スキップしてメイン コンテンツに移動

顔面神経麻痺後の病的共同運動の機序と注意点

顔面神経麻痺後の病的共同運動の機序と注意点

神経損傷程度の分類法のうちSeddonの分類では、神経障害は①神経無動作(neurapraxia)、②軸索断裂(axonotmesis)、③神経断裂(neurotmesis)に分けられます。

神経断裂の場合、神経再生の際に本来再生すべきでない部位に軸索が迷入する神経過誤支配を生じることがあります。

過誤支配した神経によって病的共同運動を発症します。

麻痺後3~4カ月頃より病的共同運動の症状が出現すると言われています。

神経無動作、軸索断裂の場合は理論的には過誤支配は生じないため、病的共同運動は発症しません。
しかし、実際の顔面神経麻痺症例では、これら3種類の神経障害がさまざまな割合で混在すると考えられるため、そのうち神経断裂の割合により病的共同運動の程度も変わってきます。

病的共同運動は神経断裂の割合だけでなく、不適切な治療でも増悪する可能性があるため注意が必要です。

麻痺急性期に、リハビリと称した顔面の粗大な運動の反復や、低周波神経筋電気刺激などを行うと、軸索の迷入および神経の過誤支配が促進され、病的共同運動の増悪につながってしまいます。

「顔面神経麻痺診療の手引」では、麻痺急性期における顔面表情運動の練習は避けるべきとされ、低周波神経筋電気刺激治療は有害とされています。

コメント

アーカイブ

もっと見る

このブログの人気の投稿

眼球運動障害 瞳孔不同 対光反射消失

眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

標準失語症検査(SLTA)

標準失語症検査(SLTA)とは 標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia :SLTA)は、日本で最もよく用いられている総合的な失語症検査です。 一般的には「SLTA」と呼ばれることが多いです。 開発者は、失語症研究会(現在は日本高次脳機能障害学会)です。 基礎的な研究は1965年に開始され、最終試案は失語症者200人・非失語症者150人のデータをもとに標準化されて、1975年に完成版が出版されました。 標準失語症検査(SLTA)の概要 目的 失語症状の詳細な把握と、失語症に対するリハビリテーション計画立案の指針を得ることを目的としています。 構成 「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算」の5側面、計26項目の下位検査で構成されています。 所要時間 所要時間は失語症のタイプや重症度によりますが、60~120分程度です。場合によっては120分以上かかることもあります。 一定数の誤答が連続した場合や一定の得点に達していない場合には中止基準を設けて、被検者の心理的負担に配慮しています。 特徴 6段階評価 :大部分の検査項目において反応時間やヒント後の反応に基づく6段階評価が採用されており、症状を詳細に把握することができます。わずかな変化を知ることができ、この情報をリハビリテーションに生かすことができます。正誤2段階の評価に換算して大まかな成績を表示することもできます。 普及度の高さ :日本で最も一般的な失語症検査であり、多くの臨床家が本検査に精通しています。転院時にも他施設との情報共有がしやすく、本検査の反復使用によって経時的変化がわかります。 刺激の統一 :SLTAでは、できる限り同一の単語や文を刺激に用いています。被検者内でモダリティ間(「命令に従う」課題を口頭で聴覚呈示する場合と文字で視覚呈示する場合等)、漢字・仮名間(同じ「読解」課題で単語を漢字表記する場合と仮名表記の場合等)の成績比較をすることができます。 「話す」側面の充実 :動詞の表出をみる「動作説明」や4コマまんがを用いた「まんがの説明」等独創的な検査項目があります。 記録用紙 下段は項目ごとの6段階評価の結果の記入欄、上段は正答率(完全正答の段階6および不完全正答の段階5)を折れ...

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準

兵頭スコア 嚥下内視鏡所見のスコア評価基準 スコア合計:    点 ① 喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留  0:唾液貯留がない  1:軽度唾液貯留あり  2:中等度の唾液貯留があるが、喉頭腔への流入はない  3:唾液貯留が高度で、吸気時に喉頭腔へ流入する ② 声門閉鎖反射や咳反射の惹起性  0:喉頭蓋や披裂部に少し触れるだけで容易に反射が惹起される  1:反射は惹起されるが弱い  2:反射が惹起されないことがある  3:反射の惹起が極めて不良 ③ 嚥下反射の惹起性  0:着色水の咽頭流入がわずかに観察できるのみ  1:着色水が喉頭蓋谷に達するのが観察できる  2:着色水が梨状陥凹に達するのが観察できる  3:着色水が梨状陥凹に達してもしばらくは嚥下反射がおきない ④ 着色水嚥下による咽頭クリアランス  0:嚥下後に着色水残留なし  1:着色水残留が軽度あるが、2~3回の空嚥下でwash outされる  2:着色水残留があり、複数回嚥下を行ってもwash outされない  3:着色水残留が高度で、喉頭腔に流入する 誤嚥:なし・軽度・高度 随伴所見:鼻咽腔閉鎖不全・早期咽頭流入・声帯麻痺