COPD 安定期の管理
I 期(軽症)のCOPDでは、禁煙に加えて、症状の軽減を目的に必要に応じて短時間作用型気管支拡張薬の使用が推奨されます。
II期(中等症)のCOPDでは、症状の軽減に加えて、QOLの改善、運動耐容能の改善などが主な目標となります。長時間作用型気管支拡張薬の定期的な投与、呼吸リハビリテーションが推奨されます。
II ~IV期(中等症~最重症)のCOPDにおける薬物療法の主体は、長時間作用型気管支拡張薬の定期使用ですが、効果に応じて複数の長時間作用型気管支拡張薬を併用します。
III 、IV期(重症、最重症)のCOPDでは、増悪の予防が大きな課題となります。増悪を繰り返す症例(例えば、過去3年間で3回の増悪を繰り返す)では、吸入ステロイド薬を追加することにより増悪の頻度を減少させ、QOLの悪化を抑制することが期待できます。
嚥下障害の栄養管理の目的
嚥下障害の栄養管理の目的
嚥下障害の栄養管理の目的は、①誤嚥予防、②低栄養予防、③脱水予防です。
栄養摂取方法として、通常形態の食品の経口摂取が困難であることが多く、嚥下障害食形態や経管栄養剤の知識を必要とします。
誤嚥性肺炎発症例ではベースに低栄養があることが多く、栄養改善が治療効果として果たす意義は大きいといわれています。
栄養改善には、経管栄養の適切な利用も重要な要素となります。
経管栄養は普及していますが、利用者のQOLを高める手段になっているかどうか、栄養療法として十分であるかどうかを検討する必要があります。
呼吸機能障害等級の目安
1級
活動能力の程度:息苦しくて身の回りの事もできない
予測肺活量1秒率:測定不能/20以下
PaO2:50Torr以下
3級
活動能力の程度:ゆっくりでも少し歩くと息切れがする
予測肺活量1秒率:20~30
PaO2:50~60Torr
4級
活動能力の程度:階段をゆっくりでも上れないが、途中休みながらなら上れる。人並みの速さで歩くと息苦しくなるが、ゆっくりなら歩ける。
予測肺活量1秒率:30~50
PaO2:60~70Torr
後脛骨筋腱機能不全(PTTD)
後脛骨筋腱機能不全(PTTD)
PTTDは、足部は著明な外反扁平足となります。そのため、歩行時にストライド長、歩調(cadence)、歩行速度が減少します。また、足関節の背屈、底屈角の減少、足部外反の増大、中足趾節間関節における母趾背屈角度の減少が生じます。ただし、これらの異常歩行は,診察室での観察では診断は難しいです。
変形性足関節症 歩行
変形性足関節症 歩行
変形性足関節症の歩行時には、もともとの足関節ROM制限があるため、歩行時に足関節底屈内反、内転の角度変化が小さくなります。
診察室において三次元動態解析装置などの器械を用いずに観察するのは難しいです。
患側下肢の立脚期が短くなる疼痛性歩行を示します。
陳旧性足関節外側靱帯損傷 歩行
陳旧性足関節外側靱帯損傷 歩行
陳旧性足関節外側靱帯損傷では遊脚期終期に足関節が内反、内旋することを報告されています。
通常であれば、遊脚期後半では足関節は軽度外反して踵接地直前には内・外反中間位となって、踵接地に備えています。そして、踵接地時には約10°外反します。
陳旧性足関節外側靱帯損傷では、靱帯断裂による足関節不安定性により踵接地前の足関節内反が大きく、踵接地後、その反動で外反が大きくなります。後方から歩行状態を観察すると踵接地時にみることができます。
うちわ歩行(toe-in gait)
うちわ歩行(toe-in gait)
うちわ歩行とは、歩行時に足部が内側を向く歩行のことを言います。足部・足関節疾患では、先天性内反足の内転遺残変形、下腿内捻などで生じます。うちわ歩行の治療は、原疾患の変形を矯正することが必要です。
尖足歩行(equine gait)
踵は立脚期に常に接地していません。
足部・足関節疾患としては、先天性内反足の尖足遺残変形などの先天性のもの、また、外傷後、重度火傷後の尖足拘縮など後天性の尖足拘縮で生じます。尖足歩行の治療は、観血的に治療することが必要です。
軽度の場合にはアキレス腱延長術、重度の場合にはLambrinudi法などの骨切り術が必要です。
片脚立位時間 バランス検査
片明立位時間の測定は、臨床で最もよく利用されるバランス検査の1つです。
開眼での片脚立位時間の測定は2006年に提唱された運動器不安定症の診断基準となっており、15秒未満では運動器不安定症と診断されます。
阿久根らは1551名の地域住民を対象に片脚立位時間を測定し、変形性膝関節症(膝OA)を有する者は有しない者と比較して有意に低値を示したことを報告しています。
鶏歩(steppage gait)
先天的、後天的な坐骨神経、腓骨神経障害、または腰椎神経根障害で生じます。
足部・足関節部疾患としては、なんらかの原因で起こった腓骨神経麻痺で生じます。
治療としては、神経障害を治療することがまず重要です。
神経障害を治癒させることは難しい場合には、短下肢装具を用いて足関節の底屈を防ぎます。手術療法としては、Watkins-barr法などの腱移行術の適応となります。
疼痛性歩行(antalgic gait)
疼痛性歩行(antalgic gait)
障害側の足に荷重時痛があるときに、立脚期の時間を少なくして荷重時痛をなくす反応です。
中等度の急性足関節捻挫、軽度の(非荷重部の)骨折、脱臼、その他、外反母趾、陳旧性足関節外側靱帯損傷、有痛性外脛骨など、足部・足関節部疾患によって最も起こる異常歩行です。
治療としては、原疾患を治療することが重要であることはもちろん、その過程で、足関節周囲の筋力増強訓練、可動域訓練、歩行訓練を行うようにします。
骨粗鬆症 分類
