左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ

左半側空間無視に対するボトムアップアプローチ

一側性感覚刺激が古くから行われています。
カロリック刺激を応用し左向きの眼振を誘発する方法、ランダムドットが左側に動く背景を用いて視運動性眼振を引き起こす方法、左後頸部への電気刺激や振動刺激を利用する方法、反復頭蓋磁気刺激等がありますが、無視を改善させるというエビデンスにはなかなか至っていないのが現状です。

ただし、左頸部への振動刺激では、身体中心の座標系の右方偏僑が矯正され、視覚走査訓練と組み合わせると無視が改善するという報告もあり、今後さまざまな方法の組み合わせが無視の改善に寄与する可能性を示唆しています。

また、感覚と運動の協調に介入する目的で半側空間無視患者に対するプリズム適応(プリズム順応)療法が行われています。
これは、視野を右にずらすプリズムの入った眼鏡をかけてリーチ動作訓練を行うことで、視覚的には右側にずれてみえる状態に到達運動を順応させるというものです。

眼鏡を外しても数週間効果が持続するとの報告がある一方、プリズム順応の有用性を確認できないとする報告もあり、現在進行中であるランダム化比較試験や長期予後に関する結果の報告が待たれています。