慢性持続性疼痛に関与する脊髄後角における神経生理学的な過程

慢性持続性疼痛に関与する脊髄後角における神経生理学的な過程

 最近の研究では慢性持続性疼痛の発生に後角細胞が関与すると考えられてきています。多モード(polymodal)広作動域ニューロン(wide dynamic range neuron:WDR)は細胞表面に需要体を多く有しており、それにはN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体とニューロキニン(NK)受容体が含まれますAδ繊維のような感覚神経線維から放出される興奮性アミノ酸は、NMDA受容体に作用します。一方サブスタンスPは求心性のC繊維から放出されるが、NMDANK受容体の両方に作用します。サブスタンスPNK受容体への作用はNMDA受容体のマグネシウム依存性遮断を減少させ、そのことがさらにWDR神経細胞へのカルシウム流入を引き起こすことになります。このことにより、NMDA受容体の脱分極が増加する結果になるので

 疼痛繊維がC繊維を経由して伝達されたサブスタンスPによりWDR神経細胞の抑制機構が消失し、そのため絶え間ない病的な持続的疼痛がもたらされるのです。WDR神経細胞の過分極というこの病的状態はサブスタンスPを放出するC繊維を麻薬または神経ブロックで遮断すれば予防可能です。急性疼痛、術後疼痛の積極的な管理と先行麻酔(手術直前の麻酔)によって中枢性感作と慢性持続性疼痛に陥る“wind up”のプロセスの予防ができることが現在では認められています。

*参考 リハビリテーションシークレット(メディカル・サイエンス・インターナショナル)