骨粗鬆症は、原発性と続発性に分類され原発性骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、特発性骨粗鬆症に分類される。
従来、原発性骨粗鬆症や関節リウマチに伴う骨粗鬆症は、骨吸収、骨形成ともに亢進する高代謝回転とされてきた。
しかし、男女ともに加齢によって、骨形成シグナルであるWntシグナルを抑制するスクレロスチンが血清で増加し、60歳以降では血清スクレロスチン値と骨密度低下、骨構造劣化が相関することが示され、骨粗鬆症の成因として、骨吸収充進とともに骨形成低下が引き起こされているとされた。
関節リウマチにおける骨粗鬆症に関しても、炎症性サイトカインによって骨吸収亢進と骨形成低下が引き起こされることが明らかにされている。
骨吸収亢進と骨形成低下の病態を示すとされてきたステロイド性骨粗鬆症においても、骨吸収亢進は早期に一過性に引き起こされるものの、骨形成低下がその本態であると考えられるようになってきた。
以上のように、骨粗鬆症の病態は原発性、続発性を問わず骨吸収方進と骨形成低下が存在し、そこに酸化ストレス、ビタミン不足などが加わって骨強度低下を引き起こすと考えられる。
骨強度低下に伴って骨折危険性が増加した状態が骨粗鬆症であり骨粗鬆症性骨折を発症すると、ADLQOLの低下のみでなく、生命予後をも悪化させることになる。
緩徐進行性失行
原発性進行性失行(primary progressive apraxia)、または緩徐進行性失行(slowly progressive apraxia)は臨床的に失行症状を認め、認知機能障害や他の神経障害が前景に立たず、血管障害や脳損傷等では説明できない変性疾患群です。手の使用困難や拙劣さ等肢節運動失行で発症する肢節発症群と、発話の障害、困難または構音の障害で発症する発話発症群があります。
発話発症群には口舌顔面失行が高率に合併します。
病理所見の報告ではAlzheimer病、皮質基底核変性症、Pick病等があります。
構成失行
構成失行
構成失行の病巣
着衣失行
着衣の方法を口頭で説明することはできますが、上着やシャツを着る際にその裏表、上下、左右を逆にしてうまく着ることができなかったり、ボタンを掛け違えたりします。
右側(劣位側)頭頂葉を含む広範な病変でみられ、特に上頭頂小葉から下頭頂小葉が責任病巣といわれています。
口舌顔面失行
口舌顔面失行
観念性失行
Liepmannの記述した症例では、マッチとロウソクを使ってロウソクに火をつけるという動作を、順を追って正しく行うことができませんでした。
症状は左右で認められ、患者は日常生活でこの障害を自覚します。
責任病巣は左側(優位側)の角回です。
観念運動性失行の病巣と近接しており、観念性失行のほとんどの症例で観念運動性失行を合併しています。
観念運動性失行
観念運動性失行
「さようなら」「敬礼」等の社会的習慣動作や、口頭指示による道具を使う真似が障害されます。
模倣や、実際の物品使用では障害が軽減します。しかし、これら動作が自発的に行われる日常生活では障害は軽度で患者本人も気づかないことが多いです。これを自動随意運動乖離(Automatico-voluntary dissociation)といい、口舌顔面失行や観念運動性失行にもみられます。
症状は左右で認められ、責任病巣は左側(優位側)の縁上回および上頭頂小葉の皮質と皮質下白質と考えられています。
肢節運動性失行
肢節運動性失行
肢節運動失行は、ボタンを留める、手袋をはめる等の動作がぎごちなく、熟練性がなくなると言われています。 自発運動、模倣動作、道具使用のいずれにおいても拙劣さが認められることは、観念運動性失行や観念性失行と異なる点です。 責任病巣は左右の中心溝周囲で、大脳病変と反対側の上肢に症状が認められます。 中心前回病変では行為の開始困難や両手の同時運動障害を認め、中心後回病変では感覚障害を伴い視覚による代償が認められます。
古典的失行 障害部位
古典的失行 障害部位
Liepmannが記述した古典的失行症は優位半球頭頂葉の障害で発現します。
中心溝を中心に肢節運動失行が、縁上回を中心に観念運動性失行が、角回を中心に観念性失行が生じます。
重症筋無力症
重症筋無力症
重症筋無力症はアセチルコリン受容体に対する自己抗体による自己免疫疾患であり、神経筋接合部の機能阻害と破壊によって筋力低下をきたします。
90%の患者に胸腺異常が認められ、胸腺には自己抗原に反応する異常なTリンパ球が存在します。
・日内変動のある筋力低下(特に眼瞼下垂、複視、嚥下障害は診断的価値が高い)
・血液中の抗アセチルコリン受容体抗体陽性
・電気生理検査所見(反復誘発試験で活動電位の振幅が低下)のうち2つ以上が認められることが診断のポイントになります。
主な治療法としては、胸腺摘出術と薬物療法(ステロイド薬とコリンエステラーゼ阻害薬)が治療の中心となります。胸腺腫例では過形成胸腺例に比べ胸腺摘出術の効果が低いとされています。ステロイドは術後投与を基本としていますが、重症例には術前から用います。コリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも対症療法です。
急性増悪時(クリーゼ)には人工呼吸器の装着、血液浄化療法、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量投与などにより治療します。
リハビリテーションについては、重症筋無力症患者は反復運動により疲労、脱力が悪化するため、通常のリハビリテーションメニューの実施は困難です。嚥下訓練や呼吸筋力保持を中心に行いますが、クリーゼ時には関節拘縮予防に重点をおくと良いと言われています。