肺気腫のHRCT画像 Goddard分類

肺気腫のHRCT画像 Goddard分類

Goddard分類-1点:径1cm以下の気腫病変が散在する。
Goddard分類-2点:気腫病変が癒合して大きな低吸収領域が認められる。
Goddard分類-3点:気腫病変の癒合がさらに進み、低吸収領域がかなりの部分を占める。
Goddard分類-4点:大部分が肺気腫病変で健常肺はわずかに残るのみ。

HRCTでは気道病変を示唆する所見も検出が可能で、COPDの病型分類において有用です。
HRCTでは、肺気腫病変はLAA(low attenuation area、低吸収領域)として描出されます。
各LAAは正常肺とは明確に区別されますが、被膜を持たないことが特徴です。
胸部単純X線画像による早期COPDの検出は難しいですが、気腫優位型COPDの早期検出においてはH RCT(highresolution CT)が有用です。

COPDの臨床所見

COPDの臨床所見

  • 患者の多くは喫煙者であり、労作性の呼吸困難と慢性の咳嗽、喀痰が主症状です。
  • COPDに典型的な身体所見は重症になるまで出現しないことが多いです。
  • 視診上、口すぼめ呼吸、ビア樽状の胸郭(barrel chest)と称される胸郭前後径の増大、時に胸郭の奇異性運動(Hoover's sign)を認めます。
  • 打診では肺の過膨脹のため鼓音を示し、触診では胸郭の拡張運動域が全体に減少します。
  • 聴診では、しばしば呼吸音が減弱し、呼気延長を認め、強制呼出時の喘鳴を認めることもあります。
  • 進行すると体重減少や食欲不振も問題となり予後不良の因子となります。
  • 高二酸化炭素血症を伴う場合、朝方の頭痛を訴えます。
  • 右心不全の悪化により呼吸困難がさらに増悪したり、全身のむくみや夜間の頻尿などが観察されますが、肺性心を伴う患者で急激に体重が増加する場合は、右心不全の悪化を考えます。
  • 心理的抑うつ状態や不安などの精神的な症状もみられることが多いです。

MRC息切れスケール

  • Grade 0 息切れを感じない
  • Grade 1 強い労作で息切れを感じる
  • Grade 2 平地を急ぎ足で移動する、または緩やかな坂を歩いて登るときに息切れを感じる
  • Grade 3 平地歩行でも同年齢の人より歩くのが遅い、または自分のペースで平地歩行していても息継ぎのため休む
  • Grade 4 約100ヤード(91.4m)歩行したあと息継ぎのため休む、または数分間、平地歩行したあと息継ぎのため休む
  • Grade 5 息切れがひどくて外出ができない、または衣服の着脱でも息切れがする

COPDの病期分類

COPDの病期分類

0期:COPDリスク群
スパイロメトリーは正常
慢性症状(咳嗽、喀痰)

I期:軽症COPD (Mild COPD)
FEV1/FVC<70%
FEV1≧80%predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問
わない

II期:中等症COPD(Moderate COPD)
FEV1/FVC<70%
50%≦FEV1<80%predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問わない

III期:重症COPD (Severe COPD)
FEV1/FVC<70%
30%≦FEV1<50%predicted
慢性症状(咳嗽、喀痰)の有無を問わない

IV期:最重症COPD(Very Severe COPD)
FEV1/FVC<70%
FEV1<30%predicted
あるいはFEV1<50%predicted 
かつ慢性呼吸不全あるいは右心不全合併

※FEV1値は原則として気管支拡張薬投与後の値を用います。

COPDにおける病期分類は気流制限の程度を表す1秒量(FEV1)で行い、重症度を反映します。
中等症以上では重症度を適切に反映しないため、FEV1/FVC値を用いません。
病期分類には気管支拡張薬投与後のFEV1を用います。
病期分類は0期:リスク群、I 期:軽症(FEV1≧80%predicted)、II期:中等症(50%≦FEV1<80%predicted)、III期:重症(30%≦FEV1<50%predicted)、IV期:最重症(FEV1<30%predictedあるいはFEV1<50%predictedで慢性呼吸不全あるいは右心不全合併)としています。

