回復期リハビリテーション 効果





回復期リハビリテーション 効果

集中的に行われる回復期リハビリテーションによってADLが改善し得ます。
脳卒中初回発作後 4 か月以内にリハビリテーション科に転科または転院した患者を対象とした全国調査によれば、Barthel indexは、入院時平均42.2点から退院時74.3点に改善し、歩行可能例の比率も21.4%から70.7%へと増加したとの報告があります。
転帰先は、自宅退院72%、リハビリテーション目的転院11%、合併症治療目的転院 2 %、福祉目的転院 9 %、施設入所5 %、死亡 1 %で、低ADL群ほど自宅復帰率が低く、入院期間が長い結果となりました。
回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者の場合も同様に、Barthel indexは、入院時平均44.3点から退院時66.2点に改善しています。
自宅退院率は63.6%でした。
リハビリテーション科専門医が主治医として関与することにより、脳卒中患者一日当たりのADL改善率が高くなるとの報告があります。
機能回復を目指したリハビリテーションの効果を検討したメタアナリシスでは、集中的


リハビリテーションにより、ADLが向上し、自宅退院率が上がることが示されています。



急性期 回復期 維持期





急性期 回復期 維持期

一般に脳卒中リハビリテーションの流れは、急性期、回復期、維持期に分けられています。

急性期リハビリテーションは、発症直後からベッドサイドで開始され、廃用症候群の予防と早期からの運動学習によるセルフケアの早期自立を最大の目標とします。

回復期リハビリテーションは、リハビリテーションチームによる集中的かつ包括的なリハビリテーションです。急性期リハビリテーションに引き続いて、さらに積極的なリハビリテーションを行うことにより、その効果が期待できる患者に対して、セルフケア、移動、コミュニケーションなど、能力の最大限の回復および早期の社会復帰を目指します。

維持期リハビリテーションは、回復期リハビリテーションにより獲得した能力をできるだけ長期に維持するために実施されます。

海外では、急性期治療に早期から退院支援を加えると、在院日数の短縮に加えて、ADLQOLの向上が認められ、さらに長期的効果もあることが報告されています。


しかし、急性期、回復期、維持期に渡って、一貫した流れでリハビリテーションを行うことが勧められていますが、時期の区分についての科学的な根拠はないとされているとのことです。



遂行機能 定義





遂行機能 定義

レザックは遂行機能を「相互に独立した目的的かつ自己完結的行動を連続的に行う能力」と定義しています。
スタスは「特定の目的を達成するために、目的を記憶に保持して監視し妨害を排除する技能」と定義しています。
アンダーソンらは「複数の情報や活動に注意を向け監視し統合する機能を果たす情報処理系」と定義しています。
ラビットによれば、遂行機能は次の特徴を持つといいます。
1)それまでに経験したことのない新しい状況で目標や計画を設定し、目標を達成するためにある行動を選択して実行し、目標が達成出来たかどうかを評価し、目標が達成されていなければ行動を変更する、などの活動を行う。
2)行動を効率よく実施するため、自己の環境や自分自身についての記憶を制御する。
3)新しい行動の系列を作成し、それと関係のない行動を抑制する。
4)相互に関係のない二つの行動を同時に行う。
5)ある目標を得るために行動している時、より望ましい目標が見つかれば、それを新たな目標とし、そのための行動を行う。
6)長期にわたって維持される。
7)必ずしも意識されない


前頭葉機能障害 前頭前野





前頭葉機能障害 前頭前野

Stussは、前頭前野を、背外側前頭前野、腹内側前頭前野、上内側前頭前野、前頭極の4つの領域に分割し、それぞれの領域と関連する領域特異的な次の4つの認知機能を提唱しました。

1)遂行的認知機能
低次の自動的な認知機能の制御と方向づけを担います(プランニング、認知的構えの転換、抑制など)。「遂行機能」の一般的な意味合いにもっとも近いと思われる概念で、この機能の障害はWCSTTMT、流暢性検査などのいわゆる遂行機能検査において認知成績の低下を引き起こします。遂行的認知機能は、前頭前野のうち、背外側前頭前野と関係すると想定されています。

2)行動的―情動的自己調整機能
情動処理や報酬処理とかかわる認知機能で、個人の行動に対する情動的な結果の理解や行動の自己制御を担います。この機能に障害をもつ患者は、社会的に配慮の欠けた言動や攻撃行動などの問題行動を発現しやすいです。実験的な場面では、刺激とそれに対する情動的報酬の連合・逆転学習や、ギャンブリング課題の遂行に障害を示します。腹内側前頭前野と関与すると考えられています。

