口唇周囲の筋(主に口輪筋)の緊張や運動能を向上させることにより、口唇閉鎖機能を獲得、再獲得することを目的として行います。
対象者は、口唇閉鎖機能が低下している患者(発達障害患者や脳血管疾患、口腔癌術後患者、高齢者などで流涎、取りこぼ し、食べこぼしなどを認める患者)です。
具体的方法としては、指示に従えない患者に対して行う受動的訓練(他動運動)と指示に従える患者が行う自主訓練(自動運動)とに大別されます。
受動的訓練は手指で口唇周囲をつかんだり押し上げたり(下げたり)などして、口輪筋の走行に対し垂直・ 水平方向へ筋肉を他動的に伸展・収縮させます。
直接訓練としての受動的口唇閉鎖訓練には、食事介助時に手指を用い て口唇閉鎖を介助して捕食運動を促す方法があります。
自主訓練では、口唇運動能によって ① 自動介助運動、② 自動運動(口唇伸展、口唇突出、口角引き)、③ 抵抗(負 荷)運動を行います。
抵抗(負荷)運動は舌圧子・木べら・ストロー・定規などを口唇で挟んで保持する他に、ボタンプル(前歯と口唇の間に紐をつけたボタンを挿入し、紐を引っ張ってボタンが口腔外へ飛び出さないよう口唇に力を込 める訓練)など、様々な口唇閉鎖訓練器具(パタカラ、リフトアップなど)を用いた訓練法が考案されています。
注意点としては、麻痺を認める患者では非麻痺側の筋肉が活動し,麻痺側の筋肉は活動ません。そのため、訓練を 行うと非麻痺側の筋力がさらに強化されるだけで、麻痺側の筋力は改善されないことになります。
自主訓練を行う際は、健側の運動を抑制して患側の運動を集中的に行う方法(CIセラピー)が有効です。