気流制限可逆性試験

気流制限可逆性試験

1. 検査は原則として急性呼吸器感染症のない臨床安定期に行うこと。

2. 短時間作用型気管支拡張薬は少なくとも6時間、長時間作用型気管支拡張薬は24時間中止したうえで検査を行うこと。

3. 検査に用いる気管支拡張薬は、通常、短時間作用型吸入用β2‐刺激薬を原則とするが、抗コリン薬あるいは両者の併用であってもよい。

4. 投与方法はスペーサーを用いたMDI 吸入、ネブライザー吸入のいずれであってもよい。

5. 気管支拡張薬吸入後の検査は吸入後30~60分後に行うべきものとする。

6. 気管支拡張薬吸入効果の評価は、吸入前のFEV1と吸入後FEV1を比較して、200mL以上の増加かつ前値に対して12%以上の増加があったときに有意と判定する。

COPD 外因性危険因子 内因性危険因子

COPD 外因性危険因子 内因性危険因子

COPDの危険因子には喫煙・大気汚染などの外因性危険因子と、患者側の内因性危険因子があります。

COPDの最大の外因性危険因子は喫煙ですが、喫煙者の一部で発症するため、喫煙に対する感受性の高い喫煙者が発症しやすいと考えられています。
他に職業上の粉塵や化学物質(蒸気、刺激性物質、煙)、受動喫煙、呼吸器感染などがある。

遺伝性疾患であるα1‐アンチトリプシン欠損症は、最も確かな内因性危険因子です。しかし、日本においては非常に稀と言われています。。
その他、COPDの病因に関与する候補遺伝子はいくつかありますが、十分なエビデンスは得られていません。

STAS-J STAS日本語版

STAS-J STAS日本語版

ホスピス・緩和ケアにおける評価尺度として、STAS (Support Team Assessment Schedule)が使用されている。

医師、看護師など医療専門職による「他者評価」という方法をとる。
そのため、患者さんに負担を与えないという利点がある。

STAS-Jは、「痛みのコントロール」「症状が患者に及ぼす影響」「患者の不安」「家族の不安」「患者の病状認識」「家族の病状認識」「患者と家族のコミュニケーション」「医療専門職間のコミュニケーション」「患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーション」の9項目からなる。

評価表・マニュアルは下記を参照ください。
http://plaza.umin.ac.jp/stas/

CDS (Cancer Dyspnoea Scale) 呼吸困難の評価

CDS (Cancer Dyspnoea Scale) 呼吸困難の評価

がん患者の呼吸困難調査票で、自己記入式調査票です。
CDSは呼吸努力感に関する5項目の質問、呼吸不快感に関する3項目、呼吸不安感に関する4項目の合計12項目の質問で構成されています。
各質問に対し、1から5までの5段階の回答が記されています。
(1:いいえ、2:少し、3:まあまあ、4:かなり、5:とても)
患者は自分の状態にあった番号にチェックします。
調査に要する時間はおよそ2分と簡便です。
CDSの使用にあたっては著作者の許諾を必要としません。

マニュアルと調査票は下記を参照下さい。
http://plaza.umin.ac.jp/~pcpkg/cds/cds-manual.pdf

mMRC質問票 (修正MRC質問票)

mMRC質問票 (修正MRC質問票)

