的

口腔ケアの目的は以下の通りです。

  1. う蝕や歯周病を予防する
  2. 認知機能の低下予防を図る
  3. 口臭を取り除き、不快感をなくす
  4. 誤嚥性肺炎を予防する
  5. 全身的な感染症を予防する
  6. 気分を爽快にし、食欲を増進する
  7. 口唇、舌、頬、咽頭の刺激やマッサージによって、摂食・嚥下訓練の一助となる
  8. 発音、構音に関与する口唇、舌、軟口蓋のリハビリテーションとなる
  9. 唾液の分泌を促進して自浄作用を促し、口腔の乾燥を防ぐ
  10. 味覚を保つ
  11. 健康的な口元は、対人関係をスムーズにする
  12. 日常生活にメリハリをつける
  13. 敏感な口腔を刺激し、全身の緊張をほぐす
  14. 歯磨きによる上肢、手指のリハビリテーションを促す

このように数多くの目的があり、口腔ケアが重要な事に気付かされます。
皆さん、口腔ケアの正しい知識を学び、患者様、利用者様に貢献しましょう!

ボルカース(Borchers)法

ボルカース(Borchers)法とは

ボルカース(Borchers)法は、顎関節の前方脱臼に対して行われる整復手技です。

方法

術者が患者の後頭部側に立ち、下顎を母指以外の4本の指で抱えるように固定します。
その状態で、口腔内に両母指を入れ、下顎臼歯部を押さえっっ下顎を上前方に回転させながら手前に引きます。

※この記事は医療従事者向けの記事です。本ウェブサイトに掲載する情報には注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。本ウェブサイトの使用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

外れたアゴを徒手的に治すヒポクラテス(HipPocrates)法

外れたアゴを徒手的に治すヒポクラテス(Hippocrates)法


はじめに

この記事は医療者向けです。
なお、万が一この手技を行った際に負ってしまった損傷は当サイトでは責任は持ちません。
この主義はアゴの前方脱臼(※1)に有効と思われます。

ヒポクラテス(Hippocrates)法とは

ヒポクラテス(Hippocrates)法とは術者が患者の前に立って、母指を口腔内に入れて行う整復法で、従来から教科書に掲載されている方法です。

手技

  1. まず患者を椅子などに腰かけさせたうえで頭部を固定します。
  2. 頭まで背もたれのある椅子を用いたり、または丸椅子を壁際に置き、壁に後頭部を押し当てる姿勢で座ってもらいます。(※2)
  3. 術者は両方の母指にガーゼを巻いて患者の口の中に入れ、下顎臼歯咬合面に母指の腹側を置きます。
  4. 両手の他の4本の指は口腔外から下顎を支えます。
  5. この状態で、まず臼歯を下方へ押し下げます。
  6. ついで後方(患者の背側)へ持っていきます。
  7. 下顎頭が下顎窩に引き込まれるのを感じたら前歯部を上方に回転させ、下顎全体を手前に引きます。
  8. 整復されれぽ軽いクリック感とともに、患者は口を閉じることができるようになります。

(※1)前方脱臼
最もよく遭遇するタイプです。よくある発症パターンは、「あくびをしたり、口を大きく開けてものを食べようとしたり、大笑いをした、抜歯を受けた」などです。
大きく口を開けた際に下顎頭が関節結節を越えて前方に転位し、さらに外側靱帯、咬筋、外 側翼突筋といった閉口筋が収縮することにより、その牽引力で脱臼した位置で下顎頭が固定されてしまい、元の位置に戻れなくなっている状態です。
(※2)1.2.は、いずれも頭が後ろに逃げていくのを避けるためです。義歯がある場合には入れてもらうと良いです。
(その他)ヒポクラテス(Hippocrates)法患者を座らせずに、臥位にする方法もあります。臥位にすることで患者はよりリラックスできます。デメリットは術者が力を入れにくいことです。

連続座位時間

連続座位時間

NPAUP(米国褥瘡諮問委員会)のガイドラインでは、自力で減圧動作が可能な場合は 、15 分おきに動かすことを推奨しています。
また、自力でできない場合は連続座位を 1 時間以内とすることを推奨しています。
小さな体幹の前傾や 10 〜 15 秒の身体持ち上げでは圧迫部の皮膚血流量の改善の「エビデンスはない」といわれています。
プッシュアップではこの時間を維持することが難しいため、前傾位などを中心に指導するようにします。

骨盤後傾位での座位(仙骨座り)では、尾骨部に非常に高い圧力がかかっていますが、手を前に載せたり、前傾位をとることでその圧力を坐骨部に移動させることが可能です。前傾位をとってもらう場合は、股関節の可動域制限などを確認する必要があります。

