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筋トーヌス 異常 亢進 低下

筋トーヌス 異常 亢進 低下

トーヌスとは
筋トーヌス(緊張):骨格筋が何も活動しない時にも、絶えず不随意的にわずかな緊張をしており、このような筋の維持的な弱い筋収縮を言います。この筋トーヌスは休止状態における緊張のほか、種々の運動や反射活動によって、その緊張状態が変化します。したがって、筋トーヌスを診るには多面的に行う必要があります。

筋トーヌスの異常
筋トーヌスの異常は筋緊張の亢進状態(hypertonicity)と筋緊張の低下状態(hypotonicity)に分けられます。

筋トーヌスの亢進
筋トーヌス亢進状態には痙直(spasticity)と硬直(強剛)(rigidity)があります。

Ⅰ.痙直
a.痙直とは
痙直は急激に関節の受動運動を行う時に起こる筋の抵抗です。すなわち、筋の緊張が高まった状態です。検者が患者の諸関節を手動的に勢いよく屈曲させると、初めは抵抗が大きく、あるところまで動かすと急に抵抗が減少する状態です(折り畳みナイフ現象)。受動運動は速く動かすほど抵抗が大きくなります。

b.障害
痙直は錘体路障害によって出現し、痙直状態は全ての筋にみられるのではなく、特有な分布を示します。すなわち、上肢では屈筋群、下肢では伸筋群に出現しやすいようです。

Ⅱ.硬直(強剛または固縮)
a.硬直とは
硬直はいかなる方向への関節の受動運動に対しても、初めから終わりまで同一の筋抵抗が感じられる状態を言います。たとえば、肘を屈曲させるとき初めから終わりまで同一の抵抗があり、また、伸展させるときにも同様な抵抗が感じられます。ちょうど鉛管を曲げる感じに似ているので、鉛管現象(lead pipe phenomenon)といいます。
パーキンソン病では抵抗が歯車を回転させるようにガクン、ガクンと感じるので歯車様硬直といいます。

b.障害
硬直は錐体外路障害によって出現し、動作が緩慢になり、無動性を示します。
腱反射は硬直のため出にくくなります。硬直は全身の筋に見られますが、一様に表れるのではありません。
一般に手首に早く表れる多く、次いで肘関節、肩関節などの四肢の筋位部に出現します。

筋トーヌスの低下
a.トーヌス低下とは
筋トーヌスの低下は関節の受動運動に対して、筋抵抗が減弱ないし消失した状態を言います。筋は弛緩して、筋腹を触診すると柔らかく、筋特有の抵抗が減弱した状態です。

b.障害
筋トーヌス低下は小脳疾患、片麻痺の初期や末梢神経障害などにみられます。

*参考 理学療法評価学(金原出版株式会社)

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