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歩行の神経メ力ニズム

歩行の神経メ力ニズム


歩行時の動的平衡の維持には、四肢・体幹の協調や外乱への対処など、より複雑な処理が必要となります。

しかし、そのすべてが大脳などの高次脳機能に依存しているわけではなく、歩行に必要な基本的な運動出力は脳幹や脊髄などの下位の階層で生成されています。

例として、ネコの脊髄を上位中枢から切り離しても、歩行に似た周期的な筋活動が後肢に発現することが知られています。
また、ネコにおいては中脳や小脳、視床下部に歩行誘発野が同定されていて、電気刺激やトレッドミル駆動にて歩行が誘発されます。

これは脊髄に中枢パターン生成器(central pattern generator:CPG)が存在し、上位中枢からの神経指令がなくても周期的な運動パターンを生成できるためと考えられています。

CPGの構成については諸説ありますが、屈筋群と伸筋群を支配するニューロン群が介在ニューロン群で接続されたhalf center仮説が知られています。

介在ニューロン群は相互に抑制性結合を持ち、左右のCPG間でも連携があると考えられており、網様体脊髄路などの上位中枢からの入力は、歩行リズムを調節する役割があるものと考えられています。

ヒトではCPGの存在は直接証明されていませんが、脊髄損傷患者に脊髄電気刺激を行った際に屈筋・伸筋の交代性筋活動が観察されたことなどから存在が強く示唆されています。

上位中枢の関与としては、中脳・橋境界部の脚部での出血後に立ち上がったり足踏みできなくなった症例が報告されていることから、ヒトでもこれらの部位に歩行を調節する上位中枢があるものと推測されています。

大脳皮質などの高次中枢は、視覚情報を介して障害物の回避など意識的に運動を調節する場合などに関与するものと考えられています。

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