パーキンソン病の摂食嚥下障害の病態
パーキンソン病は、嚥下運動のプロセスである随意運動、反射運動、自律運動(先行期から食道期)のすべてが障害されます。
摂食嚥下障害はパーキンソン病患者の半数以上に見られます。
病初期から存在することがあり、Hoehn-Yahr重症度など身体的運動障害とは必ずしも関連しないと言われています。
パーキンソン病患者は摂食嚥下障害の自覚に乏しく、不顕性誤嚥が多く、抗パーキンソン病薬の副作用としてジスキネジア、口腔乾燥、off症状が摂食嚥下機能に影響してきます。
各期における主な病態
先行期:うつ症状・認知障害による摂食障害、上肢の振戦・強剛、斜め徴候
口腔期:舌運動や咀噌運動の障害、顎の強剛、流挺、口渇
咽頭期:嚥下反射の遅延、誤嚥、咽頭蠕動の減弱、喉頭挙上の減弱、喉頭蓋谷や梨状窩への食物貯留
食道期:上部食道括約筋の機能不全、食道蠕動の減弱、胃食道逆流症
その他:頸下がり・頸部筋の強剛による口腔・咽頭の移送障害
嚥下造影(video fluorography:VF)所見の特徴
口腔期:口腔内残留、すすりのみ、ポンプ様舌運動、嚥下前の咽頭流入、嚥下のためらい、舌の振戦・ジスキネジア
咽頭期:咽頭蠕動障害、喉頭挙上不良、喉頭侵入、誤嚥、喉頭蓋谷残留、梨状窩残留、咽頭運動の異常運動、喉頭蓋の運動障害
食道期:蠕動運動消失、咽頭への逆流
自律神経障害による食事性低血圧があり、失神時に食物を窒息するリスクがあるため注意が必要です。