呼吸困難(息切れ)を評価する質問票です。

グレード0
激しい運動をしたときだけ息切れがある。

グレード1
平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れが
ある。

グレード2
息切れがあるので、同年代の人より平坦な道を歩くのが遅い、あるいは
平坦な道を自分のペースで歩いているとき、息切れのために立ち止まる
ことがある。

グレード3
平坦な道を約 100m、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。

グレード4
息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをするときに
も息切れがある。



るいそうと脱水

るいそうと脱水

るいそうが顕著な患者では、食事摂取量の低下による栄養素の欠乏だけでなく、脱水にも注意が必要となる。通常私たちは食事から約 800mLほどの水分を摂取し、その食物を消化、吸収することによってさらに 300mL ほどの代謝水を得ている。
しかし食事摂取量が低下すれば、当然 800mL ほどの水分は得られず、また代謝水も減少する。さらには経口摂取水分量も減少し、容易に脱水を来す危険をもつことになる。
主要栄養素の欠乏と合わせ水分欠乏、脱水のアセスメントも忘れずに行うように心がけると良い。
脱水時には皮膚にしわがより、表面が透けたようになる「パラフィン様皮膚」が観察される。また、水分およびエネルギー、蛋白質、脂肪が複合的に減少している場合もある。
食事摂取量や摂取栄養素量のモニタリングと合わせ、皮膚の状態の観察も行うと良い。

口腔乾燥症の臨床診断基準

口腔乾燥症の臨床診断基準

0 度(正常) 1 〜 3 度の所見がなく、正常範囲と思われる。
1 度(軽度) 唾液の粘性が亢進している。
2 度(中等度) 唾液中に細かい唾液の泡がみられる。
3 度(重度) 舌の上にほとんど唾液がみられず、乾いている。

口腔乾燥症の臨床診断基準は、口腔乾燥症の簡便で客観的な評価法として、口腔乾燥症の臨床診断基準がよく用いられる。

その他、口腔粘膜上皮の静電容量を測定することで水分量を測定する口腔水分計や、舌背部の湿潤度を測定する唾液湿潤度検査(KISO-WeT®)が良く用いられる。

唾液分泌量の変化による影響

唾液分泌量の変化による影響

全唾液腺は、大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と小唾液腺の大きく 2 つに分けらる。
大唾液腺は大量に唾液を分泌する役割、小唾液腺は口の中の機能を保つ役割がある。
健康成人の唾液量は1日1〜1.5Lあり、近年、年齢に伴う全唾液分泌量への影響はほとんどないと言われている。

しかし、高齢者の多くが口の乾きを訴える理由はなんなのだろうか。
ひとつには、小唾液腺の実質容量が年齢に伴って減少し、脂肪組織と結合組織が増殖し、腺細胞が縮小するため、小唾液腺からの唾液分泌量が減少するためと言われている。
この変化が小唾液腺の一つである口蓋腺にも起こり、これが高齢者の多くが口の渇きを訴える理由の一つとされている。

また、高齢者の唾液分泌量の減少には、基礎疾患の有病率や唾液腺の障害、服薬薬剤の影響が知られている。

唾液分泌量が減少すると自浄作用が低下し、細菌因子の増加と歯肉組織の脆弱化をもたらす。

このことから唾液分泌量の減少は歯周病のリスクファクターであり、う蝕のリスクが高まるなど、さまざまな口腔内疾患が引き起こされる。

唾液の潤滑作用の低下と唾液タンパクの質的・量的な変化によって口腔内が乾燥すると、口腔粘膜の保護作用を喪失する。

唾液は、口腔内を衛生的・機能的に保つという大きな役割を担っている。

肢帯型筋ジストロフィー2B型

肢帯型筋ジストロフィー2B型

大半の筋疾患は肢帯が好んで侵されます。
従って「肢帯型筋ジストロフィー」とは、臨床的特徴に乏しい筋ジストロフィーを意味します。従って、必然的に遺伝学的に異なる疾患が含まれます。
常染色体優性遺伝のものは1型、常染色体劣性遺伝のものは2型に分類されます。
それぞれの型の中で、最初に遺伝子座または原因遺伝子が見つかった順に1A、1Bなどとアルファベットが割り振られていきます。
これまでに少なくとも1Gまでと、2Pまでがあることが知られています。

本邦で最も頻度の高いのは2B型です。この2B型で欠損するジスフェルリンも筋線維膜タンパク質ですが、筋線維膜の補強ではなく、筋線維膜が損傷を受けた場合の修復に関与しています。

