表在性痛覚
人間の感覚には様々なものがあります。その中でも邪魔にもなり、また非常に有益な情報となる、表在性痛覚について説明します。
①皮膚の痛み
針で皮膚を突き刺すと、瞬間的に鋭い痛みを感じます。
これは局在制が明確な痛みで、刺激がやむと急速に消失する特徴があります。
刺激が強い場合、この速い痛みの後に、潜時が0.5~1秒の遅い痛みが続くことがあります。
これは鈍い焼けつくような痛みで空間的な広がりを持ち、ゆっくりと消失する特徴があります。
このように、皮膚の痛みには質の異なった2種類の痛みがあります。
皮膚の痛覚を起こす侵害受容器には、機械的侵害刺激のみに反応する高閾値機械受容器と、機械的、温度、化学的刺激など異なる多種類の侵害刺激に応じるポリモーダル侵害受容器があります。
皮膚の高閾値機械受容器の情報は主として細い有髄のAδ繊維によって伝達されて刺すような速い痛みを、ポリモーダル侵害受容器の情報は、主として非常に細い無髄のC繊維によって伝達され、うずくような遅い痛みを伝えると考えられています。
侵害受容器(痛みの刺激を感知する部位)は、自由神経終末です。
②発痛物質
日焼けや熱、極度の低温、X線、剥離によって皮膚が侵害を受けると、痛覚過敏が起こります。
これは、損傷された組織の細胞から局所的にプロスタグランジン、セロトニン、ヒスタミン、Kイオン、Hイオンなどの化学物質が放出されることによって起こると考えられています。
これらの物質は、侵害受容器に対して興奮性の作用や感受性を高める作用を持つので、発痛物質と呼ばれます。
これらの物質は、炎症、関節痛、骨腫瘍、慢性虚血時の痛みの原因になっていると考えられています。
③中枢内伝導路
侵害性の感覚情報は、一次求心性神経によって後根から脊髄後角に入り、そこで後角のニューロンにシナプス連絡する。
一次求心性ニューロンを通って脊髄後角内に入力された侵害刺激情報は、後角内でシナプスを介して二次ニューロンに伝わり、主として脊髄腹外側部を通ってさらに高位中枢に伝えられます。
痛覚の上行路には一般的には脳幹の外側部を通る系統発生学的に新しい経路、すなわち外側系と、脳幹の内側部を通る系統発生学的に古い経路、すなわち内側系の2つの主要経路が認められています。
外側系は主として痛みの感覚、識別に関与し、内側系は痛みによる様々な反応系、すなわち情動行動、自律機能、痛みの制御などに関与すると考えられています。
④かゆみも痛みの一つ
かゆい感じは、皮膚の炎症、外傷、化学的刺激で痛覚受容器が弱く刺激されたときに起きます。
炎症などの際に局所に生じたヒスタミンが原因の一つと考えられ、抗ヒスタミン剤がかゆみを和らげる効果を持つことが多いです。
痛みにはほかに慢性的な痛み(慢性痛)もありますが、慢性痛のメカニズムは十分に解明されていません。
痛みのメカニズムの解明は、痛みリハビリを行う上でも非常に有益な情報となるので、解明が待たれるところです。
*参考 生理学(医歯薬出版)