3)活性化調整機能
目的指向的行動の達成に向けて、あるいは、特定の状況内において行動を適切なレベルに活性化させる機能を担います。活性化調整機能は、個人が有するあらゆる認知機能を適切に働かせるために不可欠な機能と考えられています。これが障害されると、行動や心的過程の開始や維持が損なわれ、発動性障害が現れます。内側前頭前野のより上方の領域との関連が示唆されていますが、右内側前頭前野とのかかわりが強いともいわれています。

4)メタ認知過程
自己の内的状況の理解(自己意識、想起意識、認知と情動の統合)と、それを基盤として生じる他者認知(心の理論)や社会的認知を担います。この機能に障害をもつ患者は、社会的判断を適切におこなうことができず、さらには、共感性の欠如、無関心、自己投影を必要とするユーモアの無理解、といった症状を示します。前頭極(ブロードマンの10野)との関係が想定されています。



前頭側頭型認知症の臨床診断特徴





前頭側頭型認知症の臨床診断特徴

性格変化と社会的接触性の障害が病初期から全疾患経過を通して優勢な特徴である。知覚,空間的技能,行為,記憶などの道具的機能は正常か比較的良好に保たれる。

中核的診断的特徴(すべて必要)
A.症状は潜行性に発症し徐々に進行
B.社会的対人行動の早期からの障害
C.自己行動の統制の早期からの障害
D.早期からの情意鈍麻
E.早期からの病識の欠如

支持的診断的特徴
A.行動異常
  1.自己の衛生や身なりの障害
  2.思考の硬直化と柔軟性の消失
  3.注意の転導性の元進と維持困難
  4.過食,口唇傾向と食行動変化
  5.保続的行動と常同的行動
  6.使用行動
B.発話および言語
  1.発話量の変化
   a.自発性の低下と発話の簡素化
   b.発話促迫
  2.常同的発話
  3.反響言語
  4,保続
  5.無言症
C,身体所見
  1.原始反射
  2.失禁
  3,無動,固縮振戦
  4.低く不安定な血圧
D.検査所見
  1.神経心理学的検査二重度の健忘・失語・空間認知障
   害を伴わない明らかな前頭葉機能検査の異常
  2、脳波検査:臨床的に明らかな認知症症状があるにも
   かかわらず通常の脳波検査では正常
  3.脳画像検査(形態および/または機能画像):前頭葉

   および/または前部側頭葉の著明な異常



回復期リハビリテーションの栄養状態の維持・増進・改善方針





回復期リハビリテーションの栄養状態の維持・増進・改善方針

入院後72(3日間の喫食量把握)時間以内のスクリーニングを実施し、入院患者
の栄養状態の把握、低栄養状態患者を早期発見する。

入院患者の定期的なアセスメント、病棟訪問により、低栄養状態患者の栄養状態
改善、また入院中の栄養状態の悪化を防止する。

適正な食事内容や経管栄養剤を選択する。

過栄養患者の内臓脂肪軽減のための食事療法を実施する。

1 か月に1 回、全患者に対しモニタリングを実施し、計画立案する。

栄養ケア計画は、チームの方針、患者、家族の意向に添った内容で策定する。

栄養ケア計画を患者、家族、チームに具体的に説明する。

入院中のリハビリプログラムの変化を把握し、それに応じた必要栄養量を設定す
る。


食事摂取量を定期的に確認し状況に合わせて提供量、提供方法などの修正を行う。



嚥下障害 調理の工夫 魚類





嚥下障害 調理の工夫 魚類

障害が軽度であれば、小骨の少ない魚、はんぺんが適当です。
脂肪や水分の多い魚が加熱しても固くなりづらいです。
蒸し魚・焼き魚・煮魚にしてほぐしたり、フードカッターを使います。
身の柔らかい魚はそのまま食べられます。

中等度以上の障害があれば、蒸し魚・焼き魚・煮魚に調理した魚をミキサーにかけます。
油の無い魚は、サラダ油やしそオイル、時にはマヨネーズを加えます。
だし汁やスープに対しては、トロミ剤をいれるなどの工夫が必要です。
魚類に限らず、離水せず、やわらかく、まとまりやすい形態がベストです。


