脳卒中に対する下肢装具の目的
脳卒中では、発症から経過、時期によって病態が大きく変化します。
発症初期の弛緩期から筋緊張が亢進し痙性麻痺に変化していく例が多いです。
また、慢性期には拘縮や変形などの二次的合併症を伴う例もあり、装具の目的も発症からの時期により異なってきます。
急性期で弛緩性麻痺のために、起立や歩行が困難な症例に対しては下肢に支持性、安定性を与えることが主目的であり、慢性期で痙縮や拘縮が起立や歩行を阻害する場合には痙縮のコントロールや変形の予防・矯正等の目的も加わってきます。
一般的には、体重の支持、変形の予防、変形の矯正、不随意運動のコントロールが挙げられているが、脳卒中患者に対する処方目的としては、立脚期の安定を得やすくし、歩行時に床からのつま先離れを容易にして正常歩行パターンに近づけるなど、より具体的になっています。
脳卒中片麻痺患者の起立、歩行能力に影響を与える要因として、脳の損傷部位とその広がり、高次脳機能、感覚機能、平衡機能、年齢等が挙げられますが、運動麻痺の程度や回復段階、下肢の支持性など、個々の症例により様々な病態を持つため、機能に合った装具、目的に沿った装具を十分検討し、症状に合致しない装具や過度の装具(over bracing)にならないよう注意する必要があります。