従って、ジスフェルリノパチーは、筋線維膜の脆弱性による筋ジストロフィーではなく、膜の修復異常による筋ジストロフィーと言えます。

ジスフェルリノパチーは10歳代後半から30歳代半ばにかけて、下肢筋力低下で発症します。当初は上肢の筋力は保たれていることが多い。同様にジスフェルリン欠損を原因とする疾患に三好型ミオパチーがあります。

三好型は遠位型ミオパチーの一種であり、腓腹筋が好んでおかされる。ただし進行すると肢帯型であっても進行例ではほぼ必ず腓腹筋が侵されており、進行例で肢帯型と三好型を区別することは困難です。

さらには、同一家系内でも肢帯型と三好型が混在することもあります。

血清CK値は数千IU/l に上昇しており、歩行可能な時期で1、000IU/l を下回ることはありません。

筋生検を行い、免疫染色またはウェスタン解析を行うことで診断が付きます。

遺伝子診断が必要な場合には、55個全てのエクソンのシークエンスが必要となります。

福山型先天性筋ジストロフィー 3kb挿入変異

福山型先天性筋ジストロフィー 3kb挿入変異

福山型先天性筋ジストロフィー患者の約70%は、FKTN遺伝子の3’ 非翻訳領域に約3kbの挿入変異をホモ接合で有しています。
残り30%の患者はこの3kb挿入変異と蛋白質コード領域のミスセンス変異からなる複合ヘテロ接合変異を有しています。
この3kb挿入変異は約102世代前の日本人に起こった突然変異と考えられており、日本人にしか見つからないとされていました。しかし最近相次いで韓国および中国でも少数の患者が見出されるに至っています。
3kb挿入変異は、最近、新たなエクソンを生じるとともに、その直前のエクソンの途中でスプライシングを受けることによって、読み枠がずれてしまうことが明らかにされました。
このことは、3kb挿入変異内の新規エクソン部位をアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて抑制すれば、治療できることを示しています。

福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉

福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉

福山型先天性筋ジストロフィー患者の筋肉では、α- ジストログリカンの糖鎖部分に対する抗体で免疫染色を行うと染色性が著減していますが、蛋白質部分に対する抗体で染色すると染色性が保たれています。
このことは、福山型先天性筋ジストロフィーにおいては、α- ジストログリカンの糖鎖に何らかの異常があることを示しています。
同様の異常はmuscle-eyebrain病、Walker-Warburg症候群を初めとする先天性筋ジストロフィーや2I 型を初めとする一部の肢帯型筋ジストロフィーにも認められます。
福山型の原因遺伝子FKTNがコードするフクチンのアミノ酸配列は糖転移酵素と相同性があることから、α- ジストログリカンの糖修飾に何らかの役割を有しているものと考えられています。
福山型先天性筋ジストロフィーを含む一連の筋ジストロフィーでα- ジストログリカンの糖鎖異常を来すものは、α- ジストログリカノパチーと総称されています。
ジストロフィン軸の最外層のラミニンはα- ジストログリカンとα- ジストログリカンの糖鎖部分で結合しています。
α- ジストログリカノパチーにおいては、α- ジストログリカンの糖鎖が正しく形成されていないことから、ラミニンとα- ジストログリカンとの結合が断絶しています。
すなわち、ジストロフィン軸の断絶を意味しており、ジストロフィノパチーと同様に筋線維膜の脆弱性を来して、筋ジストロフィーを引き起こします。

Modified Rankin Scale 全般的機能の評価

Modified Rankin Scale 全般的機能の評価

Grade0 :全く症状なし
Grade1 :なんらかの症状はあるが,障害はない。通常の仕事や活動はすべて行える。
Grade2 :軽微な障害。これまでの活動のすべてはできないが,身の回りのことは介助なしでできる。
Grade3 :中等度の障害。なんらかの介助を要するが,介助なしで歩行できる。
Grade4 :中等度.重度の障害。介助なしでは歩行できず,身の回りのこともできない。
Grade5 :重度の障害。寝たきり,尿失禁,全面的な介護。
Grade6 :死亡