意味記憶障害の診断





意味記憶障害の診断

意味記憶障害を呈するSDの責任病巣は、中・下側頭回、側頭極、扁頭体、海馬、海馬傍回などを含む側頭葉前方部であり、側頭葉萎縮はピック病の特徴である“ナイフの刃状”と呼ばれる高度な萎縮のため、CTMRIなどの画像診断が有用となります。

通常、萎縮には左右差があり、臨床的には左優位例が多数を占めます。

また、言語以外の意味記憶障害では、有名人や親戚友人などよく知っているはずの人の顔、あるいは有名建造物がわからないという症状がある。これは右側頭葉優位めSD例に特徴的な症状として記載されています。

意味記憶障害がさらに進展した場合には、たとえば、風鈴そのものを見ても(視覚表象)、音を聴いても(聴覚表象)、触っても(触覚表象)、名前を聴いても(言語表象)、感覚様式を超えた同定障害が生じ、目の前の対象物がまったく理解できないという症状が現れます。
失語・失行・失認の機序は、いずれも感覚様式特異的な障害としてとらえることが原則となります。


一方、意味記憶障害の特徴はいわば超感覚様式的な概念知識の崩壊につながっています。



失語症 意味的治療





失語症 意味的治療

意味的治療の対象者は次の3型をあげることができます。
呼称・書称等の意味表象を活性化したうえで単語を表出する際に困難を示す症例で、たとえばBroca失語があげられます。
次いで意味処理障害を含むことがある失語型で、純粋型を除くあらゆるタイプが含まれます。
さらに聴覚的理解・読解は可能、呼称が困難な症例です。

意味的治療の課題
意味理解課題では、絵・聴覚的提示単語と文字単語をマッチングさせ、この際に選択肢の関連性を増大させることによって難易度を上げることができます。 同一訓練語について,訓練語のカテゴリー,同カテゴリーの対象物,関連語に関するイエス・ノー質問とつなげる
文字単語の関連性マッチングもよく行われます。
カテゴリー特異的理解障害を示す症例に対しては、目標カテゴリーに関連する情報を提供し、その後絵・単語マッチングを行います。
意味特徴治療と呼ばれる方法では、意味的障害を意味表象の特殊な詳細を失っている、と見なします。
呼称できない単語の意味情報を与えます。
密接に関連した対象間で対比、絵の意味的詳細に関する判断、意味特徴の記述を行います。
Odd one out課題では、3語のうち同じカテゴリーに含まれない語を選びます。
反応に言語表出を必要とせず、直接的にカテゴリーや概念処理の能力を検討することができます。
関連語のマッチング、類義語の生成、定義文と単語のマッチング、絵の特徴記述に関する正誤判断、単語間の意味的類似性判断などの課題が利用できます。
同一訓練語について、訓練語のカテゴリー、同カテゴリーの対象物、関連語に関するイエス・ノー質問とつなげるなど、意味的質問の系列的階層が検討されています。




語義失語の診断





語義失語の診断

臨床場面では正確な病歴の聴取を行い、どのような症状が見られるのか確認します。
本人や家族から聴き出される“物忘れ”の質を探ることが重要です。
「ことばを忘れてしまった」「簡単なことばが理解できず何度も聞き返す」ことを物忘れと表現されることは多ようです。
また、同様の症状は耳が聞こえにくくなったと耳鼻咽喉科を受診する場合もあります。

次は、物品や線画を提示し、呼称を求めます。
検査する際には、具体語の表出および理解障害(双方向性の障害)、呼称時の語頭音効果の有無語に対する既知感の有無(「~って何ですか?」という聞き返し)を観察します。
できれば、複数の物品について検討することが望ましく、高頻度に使用する物品だけでなく使用頻度の低い物品を含むことも軽度例を見逃さないために必要です。
また、提示した物品を実際に使用できるかどうか確かめることも重要です。
さらに、非典型的な読みを要求される漢字熟語の音読に見られる類音的錯読および漢字熟語と絵(選択肢の中に「三味線」であれば三本の電線「団子」なら子ども、といったように熟語のうち漢字1文字に対応するものを含む)を提示した際の連合障害があるかどうかも調べます。

