rTMSと失語症治療
失語症の治療として、rTMSを適用する場合、高頻度rTMSを用いて機能代償部位を直接刺激することで活性化させる方法と、低頻度刺激を用いて大脳半球間抑制を介して、間接的に機能代償部位を活性化させる方法が考えられます。
失語症患者の治療としてrTMSを適用したのはNaeserらです。
Naeserらは非流暢性失語の慢性期脳卒中患者4名に対して、右半球の
Broca野相同部位の三角部に低頻度刺激のrTMSを施行して、呼称などの言語機能に改善を認めたと報告しています。
上記の治療目的は、右半球の神経活動を低頻度刺激により減弱させることで、大脳半球間抑制から解放された左大脳半球が賦活することで言語機能が改善することを目的としています。
非流暢性失語に対する右半球への低頻度刺激については、ランダム化比較試験が報告されています。
Barwoodらは非流暢性失語を呈した慢
性期脳卒中患者12例を、右三角部(BA45野)へ1日1Hz、1,200発を10セッション行う低頻度実刺激群6例とsham刺激群6例に分けて検討
しています。
刺激から2カ月後の時点でsham群と
比較して実刺激群に呼称を含めた言語機能の改善を認めたと報告しています。
Weiduschatらは失語症を呈した発症から16週以内の亜急性期脳卒中患者10例を、右下前頭回へ1日1Hz、1,200発を10セッション行う低頻度実刺激群6例とsham刺激群4例に分けて検討をして、sham群と比較して実刺激群に言語機能の改善を認めたとの報告があります。
これらも、右大脳半球への低頻度刺激は、言語機能が最終的には左大脳半球の賦活によって改善すると考えられているためである。
しかしながら、右大脳半球の賦活によって機能代償がなされている症例も認められており、一概にrTMSの刺激部位を決定できません。