Stein Langfitt Grading Scale 全般的機能の評価法

Stein Langfitt Grading Scale 全般的機能の評価法

Grade0 :神経学的に異常所見なく,労働能力あり
Grade1 :軽度の障害はあるが,自宅では自立して生活できる
Grade2 :自宅での生活活動において少しの保護,監督が必要
Grade3 :自立した生活機能は残存しているが,保護,監督が必要
Grade4 :自立した生活は不可能

GaitStatusScale-Revised 歩容評価

GaitStatusScale-Revised 歩容評価

姿勢反射障害:重心が足裏から外れる程度に後方に軽く引いて評価
4:足が後方に出ずそのまま倒れる
3:小刻みに突進し自力で止まれない
2:6歩以上突進するが自力で止まれる
1:3~5歩で自力で止まれる
0:2歩以内で自力で止まれる

開脚歩行
1:あり
0:なし

小刻み歩行
2:歩幅が足底の前後径未満
1:小刻みだが歩幅が足裏の前後径以上
0:なし

すくみ足
2:歩行途中で止まってしまう
1:歩行開始時のみすくむ
0:なし

すり足歩行
1:あり
0:なし

歩行レベル
2:手すり~用手介助を要する
1:監視下に独歩可能
0:正常

左右の動揺
2:足の運びが左右にふらつく
1:体幹が左右にふらつく
0:なし

加速歩行
2:加速し自力で止まれない
1:加速するが自力で止まれる
0:なし

継ぎ足歩行:8歩の継ぎ足歩行の間に2歩以上やり直したとき障害あり
1:障害あり
0:なし

外股歩行
1:あり
0:なし

福山型先天性筋ジストロフィー (Fukuyama congenital muscular dystrophy)

福山型先天性筋ジストロフィー (Fukuyama congenital muscular dystrophy)

福山型先天性筋ジストロフィーは常染色体劣性の遺伝性筋疾患であり、その患者は本邦先天性筋ジストロフィー患者のおよそ半数を占めています。乳児期に発育・発達の遅れで気付かれると言われています。典型的には、幼児期に座位まで獲得するものの、生涯、起立・歩行を獲得することはありません。知的発達障害も著明です。小児期には全身の筋萎縮が進行します。以前は10歳代半ばで死亡するとされていましたが呼吸管理の改善により30歳を越えて生存する患者も存在するようになっています。

サルコグリカノパチー (sarcoglycanopathy)

サルコグリカノパチー(sarcoglycanopathy)

筋線維膜にはサルコグリカンという糖蛋白質が発現しています。
α、β、γ、δの4つのサルコグリカンからなるサルコグリカン複合体がジストロフィン軸を側方から支えるようにして存在しています。
これらのサルコグリカンはそれぞれ異なる遺伝子によってコードされていますが、何れのサルコグリカン欠損によっても基本的に全てのサルコグリカンが複合体ごと欠損してしまいます。
サルコグリカンが欠損すると、生化学的にジストロフィンとβ- ジストログリカンの結合が弱まることが知られているます。
ジストロフィンとβ- ジストログリカンの結合が弱まるというのは、ジストロフィン軸の筋線維膜を補強するという機能的な側面からは、ジストロフィンが欠損したのと同義となります。
サルコグリカノパチーは当初「常染色体劣性の重症小児筋ジストロフィー」として報告されました。これはすなわちDuchenne型に似ていますが常染色体劣性遺伝形式を取る筋ジストロフィーであることを意味しています。
実際には、Duchenne型よりは軽症の例が多く、むしろBecker 型やDuchenne型の症候性保因者などの鑑別に重要です。
サルコグリカノパチーは現在、肢帯型筋ジストロフィー(2C~2F型)に分類されています。