また、語頭音効果の有無語に対する既知感の有無、よく知られた諺の補完課題はSDか否かを鑑別するうえで重要な所見です。



失語症 音韻的治療





失語症 音韻的治療

音韻的治療の目的は、音韻出力辞書からのアクセスと非語彙ルートからのアクセスにより音韻出力バッファーにおける音韻処理過程を促通することです。

音韻的訓練の対象は2種類に分かれます。
第一は発話表出辞書へのアクセス障害を有する例で、この場合には音韻的治療に意味的治療を併用します。
一方、音韻出力バッファーの障害を有する例では、目標語は正常に活性化されているため音韻操作訓練および仮名文字訓練を行います。

通常の音韻的治療の方法
復唱は発話を促通します。
復唱と文字を組み合わせて使用します。
モーラ数の少ない単語から系統的に行います。
また、非単語により語彙知識によらない刺激を使用することができます。
仮名音読で、復唱的に音を提示することで音読を促進することができます。
文字により音の配列・選択をフィードバックします。
1文字、単語と進め、また斉唱や復唱的音読も行います。
漢字の仮名ふりでは、モーラ数、心像性、親密度、頻度、読みの一貫性を操作することができます。

音韻表象を再構築するための課題
合成課題は、複数の構成要素を合成する(花+時計)。
削除課題では、単語から特定の音を削除する(しまうま-ま)。
反転・逆転課題では、音の配列順を逆にする(すいか→かいす)。
置換課題では単語の語頭・語中・語尾など1文字を変えて、別の単語を作る(テント→テンキ→エンキ→エノキ)。
また、モーラ分解・抽出課題があり、これによりモーラ数を把握する。
仮名文字と結びつけることや音読が重要である。
音節の分節化課題では、単語の語頭・語尾の音節を仮名文字から選択する。
選択肢には音韻的・視覚的特徴の類似した文字を含める。
押韻判定課題は、2語の最終音節の同一性を判断する。

といった訓練があります。




嚥下障害 食具・食器 の選定





嚥下障害 食具・食器 の選定

食べこぼし、むせ、誤嚥等の症状がある場合には食具・食器をその機能に合わせて症状の改善をはかります。

スプーン
ボール部が小さく浅めスプーンを用いる(弱い口唇の力でも食物を捕食したすい。ボール部の幅の目安は口唇の幅の2/3程度のものを選択。握力の低下した者には食具の柄(握り)の部分を太くしたり、腕の可動域に制限がある場合には口唇の中央部まで届くように、柄の部分を変形させた曲がりスプーン。フォークなども利用)

コップ
水分を摂取する際には、頭部を後ろに傾け過ぎると誤嚥の危険性が増すので、鼻の部分が当たらないようにカットされたコップを使用する。


認知低下により注意機能低下がある場合、平皿の仕様で自力摂取量が増える場合もある。




意味記憶障害にみられる症状





意味記憶障害にみられる症状

長期記憶のうち、意識にのぼる記憶である陳述記憶は意味記憶とエピソード記憶に大別されます。
エピソード記憶は「いつ」「どこで」「どのような状況で」という時間・場所・感情などの文脈を持つ個人的な体験の記憶です。
一方、意味記憶とは、社会や文化に共通の知識として言語活動をはじめヒトのさまざまな認知活動を支えている記憶です。
選択的意味記憶障害であるSD例では側頭葉萎縮の左右差や進行過程でさまざまな症状が出現し、左側頭葉萎縮優位のSD例では語義失語が特徴的です。
SDに見られる語義失語では、障害された語を引き出そうと語頭音ヒントを提示しても効果はなく、2音節、3音節とヒントを増すと、まだことばとなっていない非語の段階で「ああ、~というんですか」(例二鉛筆→「“えんび’というんですか」)という反応が認められます。
意味理解のみならず、SDにみられる語義失語では語や諺の初頭部分を与えられて続きを答える補完課題ができず、語彙そのものの消失を示唆しています。
これは、もはや語から意味のアクセス障害に留まらず、語という意味情報そのものが失われた状態と考えられます。

語義失語が言語の問題に限定されるのに比べ、意味記憶障害であるSDは言語だけでなく、視覚、嗅覚触覚聴覚など、さまざまな知覚表象を経由しても対象となる「モノ」の理解ができなくなります。



語義失語 (semantic aphasia)





語義失語 (semantic aphasia)