他に、ティルト・リクライニング型の車椅子を使用した減圧方法がありますが、患者様(利用者様)がしっかりとバックサポートに寄りかかっていないと適切に圧が分散されずに、かえって尾骨部に圧がかかってしまうことがあり注意が必要です。
身体を後方に傾けた際に身体を前に起こす反応が出現する場合は注意する必要があります。

車いす乗車時に姿勢を見るポイントと車いす(いす)上で殿部への圧力を低下させる方法

車いす乗車時に姿勢を見るポイント

1 後方から見て、バックサポートがどの高さにきているかを見る。
2 真上から見て、膝の位置の左右差を比べる。
3 真正面から見て、左右の肩の高さを比べる。
4 真横から見て、脊柱に対する頭の位置と顎の上がり具合を見る。

車いす(いす)上で殿部への圧力を低下させる方法

1 褥瘡予防用クッションを使用する。
2 身体寸法にあった車椅子(椅子)を使用する。
3 背角・座角をつけて座る。
4 前方のテーブルに手を置く、または寄りかかる。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは


標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。
一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。
開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。
基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。

標準失語症検査(SLTA)の概要


目的

失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。

構成

「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。

所要時間

所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。
一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。

特徴

  • 6段階評価:大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。
  • 普及度の高さ:日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。
  • 刺激の統一:SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。
  • 「話す」側面の充実:動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。

記録用紙


下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ線グラフによるプロフィールで示す形式になっています。
図中の実線は非失語症者150人の平均を、破線は一1標準偏差を示しています。
プロフィールは失語症状を視覚的に表現できるので理解しやすいです。ただし、本検査は失語症のタイプ分類を目的とはしていないので、プロフィールから失語症のタイプを読みとるには熟練を要します。
また、各下位検査の賜度は必ずしも等価ではありませんので、被検者間での成績比較は可能ですが、被検者内で項目間での成績比較には注意が必要となります。
下記サイトから「標準失語症検査(SLTA)」のプロフィール部分を電子的に表記するためのソフトウエアを無料でダウンロードすることができます。

信頼性・妥当性


信頼性の確認には再検査法と内部一貫法が用いられています。
再検査信頼性は失語症者45名に対し10日間隔で2回検査を行い、2段階評価にて検討しています。相関係数は一部を除き0.70~0.96でした。
内部一貫性は検査を1回だけ施行した200人のデータを用いてCronbachのα一係数を計算していて、α係数は0.79~0.97でした。

カプグラ症候群

カプグラ症候群とは


カプグラ症候群とは、よく知っている人がそっくり別人にすり替わっているという変身の体験のことを言います。

患者さん自身は、外見上、本物とそっくりであるということは認めており(微妙な違いが指摘されることがあるにせよ)、しかし中身は偽物である替え玉だと信じています。

対象としてはよく知っている身近な人である場合が多いですが、自分以外の人物に対する誤認に加えて自分自身に対する誤認を示す場合もあります。

また、人物以外に動物や無生物が対象となる場合があります。

これは、1923年Capgrasらは、人物のすり替えと誤認を主題とした論文を発表しており、今日でいえば、妄想型の統合失調症の経過中に人物誤認を呈した症例です。

ただし、脳器質疾患においてもカプグラ症候群は出現し、疾患は多岐にわたり、レビー小体型認知症、アルツハイマー型認知症、頭部外傷、てんかん、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎、AIDS、偽副甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症などで報告されています。

ただ、統合失調症に出現するカプグラ症候群と脳器質疾患に出現するカプグラ症候群では随伴する症状や背景に推測されるメカニズムが異なると言われています。

レビー小体型認知症 幻視 妄想

レビー小体型認知症の幻視・妄想


レビー小体型認知症の幻視(幻覚)

レビー小体型認知症の幻視(実在しないものがみえる)は中核症状のひとつです。

人物、小動物、虫、火、水、物体などが幻視の対象となります。

また、錯視(目の錯覚 例:机の埃が虫に見えてしまう)や、変形視(物の大きさが変わったり歪んだりする)がみられることがあります。

これらの幻覚症状は、意識清明時に反復して現れ、追想可能で具体的な内容が語られることが多いといわれています。

また、レビー小体型認知症の幻覚には幻聴や体感幻覚が目立つ場合があります。

レビー小体型認知症の妄想

レビー小体型認知症の妄想に関しては、誤認妄想(自分の息子を夫と、また娘を姉と誤認するような人物の誤認症状)はレビー小体型認知症に特異度が高いといわれています。
嫉妬妄想(配偶者ないし婚姻関係がない異性の同居人の不貞を疑う等)も、アルツハイマー型認知症よりもレビー小体型認知症に多いと報告されている。
ただし頻度的には被害妄想(盗まれた、殺される等)が最も多いことが報告されています。