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ジストロフィン dystrophin

ジストロフィン dystrophin

ジストロフィンは、ジストロフィン・β-ジストログリカン(β-dystroglycan)・α-ジストログリカン( α-dystroglycan)・ラミニン2( laminin 2)からなる「ジストロフィン軸」と呼ばれる蛋白質複合体を構成し、これを支えるサルコグリカン(sarcoglycan)複合体とともに、筋線維膜を裏打ちするアクチン線維のネットワークと基底膜とをつないで筋線維膜を補強しています。ジストロフィンが欠損すると、この補強が弱まり、筋収縮時に筋線維膜に強い負荷が掛かって損傷を起こします。損傷を受けた筋線維膜に小さな穴ができます。細胞外のカルシウム濃度は細胞内の濃度の1万倍以上高いことから、筋線維膜に穴が開くと高濃度のカルシウムが一気に細胞質内に流れ込みます。一方、筋収縮は、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが滑ることによって生じますが、これは、筋小胞体からの少量のカルシウム放出によってコントロールされています。このような仕組みのあるところに高濃度のカルシウムが流入すると、筋線維の過収縮が引き起こされ、筋線維の内部構造が破壊されてしまいます。これが筋線維壊死の原因と考えられています。筋線維は壊死を起こすと、カルパインなどのプロテアーゼが活性化されて自己消化を起こすとともに、速やかにマクロファージが出現して障害を受けた細胞質を貪食します。さらに、休眠していた筋衛星細胞が活性化されて分裂増殖し、筋線維を再生し、やがてほぼ元通りの筋線維が構築されます。筋ジストロフィーの場合は、何度も壊死が繰り返されるために、やがて再生が追いつかなくなり、筋線維数が減少していきます。更にそのスペースを埋めるべく間質の線維組織や脂肪組織が増加します。

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眼球運動の障害や瞳孔不同、対光反射の消失は、患者が重篤な状態に陥っている可能性を示す。脳死判定基準の中にも、瞳孔の散大と固定、対光反射の消失がある。たとえば、脳幹出血を起こすと眼球運動の中枢障害による正中位固定や、交感神経障害による著しい縮瞳( pinpointpupil )などの特徴的な眼症状を示す。瞳孔径や対光反射の異常は、出血やヘルニアの早期発見につながるため、重要な観察ポイントとなる。 眼症状の観察 対光反射の有無は、光を当てた側の瞳孔反射である直接対光反射、反対側の間接対光反射で評価する。 反射の程度は迅速・緩慢・消失の三段階で示す。 さらに、眼球偏位や瞳孔径の異常がないか観察する。 病側の眼瞼下垂は動眼神経麻痺の可能性があり、眼球運動の異常は動眼、滑車、外転神経の異常を示す。これらは、中脳や橋、頭蓋底部の異常のサインとなるため、重要な観察ポイントとなる。 観察の注意点 瞳孔径 瞳孔径は周囲の光量に影響を受けるため、夜間消灯後は、日中と同じく照明を点け、光に慣れてから観察します。 対光反射 対光反射には直接反射・間接反射があり、耳側から光を入れる必要があります。 LED などの強い光や、長時間光を当てることがないようにします。

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