ADLについて

ADLについて

1.概要
 日常生活活動は通常ADL(Activities of Daily Living)と呼ばれ、昨今リハビリテーション業界内のみならず、一般にも聞く機会が増えたように感じます。
 ADLは麻痺、拘縮などの「機能障害」と、家庭や社会における役割変化などの「社会的不利」との間に位置し、「能力低下」の中に分類されます。
機能障害への加療(麻痺の回復など)が困難な場合でもADLは改善可能であり、リハビリテーションでは重要な評価事項です。
 ADLが低いという事は額の視点から見ると介護の負担が大きいことを意味しています。

2.評価法
 評価法には疾患を限定しないで用いられるADL評価表が多いですが、疾患に合わせたものもあります。
汎用ADL評価表としては、従来Barthal indexなどが用いられてきましたが、ADLの変化を十分に捉えきれず、現在はFIMやSIASなど、より患者の変化が明確に捉えられる方法へと変化してきました。
ADLとして測られる範囲は、通常セルフケア、排せつ、移乗、移動などが挙げられます。
時にコミュニケーション、社会的認知なども含みます。
さらに複雑な課題として家事、投薬管理、交通機関の利用などを含めることもありますが、これらは日常生活関連活動、すなわち手段的ADL(Instumental ADL:IADL)と称されていて、ADLそのものとはやや異なった扱いを受けることが多くなります。
ADLと一口で言っても、「できる」ADLと「している」ADLがあります。
最高の努力をして「できる」ADLと、日常実際に「している」ADLには差があります。
これにはその動作が本当に身についているか、安全性の問題、本人の依存心、環境の違い(椅子の高さなど)が影響しています。
両者ともに有用ですが、いずれのADLを捉えているのか常に念頭に置く必要があります。
日本の現状としては、各病院独自のADL評価表を使っていることが多いですが、他施設との対話を考えると、統一された評価表を用いることが望ましいと思います。

3.ADL訓練
 ADL訓練は病棟においても訓練室においても行われます。従来は作業療法士が技術面で指導を行うことが多かったのですが、現在では看護師及び他のリハビリテーション専門職が都度指導を行うことが求められています。
 ADLを改善するには、スタッフや家族は日常のADL介助を行いすぎることの無いよう、患者が行うまで待つことが必要です。ただしこの努力は介護時間をむしろ増すことも知っておく必要があります。
以下はADL訓練の概要です。
①ADL低下の原因となっている機能障害を改善する。
②使用できる身体を使い、日常動作が出来るよう検討する。
③用具の扱いを習熟させる。片麻痺患者の移乗における車椅子の置く位置の指導や、慢性関節リウマチ患者の関節保護を考慮したセルフケア指導法などが必要である。
④環境設定を行う。立ち上がりやすい椅子を用いたり、マジックテープ止めの衣服を使用したり、太柄スプーンなど持ちやすい自助具を用いたりする。

4.まとめ
 ADLは患者が生活していく上で、非常に重要な項目になり、ADLの改善は患者心理上も非常に大切です。しかし急性期治療や機能障害の改善の陰でないがしろにされている場合があります。
ADLを適切・定期的に評価を行いADLの能力を高めることは、患者のQOL向上につながるのではないでしょうか。

*参考 リハビリテーションマニュアル(日本医師会)