語義失語は、復唱良好で意味理解に障害を持つ超皮質性感覚失語に分類される失語です。

失語の『意味型』とよばれる語義失語では、文を構成する最小単位である語(特に具体語)の意味(語義)が理解できなくなります。

その理解障害は語に限定している点が語よりも文章の理解がおもに障害される他の超皮質性感覚失語と異なっています。

語義失語は主に具体語にみられる理解および表出の障害が特徴であり、音韻や統語論は比較的保存されます。

音韻・統語が良好でありながら極端に語義理解が低下しているため、「『利き手』って何ですか?」というように、検査者が尋ねた文中の語彙だけをそのまま正確に切り取って聞き返す独特な反応が認められます。

これは従来の失語型がおもに音韻や統語に障害がみられる点とは対照的で、この失語型が提唱された当時から常に論争の的でした。

語義失語は、脳血管障害や変性疾患頭部外傷などさまざまな原因で生じます。

自発話は流暢で、興味ある事柄にはむしろ多弁ですが、語彙が乏しく、しばしば迂言となります。提示した線画や実物品を呼称する際には適切な言葉が出ず、語性錯語や「わからない」という反応が認められます。

さらに、比喩的表現を使用する慣用句の意味がわからず、字義どおりの説明に留まる場合(例 腹黒い→「お腹が黒いっていうことですか)や、まったく説明できない場合があります。

日本語における漢字と仮名という2種類の表記では、音と文字の対応が明確な仮名が保たれ、意味との関連が深い漢字の読み書きが特異的に障害されます。

書字については、同音だが異義の文字を選択して書く類音的錯書(例:鉛筆→「円筆」)が音読では特に熟字訓と呼ばれる単語全体を訓読み

する熟語で類音的錯読(例:案山子→「あんざんし」)が認められます。

語義失語の病巣は下記を参照ください。
語義失語の病巣



失語症の病巣と症状





失語症の病巣と症状

ブローカ野
喚語、文法的理解に重要な領域です。
ブローカ領域限局の損傷では超皮質性感覚失語症を呈するとの報告がある。

中心前回下部
なめらかな発話の実現には中心前回下部が特に重要な部位です。
中心前回の中部から下部の領域にかけてが、純粋語唖(アナルトリー、発語失行)の責任病巣と考えられている。

補足運動野、前頭葉背外側
発話の自発性には前頭葉内側からブローカ領域周囲に至る機能システムが重要です。
損傷されると語列挙能力が低下します。
この部位の損傷は超皮質性運動失語を生じます。
内側部の損傷では内言語障害は伴わず、発話衝動性の低下、発話維持困難の障害されます。
背外側部の損傷ではそれに加えて文構成能力の低下や喚語困難が混在します。

ウェルニッケ野
語音の認知に関与する領域(上側頭回)です。
横側頭回で音の基本的な音響学的な分析の段階に続いて、ウェルニッケ野に保存されている音素の記憶と照合します。
語音弁別の機能局在です。
ウェルニッケ領域限局の損傷では軽症のウェルニッケ失語に留まることが多いとされています。

縁上回
音韻の組み合わせと配列に重要な役割があります。
音韻性錯語と言語性短期記憶障害の機能局在です。
伝導失語の責任病巣は縁上回です。

角回
角回損傷では読み書きの障害を呈します。
角回近傍も喚語に関与すると推測されます。
角回の後方では読みの障害が強く、角回の上方では書きの障害が強いと言われいます。

中側頭回
語義理解、喚語に関与する領域です。
語音のカテゴリー的判断を行う領域です。
単語理解において、同カテゴリー図版を用いたpointing課題において有意に低下します。

被殻
被殻に限局した病巣では失語は出現しないか、軽度の喚語困難を呈するにとどまります。
失語症の発現には進展方向が重要となります。
出血の場合は血腫量が35㎖以上で予後不良とされています。

視床
視床はすべての大脳皮質と連絡を持っている。視床出血においては、あらゆる高次脳機能障害が出現する可能性があります。

軽度の語想起障害、書字障害、計算障害が残ることがあるが、主として注意の障害に起因すると考えることが妥当とされています。



日常生活機能評価





日常生活機能評価

日常生活機能評価とは、寝返りや他者への意思の伝達など、日常の基本的動作の13項目について、3段階で評価するものである。できれば0点、できなければ1点あるいは2点というように、019点で評価する。得点が低いほど、生活自立度が高くなる。整容や入浴、排泄、トイレ動作などの項目はない。
日常生活機能評価表は、ハイケアユニットで用いる「重症度・看護必要度の評価票B項目」とまったく同じものである。