ミラー・ニューロンと他者の動作の意図・意味の理解、共感

ミラー・ニューロンと他者の動作の意図・意味の理解、共感

他者の動作の意図や意味を理解することは社会生活を遂行するために必須なことです。
1996年リゾラッチらは他者の動作を観察する時に活動を増大させるニューロンを見つけ、これを他者の動作を映す鏡という意味で「ミラー・ニューロン」と名付けました。
個体による動作を引き金として応答するニューロンは、45野や、前頭葉と解剖学的に強い結合をもつ下頭頂小葉前外側部(PF野)、側頭連合野に位置する上側頭溝の前方領野(STSa)に存在することが明らかにされています。
ミラー・ニューロンは他者の動作の観察そのものではなく、その動作の意図や意味の認識・推測の反映であることを示唆する事実が報告されています。

感情制御における前頭葉の役割

感情制御における前頭葉の役割

前頭葉が感情制御に重要な役割を果たしていることは明らかです。
前方帯状回は個体にとっての刺激の価値評価に関係していると考えられます。
この領野の機能低下は刺激を受容することによる快感の欠如をもたらし、鬱病に見られる喜びの喪失や意欲低下の原因となります。
逆に活動が亢進すれば刺激受容による快感が増大し、躁病の諸症状をもたらします。
前頭葉背外側部は刺激に対する心理的並びに生理的反応の制御に関係すると考えられます。
鬱病における眼窩部の活動性増大は嫌悪反応や負の感情を抑制しようとする一種の防御反応です。
この領野の損傷は刺激に対する好感反応を減少させ、結果として鬱症状を生じさせます。

意の障害 前頭葉症状

意の障害 前頭葉症状

前頭葉には運動中枢である運動野、前運動野が存在します。
一方、欲求と関係の深い大脳辺縁系と前頭葉の間には密接な相互線維連絡があります。
前頭葉は、個体に行動を起こしたいという欲求が生じた時、それを実際の行動に移す働き(欲求→行動変換過程)を前頭葉は担っています。
前頭葉損傷によって、欲求→行動変換過程に障害が生じます。
この変換過程で重要な役割を担っている神経伝達物質はドーパミンと言われています。ドーパミンの過剰あるいは不足によっても変換過程に障害が生じと言われています。
欲求が生じるとすぐ行動に変換されてしまう(脱抑制)、あるいは欲求によって引き起こされた行動がそのまま持続する(保続、無動)という症状が多いです。
中には逆の症状があります。特定の刺激に注意を集中すること出来ず、課題とは関係ない刺激に注意を向け反応してしまう。この現象は「転動性」と呼ばれています。
刺激が提示されるとすぐに反応してしまう現象も認められます。環境依存症候群です。
すなわち、前頭葉損傷に伴って生じる意の障害は「状況に応じた適切な反応をなしえない」ことではないでしょうか。
これは状況を正しく認識しえないことに原因がある場合もありますが、状況の認識が正しいにも拘われず不適切な行動が生じることが前頭葉損傷者の特徴です。
環境に適応するためには、状況に応じて行動を開始し、停止し、また状況が変化すればそれに併せて行動も変化させる必要があります。この機能は「遂行機能」と呼ばれています。前頭葉損傷者では顕著な遂行機能障害が認められます。

関節包パターン

関節包パターン 関節と運動制限

頚椎:側屈と回旋が等しく制限,伸展

肩甲上腕関節:外旋・外転・内旋

胸鎖関節:過剰な可動域で疼痛

肩鎖関節:過剰な可動域で疼痛

腕尺関節:屈曲・伸展

腕橈関節:屈曲・伸展・回外・回内

上橈尺関節:回外・回内

下橈尺関節:全可動域一過剰な回旋で疼痛

手根の関節:屈曲と伸展が等しく制限

中手指節関節一指節問関節:屈曲・伸展

胸椎:側屈と回旋が等しく制限,伸展

腰椎:側屈と回旋が等しく制限,伸展

仙腸関節・恥骨結合・仙尾連結:関節にストレスがかかると疼痛

股関節:屈曲・外転・内旋

膝関節:屈曲・伸展

脛腓関節:関節にストレスがかかると疼痛

距腿関節:底屈・背屈

距骨下関節:内反の可動域制限