スキップしてメイン コンテンツに移動

捻挫・打撲のテーピング

捻挫・打撲のテーピング

テーピングとは、のりのついているテープによる固定法のことで、古くから絆創膏固定法として足関節捻挫に用いられているGibney法が固定による安静が目的であるのに対し、テーピング法では、有害な動きを制限しますが、運動に必要な動きを残そうとする点が違います。

テーピングの目的は、①外傷の予防、②外傷の応急処置、③捻挫の再発予防、④リハビリテーション治療の補助などになります。

テーピング法の基本
①汚れを洗い流し、体毛を剃る。
②テープで擦れる部にはワセリン付綿花をあてる。
③のりスプレーをして、薄いスポンジ状包帯でアンダーラップを巻き、皮膚炎を予防する。④固定肢位をとらせる。
⑤テーピングを行う部位の両端にアンカーテープを貼り、この間に関節を固定・支持するサポートテープを貼り、これを固定するために最後にロックテープを張る。

テーピングを実施するうえでの注意すべき点
①循環障害や神経障害を起こさないよう、解剖学的知識が必要。
②受賞直後で腫脹が予想される場合には、テープを一周させないで、前開きのオープン法を用いるか、一部を切開するなど腫れの逃げる隙間を残す。
③運動中に圧迫による循環障害を起こさない為、テーピング実施中は筋肉の緊張状態を維持させる。
以上のようなことが挙げられます。

テーピングの運動時の有効性については、10分後では効果があり、または有効率40%に対し、1時間後にはほとんど効果なしという研究結果になっています。
軽い捻挫ならテーピングをすれば大丈夫といった過信は禁物です。
しかし、テーピングによってギプス固定期間を短縮して早期から運動療法などのリハビリテーションにより機能回復を早められます。
外傷、特に捻挫予防としてのテーピングは、足関節の内反捻挫を予防するための健全な足関節に行うものです。強固なテーピングは、他の足関節の負担を増すことになるので、最小限度の軽いテーピングが重要です。

捻挫の応急処置の原則は、RICE(Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation拳上、Support,Stsbilization支持、固定)であり、テーピングの役割は圧迫と支持、固定に過ぎないので、捻挫に対する応急処置では、テーピングを行った後、冷水につけるなどの配慮が必要です。

捻挫の重症度分類(Ⅰ度:靱帯伸展、圧痛のみで腫れが無い、Ⅱ度:靱帯部分断裂、圧痛と腫れはあるが関節の不安定性はない、Ⅲ度:靱帯の完全断裂、関節の不安定がある)のうち、テーピングによって運動続行可能なのはⅠ度までで、Ⅱ度以上では専門医での治療が必要です。

捻挫の再発予防については、テーピングの効果が最も期待されるところであります。スポーツ傷害に対して早期回復の為に安全な範囲でテーピングを応用した運動療法を積極的に行わせることをアスレチック・リハビリテーションと呼び、損傷の程度に応じたテーピングが工夫されています。

打撲のテーピングは、肉離れや筋腱皮下断裂に対して、運動時の衝撃緩和を目的に用いられていますが、手間のかかるわりには効果があまりありません。キネシオテープで代表される弾力テープは、伸長率がよく通気性に富み、かぶれも少なく、皮膚に直接貼れます。静脈還流を促進するので皮下出血の吸収性に優れ、打撲後の腫脹や筋腱損傷に対して有効です。

*参考 リハビリテーションマニュアル(日本医師会)

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