環境依存症候群の機序
レールミッテによれば、環境依存症候群は通常の検者―患者関係よりも複雑な状況で生じやすいといわれています。
彼の自宅を訪問した患者は絵が壁から外れているのを見て釘とハンマーで絵を壁に固定した。
寝室を見せると、衣服を脱いでベッドに寝てしまった。まるで自宅にいるかのごとく振る舞った。
患者は、①自分の置かれている状況が理解出来ず(状況無視)、②環境刺激からの影響を排除出来ない(環境固着)。この事実は環境依存症候群が診察室でのみ見られる特殊な現象ではなく、日常生活でも出現する現象であることを意味します。
ピロンとデゥボアは次のように考察しています。環境依存症候群は前頭葉損傷者で生じる。それは行動の自律性の喪失である。患者の行動は環境刺激によって容易に誘発され、患者はそれを抑制出来ない。前頭葉は刺激―反応の結合を抑制して目的適合的な行動へ変容する働きをする。この時、自己の内的状態(大脳辺縁系および眼窩野で処理される)と環境からの情報(頭頂葉の感覚連合野および前頭葉背外側部で処理される)の両者に配慮する必要がある。すなわち前頭葉と頭頂葉の間の力動的な相互作用が必要である。前頭葉損傷者ではこの相互作用が失われて頭頂葉からの情報のみによって自動的な行動が触発される。環境依存症候群は前頭葉―頭頂葉間の相互抑制過程の障害による接近―回避不均衡に起因する症状であるとされています。
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