スキップしてメイン コンテンツに移動

頭痛の分類

頭痛の分類

 頭痛は発症形式によって、急性または亜急性、発作性反復性、慢性持続性の3群に分類できます。頭痛の病歴、発症様式、誘因、家族歴、副薬歴などに注意を要します。

(1)急性または亜急性頭痛
 くも膜下出血は、今で経験したことの無い激しい頭痛が突発的に出現し持続することが特徴です。他の血管障害としては、脳室穿破を伴う脳出血、小脳出血、上矢状静脈洞血栓症での頭痛頻度が高くなっています。
 髄膜炎は発熱、頭痛、項部硬直を3主徴とし、脳炎ではこれに加えて脳実質損傷による神経徴候を呈します。

(2)発作性反復性頭痛
 片頭痛は思春期(特に女性)に初発して、家族歴を有することが多くなります。前兆のある例では、閃輝暗点、視野欠損、眼痛などの眼症状が拍動性頭痛に先行します。拍動性頭痛は、片側性(まれに両側性または交代制)で数時間ないし3日間程度持続します。悪心、嘔吐や光・音過敏を伴うことが多く、暗室での臥床を好み、睡眠により頭痛が軽減することが多くみられます。失語、片麻痺、外眼筋麻痺など局在徴候が頭痛に前後して出現することがあります。誘因としては精神的ストレス、食事、喫煙、薬物、月経周期、天候などがあります。発作時には消炎鎮痛剤や酒石酸エルゴタミンの内服やスマトリプタン皮下注射が使用されます。発作間欠期にはカルシウム拮抗薬、抗セロトニン薬などの予防薬や生活管理が重要です。
 群発頭痛では、片側の眼窩を中心に激痛が15分から3時間程度持続します。若年男性に多く、1日1~数回、同時刻(特に夜間睡眠時に痛みで覚醒)に起こります。発作は2~6週間にわたって群発し、自然に寛解します。寛解期には数か月ないし2年以上にわたります。随伴症状として結膜充血、流涙、鼻汁、ホルネル症候群、徐脈などの自律神経症状が出現します。誘発因子として飲酒、薬物などがあります。発作時には100%酸素吸入と酒石酸エルゴタミンの内服またはスマトリプタン皮下注射が用いられます。予防薬は片頭痛と同様ですが、難治性の場合には炭酸リチウムが有効です。
 類似の発作性頭痛として慢性発作性片側痛や特発性穿刺様頭痛があり、いずれもインドメタシンが奏功します。
 良性労作性頭痛は肉体運動、排便、性交などにより拍動性頭痛が誘発されます。三叉神経痛や大後頭神経痛はそれぞれの支配神経領域の疼痛を生じます。

(3)慢性持続性頭痛
 緊張型頭痛は後頸部・後頭部の鈍痛、頭重感が主体で、午前よりも午後に頭痛が増強する傾向があります。精神安定剤、筋弛緩薬、鎮痛剤で対症的に治療します。
 脳腫瘍、脳膿瘍、慢性硬膜下血腫なども慢性頭痛の原因となります。
*参考 神経内科学テキスト (南江堂)

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