肥満と運動療法の意義





肥満と運動療法の意義

 肥満とは、貯留脂肪が身体に過剰に蓄積した状態と定義されます。したがって肥満治療の原則は、エネルギー出納のバランスを長期的に、また継続的にマイナスに保つことにより、脂肪細胞を減少させることにあります。すなわち、肥満の運動療法とは運動を行わせることにより、脂肪組織を減少させることにあります。すなわち、肥満の運動療法とは運動を行わせることにより、脂肪組織の中性脂肪に分解を起こさせ、生じた遊離脂肪酸(FFA)を効率よく運動(収縮)筋で消費(利用)させることに尽きます。

 肥満の大部分は基礎疾患のはっきりしない単純性肥満ですが、稀に基礎疾患に由来する症候性肥満が存在します。この症候性肥満では、基礎疾患に応じた治療が必要となるため、常にその鑑別を念頭に置かなくてはなりません。一方、前者の単純性肥満では、インスリンの過剰分泌(高インスリン血症)、脂肪細胞の増殖、過食、誤った食事パターン、遺伝、運動不足、褐色脂肪細胞の機能障害(熱産生機能障害)などが、個々の症例に応じて種々の程度に複合的に働き、肥満の原因を構成しています。中でも、摂取パターンの異常を含めた過食と運動不足は、グルメ志向が一般化し、オートメ機器の普及による省力化が進行している今日、肥満の成因として最も重要な役割を果たしており、単純性肥満では、食事療法と運動療法が根本治療となっている。

 また単純性肥満には、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、脂肪肝、胆石、痛風、関節性疾患、卵巣機能障害など多種多様な疾病異常を合併しやすくなっています。

 最近、体型と合併症の関連が注目を集めています。すなわち、体への脂肪沈着部位により、上半身(男性型、リンゴ型)肥満と下半身(女性型、西洋梨型)肥満に分類すれば、前者に糖尿病をはじめとする上記の合併症の発病率が高いといわれています。また上半身肥満を内臓脂肪型と皮下脂肪型肥満とに分類し、前者には糖質代謝異常の合併率が高い事実があるようです。さらに腹部内臓脂肪と個体のインスリン感受性が負の相関関係にあることが分かっています。

*参考 理学療法ジャーナル(泰山堂書店)