報告は少ないものの、口蓋ミオクローヌスにより、嚥下障害をきたす場合がある。
口蓋ミオクローヌス(palatal myoclonus)は、2~3Hzの持続性の規則正しい律動性を口蓋や咽頭の筋群に認める不随意運動である。多くは小脳や脳幹の脳血管障害が原因で、小脳歯状核一赤核一下オリーブ核で形成されるGuillain-Mollaretの三角とよばれる神経回路が障害されるときに生じる。
口蓋ミオクローヌスは、脳血管障害などによる症候性口蓋ミオクローヌスと原因不明の特発性口蓋ミオクローヌスに大別される。
特発性の口蓋ミオクローヌスは、口蓋・咽頭に限局し、比較的若年者に多く、睡眠などで軽減する傾向がある。
症候性の口蓋ミオクローヌスは口蓋・咽頭だけでなく、眼球,四肢時には横隔膜にも不随意運動を認め、睡眠時の口蓋ミオクローヌスは軽減しないことが特徴である。
特発性口蓋ミオクローヌスまたは症候性口蓋ミオクローヌスの薬物治療の効果については、有効との報告も無効との報告もある
摂食嚥下リハビリテーションについては、適切な評価・訓練により有効という報告がある。
症候性口蓋ミオクローヌスでは平均3.5年で症状が軽快することが報告されている。脳血管障害による運動麻痺では発症から長い期間が経過すると症状の改善は乏しい。しかし、口蓋ミオクローヌスでは長期間経過すると症状が改善していくことも口蓋ミオクローヌスのリハビリテーションで考慮すべき点である。