半側空間無視の病巣

半側空間無視の病巣

皮質領域の病巣では、中大脳動脈領域が一般的で、頭頂葉性(側頭・頭頂・後頭葉接合部、角回、縁上回)のものは、多彩な消去現象、視覚的イメージの左半分の無視(知覚的無視)、右側の刺激から離れることが困難、方向性運動低下などの特徴を持ち、病態失認、重度左片麻痺・感覚障害などを伴い予後不良のことが多いです。

後大脳動脈領域の病変では左同名半盲、地誌的失認などを伴うことがあります。

前大脳動脈領域の帯状回や補足運動野など前頭葉病変で生じることがあります。視覚スキャンや視覚定位における左側の運動性の無視、方向性運動低下などの特徴を持ち、予後良好なことが多く、motor impersistenceなどを伴いやすいです。

皮質下病巣では、前脈絡膜叢動脈領域の梗塞で生じることがあり、左片麻痺、感覚障害、記銘力障害などを伴い予後不良の場合もあります。

視床病巣でも生じることがあり一過性のことが多く、皮質下線維の障害などが考えられています。対側性の刺激に注意を固定できない、網様体による注意覚醒障害に伴う無視という特徴を持ちます。

線条体・内包・外包など穿通枝系の障害でも皮質関連線維の損傷により生じることが知られています。

特殊なものとして、テント下の中脳網様体賦活系の損傷や、脳梁損傷によって右手に半側空間無視が生じるといった報告もあります。

責任病巣が多岐に及んでいることが半側空間無視の特徴ともいえます。