評価表と評価手引きはこちら↓


迷いやすい点を下記に記載する。
「どちらかの手を胸元まで持ち上げられる」
できる:いずれか一方の手を介助なしに胸元まで持ち上げられる場合をいう。座位ではできなくても、臥位ではできる場合は、「できる」とする。
できない:調査時間内を通して、介助なしにはいずれか一方の手も胸元まで持ち上げられない場合、あるいは関節可動域が制限されているために介助しても持ち上げられない場合をいう。

座位保持
できる:支えなしで座位が保持できる場合をいう。
支えがあればできる:支えがあれば座位が保持できる場合をいう。ベッド、車いすなどを背もたれとして座位を保持している場合、「支えがあればできる」となる。
できない:支えがあったり、ベルトなどで固定しても座位が保持できない場合をいう。ここでいう「支え」とは、いす・車いす・ベッドなどの背もたれ、手による支持、あるいはほかの座位保持装置などをいう。

口腔清潔
できる:口腔清潔に関する一連の行為すべてが自分でできる場合をいう。
できない:口腔清潔に関する一連の行為のうち部分的、あるいはすべてに介助が行われている場合をいう。

食事摂取
介助なし:介助・見守りなしに自分で食事が摂取できる場合をいう。はしやスプーンのほかに、自助具などを使用する場合も含まれる。食止めや絶食となっている場合は、介助は発生しないので「介助なし」とする。
一部介助:必要に、食事摂取の行為の一部を介助する場合をいう。また、食卓で食べやすいように配慮する行為(小さく切る、ほぐす、皮をむく、魚の骨をとる、ふたを外すなど)が行われている場合をいう。必要に応じたセッティング(食べやすいように配慮する行為)など、食事中に1つでも介助すれば「一部介助」とする。見守りや指示が必要な場合も含まれる。
全介助:自分ではまったく食べることができず全面的に介助されている場合をいい、食事開始から終了までにすべてに介助を要した場合は「全介助」とする。


「どちらかの手を胸元まで持ち上げられる」では,関節拘縮のために胸元に腕があるが、
手を動かせない場合は「できない」となる。
「座位保持」では、寝た状態から座位に至るまでの介助の有無は関係ない。
「口腔清潔」における一連の動作とは、歯磨きの準備から後片付けまでを言う。
「食事摂取」では、準備行為や後片付けは介助に含まれない。経管栄養の一連の行為は「全介助」となる
装具などを使用している場合は、装具を装着した後の状態に基づいて評価を行う。
医師の指示によって、当該動作が制限されている場合には、「できない」または「全介

助」とする。



痴呆症から認知症へ





痴呆症から認知症へ

従来、わが国では「痴呆」という用語が広く用いられて来たが、この呼称が認知症の人の「尊厳の保持」という姿勢と相容れないという意見が出され、呼称の見直しに関する要望書が20044月に厚生労働大臣に提出された。


その後、4回の検討会を経て「認知症」という用語が提唱されるに至り、同年12月に厚生労働省老健局通知によって「認知症」という呼称が行政用語として用いられるようになり、さらに関連学会においてもこの用語の使用が承認されて医学用語として使用されるようになった。



右半球損傷患者 特徴





右半球損傷患者 特徴

• 話し手の気持ちや意図を推測できない。
• 遠まわしな言い方では理解できない。
• 場にふさわしくない行動・言動をとる。
• 自己中心的で一方的な行動・発言をする。
• 深刻みが足りず、どこか人事で真剣みが感じられない。
• せっかちでせわしなく、落ち着きがない。
• 言語機能は良好で、きちんと説明することができる。
• ことばと行動が食い違う。
• よくしゃべるが何を言っているかわかりにくい。
• 病識が不十分。

• 表情が少なく、笑顔が自然でない。



右半球症状 運動速度の調節の障害





右半球症状 運動速度の調節の障害

同じ姿勢を続けられない、じっとしていられない(運動維持困難)。
ゆっくり行動できない、速度が速くなってしまう(ペーシング障害)。
これらの障害があると、生活場面で、動作性急、衝動的、せっかち、じっとしていられない、などを示す。

