舌根沈下の対応
●急性期意識障害下での舌根沈下については救急処置が重要となる。
●安定期になって意識障害がない状態でも舌根沈下を起こしている患者での対応について
問題は口呼吸になっていることだが、その原因として、小下顎症などの顎形態異常、扁桃肥大やアデノイドによる咽喉頭異常、鼻中隔弯曲症や副鼻腔炎、ポリープなどの鼻疾患といった器質的な原因がある場合があるので、耳鼻科に相談すると良いだろう。
また、肥満やベンゾジアゼピン系の睡眠薬などの影響もあるので、注意する必要がある。
舌根沈下を防ぐ体位を工夫することも重要となる。舌根沈下の患者を仰臥位にすると、肩枕などを利用しない限り、どうしても舌根沈下してしまう。そこで耳介や鼻や口が圧迫されないような円型枕などを工夫して、右側臥位や腹臥位をとらせる場合もある。これにより舌根沈下を防ぐことができ、口を閉じれば鼻呼吸の誘導もできることになる。少なくとも日に何度か腹臥位をとることは、沈下性肺炎の予防や排痰にも非常に有用である。
患者が指示に従える状態であれば、表情筋や舌のリハビリテーションも行ったほうが良い。絶えず口呼吸になっている患者ではとくに口輪筋が弱っており、唇を閉じにくく舌の筋肉も緩みがちになる。そういった症状の患者には、舌を思いきり前に出す運動や、唇をきつくすぼめた状態にして舌で上あごを強く押し上げる運動などは効果的と言われている。
また、自費対応となるが、歯科に依頼して下顎が後ろに落ち込んで舌根沈下をきたさないように、下顎を少し突き出した形で歯形をとりスプリント(マウスピース)を作製してもらう対応もある。
舌根沈下で低酸素状態が続くと全身に悪影響を及ぼし、高血圧や心血管疾患、糖尿病などになりやすくなったり、昼間の眠気から昼夜逆転や転倒・転落事故につながることもありますので、舌根沈下に対しの対応は、非常に大切なことである。