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改訂PGCモラールスケール

改訂PGCモラールスケール

使用目的と特徴
PGCモラール・スケール(PhiladelphiaGeriatricCenterMoraleScale)は、Lawtonによって開発されたモラールの測定尺度である。
モラールの概念は、本来、戦場における兵員の士気や職場における従業員の士気を表わす概念であったが、Kutnerらによって老化・高齢者問題の研究に導入された。その際に、Kutnerらはこの語の意味を大きくかえ、「満足感、楽天的思考、および開かれた生活展望の有無を反映した生活や生活上の諸問題に対する反応の連続体」であるとした。Kutnerらによれば、それは適応と同一の現象を表わす概念であるが、適応が主として行動に関わる概念であるのに対して、モラールは精神状態ないし一連の性向に関わる概念である。
Lawtonは、Kutnerら以来、社会老年学の領域でモラールの概念に付されてきたさまざまな意味を検討し、「モラールが高い」ということは、「自分自身についての基本的な満足感を持っていること」「環境の中に自分の居場所があるという感じをもっていること」「動かしえないような事実については、それを受容できていること」という3つの意味が含まれているとした。そして、このような「モラール」を測定するためには、モラールを多次元のものとして定義したうえで、それを一次元の得点として表わす尺度が必要であるとして、そのような尺度の開発を目指した。
こうして開発され、後に改訂されたのが、改訂PGCモラール・スケールである。改訂PGCモラール・スケールによって測定されるモラールは、「心理的動揺」「孤独感・不満足感」「老いに対する態度」と命名され、主観的QOLの評価を目的としている。

使用方法
PGCモラール・スケールは自記式の尺度として開発されたものであるので、知的機能の著しく低下した高齢者でなければ、調査票への記入が可能であると考えられる。面接で聴き取る場合には、調査員が自分の判断で説明を加えたり、誘導したりすることがないように注意する必要がある。
PGCモラール・スケールについても何通りかの日本語訳があるが、定訳といえるほどのものはない。ここには、古谷の訳文を示した。

判定方法
質問項目のそれぞれについて、肯定的な選択肢(質問用紙の中で下線を付した選択肢)が選ばれた場合に1点、その他の選択肢が選ばれた場合には0点を与え、単純に加算して合計得点を出す。最高得点は17点である。質問用紙の中の[]内は所属因子を表わす。因子の名称は、Ⅰが「心理的動揺」、Ⅱが「老いに対する態度」、Ⅲが「孤独感・不満足感」である。


改訂PGCモラール・スケールの得点は、幸福な老いの程度あるいは「主観的QOL」の指標であり、被検者の相対的な位置を示すものであるにすぎない。“幸福な人”や“不幸な人”の弁別を行なうものではない。

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