浮腫の病態と種類
浮腫の病態
浮腫とは組織間液が異常に増加・貯留した状態を言います。
すなわち何かの病的な原因で、血漿成分が血管外に漏出あるいは滲出結果です。
通常組織間液が2~3ℓ以上に増加すると、臨床的に浮腫と認めまれます。
部位として眼周囲、手指、下腿、足背などに見られます。
浮腫が生じるためには毛細管から組織間隙への血漿成分の移行が、組織間隙から毛細管への吸収とリンパ系からの流出より多くなる必要があります。
毛細管の透過性は炎症などで亢進し、浮腫を起こします。
これは炎症物質であるブラディキニン、プロスタグランジンの作用によります。
毛細管内の静水圧の上昇も浮腫の原因となります。心不全や静脈閉塞などによる浮腫の機序はこれです。
浮腫の種類
1) 全身性浮腫
①腎性浮腫
原因として急性糸球体腎炎、急性腎不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群などがあり、上記の検査としてASO(抗ストプトリジンO)、腎機能検査(クレアチニンクリアランスなど)、免疫学的検査(免疫グロブリンなど)を施行します。必要があれば腎生検を行います。
②心性浮腫
原因として心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症、心膜炎などがあります。心音、肺音の長身が重要です。胸部X線写真、心電図、心エコー検査で診断を確定します。
③肝性浮腫
原因として肝硬変であることが考えられます。肝機能検査(GOT、GPT)、肝炎ウイルス検査、α-フェト蛋白などの腫瘍マーカー、腹部エコー検査などを行います。腹水を伴うことが多いです。
④内分泌性浮腫
甲状腺機能低下症による浮腫はnon-pitting edemaです。甲状腺機能検査により確定します。甲状腺機能亢進症でも浮腫をきたします。
⑤栄養障害性浮腫
食事性ではビタミンB1欠乏症による脚気が多いです。アルコールの飲みすぎや炭水化物に偏った食生活が原因となります。悪性腫瘍や吸収不良症候群でもこの種の浮腫が見られることがあります。
⑥薬剤性浮腫
薬剤服用歴を聞きます。インドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症薬は整形外科領域で良く使われる薬剤であるので注意する必要があります。ニフェジピンなどのCa拮抗薬は、高血圧、冠動脈疾患によく使われる薬剤です。仁丹や漢方薬には甘草が多く含まれ、浮腫をきたすことがあります。
⑦特発性浮腫
比較的若い女性に多い原因不明の浮腫で、いろいろな所見で明らかな異常を見出せません。
2)局所性浮腫
①静脈性浮腫
静脈閉塞によるもので、静脈炎の有無、静脈瘤の有無などを観察します。特に下腿静脈瘤は立位で観察します。凝固性因子検査も行います。閉塞部位の確定には静脈造影を行います。
②リンパ性浮腫
リンパ管炎、リンパ管閉塞、リンパ節廓清などによります。リンパ管造影で確定診断をします。
③炎症性浮腫
皮下組織の感染症に随伴します。炎症の四兆候(浮腫・疼痛・発赤・熱感)を示します。
④血管神経性浮腫
顔面、頭部など皮膚の一部に限局し、発作的に浮腫、腫脹、発赤、圧痛などを生じる物をQuincke浮腫といいます。遺伝性血管運動性浮腫はC1 inhibitorの欠損が原因で、腹痛、嘔吐などの腹部症状と声門浮腫による呼吸困難がおこります。
終わりに
浮腫はリハビリテーションを行う上で患者の身体状況を測る重要なスケールになります。検査所見および理学所見を吟味し、今患者の体の中で何が起こっているのか見極める指標の一つになるのです。