注意障害との関連性が高いとされている。



左半側空間無視の症状





左半側空間無視の症状

• 日常生活で左側への不注意を示す
• 左側を向こうとしない
• 食事場面で,左側に置かれたものを食べ残す
• 車椅子操作時,左側の壁にぶつかる
• 車椅子からの移乗時,左足をフットレストに乗せたまま立ち上がろうとする
• 車椅子の左側のブレーキをかけ忘れる
• 着衣時,左側の裾が乱れる
• 歩行時,左側のものを見落とす
• 左側からの刺激に気がつかない


失語症患者との会話で必要な技術





失語症患者との会話で必要な技術

環境の設定
会話を行う場所や、対象者との位置を考慮できる。

基本的態度
対象者との会話時に、視線を合わせる、表情を豊かにする、口元を示す、適切なあいづちを打つなどの基本的な態度をとることができる

声の出し方
声の大きさ、話す速度、声の高さ、イントネーション、アクセントを適切に調節できる。

話し方
発音をはっきりさせ、語尾や文末までしっかり発音し、文節の区切りや会話の間を適切にとることができる。
大人に接する時の話し方で話し、適切な丁寧語を用い、分かりやすいことばや文、正しい文法で話をすることができる。

伝達手段
話しことばだけで通じないときは、他の手段を用いることができる。
質問形式 wh質問・選言質問・yes-no質問を適切に使い分けることができる。

失語症患者とのコミュニケーション
• 短くはっきりした話し方を心がける
• 抑揚を豊富に用いる
• 身振りを使用する
• 実物、現場にて具体的に話す
50音表は通常用いられない
• 仮名より漢字の理解が容易

• 喚語困難の重症度に合わせ質問形式を変える



失語症の重症度





失語症の重症度

軽度
日常会話であれば、概ね自分の言いたいことを伝えられる。
専門的な話、職業の話になると、十分にやり取りできない

中等度
日常会話において、一部自力で伝えられるが、不十分で、聞き手の誘導や推測が必要となる。

重度
自分から話したり書いたりすることは困難で,やり取りすることができない。


失語症の発話の障害について





失語症の発話の障害について


流暢か非流暢か


流暢な失語



  • スラスラ話す(プロソディ障害なし)
  • 文が長い
  • たくさん話す(発話量が多い)
  • 発語失行がない
  • 後方病変例が多い

非流暢な失語



  • トツトツと話す(プロソディ障害あり)
  • 文が短い
  • あまり話さない(発話量が少ない)
  • 発語失行がある
  • 前方病変例が多い

発話症状


喚語困難


いいたいことを必要に応じて喚起することができない


迂回反応


用途などを説明する。
例:「えんぴつ」→「字を書くもの」


音韻性錯語


語中音が他の音になる。
例:「えんぴつ」→「えんぽつ」


意味性錯語


他の語に置き換わる。
例:「えんぴつ」→「消しゴム」


新造語


語の意味が推測できない。
例:「えんぴつ」→「さねとり」
*障害のタイプにより、生じる誤り方が異なる


文の発話の障害


失文法(非流暢失語に出現)


助詞や助動詞が脱落し実質語だけ産生される
例:「明日は休みます」→「明日、休み」電文体


錯文法


助詞の使用の誤り
例:「えんぴつで字を書く」→「えんぴつが字で書く」

ジャルゴン:意味をなさない発話(流暢失語に出現)



①未分化ジャルゴン


語の区切りがはっきりしない
例:「はれでてのけんとででんとねれ・・・」


②新造語ジャルゴン


内容語の多くが新造語に成る
例:「とでめで、はるったんで、それでかごねったんですよ」   


③意味性ジャルゴン


発話が語性錯語から成る
例:「雨が、それで車から食べてるの」



せん妄とは





せん妄とは、全脳を巻き込んだ、軽度~中等度の意識混濁を基盤として、注意や知覚などの認知機能、情動など、種々の系統の精神活動が障害された状態であり、これらの症状が、亜急性に出現し、経過中に動揺を繰り返すのが特徴です。

全脳を巻き込む症候であるせん妄は、可能な限り早期に発見・診断し、治療に繋げなければいけません。

その評価尺度には、NEECHAMCAMDRS(DRS-R-98)MDASなどがあり、用途に応じて使い分けます。

状態評価として、脳波や眼球運動などの生理学的検査や睡眠・覚醒周期の記録表が有用です。


また、せん妄の原因は、直接因子・誘発因子・準備因子に分けて評価し、特に直接因子に関しては、基礎にある身体疾患や使用薬物など同定が必要です。