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発語失行 apraxia of speech

発語失行 apraxia of speech

「発語失行」は、「脳損傷の結果音素の随意的産生のために発話筋群の位置づけ(positioning)と筋運動の系列化をプログラムする能力が損なわれたために生じる構音の障害である」とDealDarley)により定義されています。

「発語失行」は「話す」モダリティーに限定された純粋型の障害であり、すべてのモダリティー(聞く、話す、読む、書く)にわたる言語機能の障害である失語とも、発話運動に関わる神経・筋の障害である運動障害性構音障害(dysarthrla)とも異なる高次の発話運動障害と考えられています。

「発語失行」は、多様な症候である可能性に加えて、実際にはdysrthrlaや失語を合併する場合がほとんどです。

鑑別診断のために、自発話の観察や負荷発話試験失語症検査を行います。
自発話は、問診や会話の中で、声・構音・プロソディー(音の長さ、音の強さ、音の高さ、リズム、発話速度断綴性(音節のとぎれ))の観察を行います。

負荷発話試験では、
     母音の引き伸ばし(できるだけあーと言い続ける)
     単音節の繰り返し(パパパパ、タタタタ、カカカカ)
     3音節の繰り返し(パタカパタカパタカ)
を行います。
①では発声持続の特徴、声質声量などをみます。②では、主要な構音器官の交互反復運動の速さ・正確さ・リズムをみます。③でも、速さ・正確さ・リズムをみますが、異なる構音器官を順次に用いるので②より高位の神経機構が関与します。

合併する失語の有無や重症度によって実際の症状の様相がかなり異なることにより、鑑別診断には高度の技術を要します。

構音障害(dysarthrla)では、声に何らかの異常が現れます。
声量低下・発声持続時間の短縮、声質の変化(気息性、粗槌性、努力性、無力性)などです。
これに対して発語失行では、声には異常がみられず、声質・声量・発声持続とも正常です。例外としては、発語失行でも病初期や非常に重度の場合、発声も随意的にはできないことがあります。

発語失行における音の誤りは、歪みや置換が多く、誤り方に一貫性効果(同じ音や語をいつも誤る傾向)と変動性効果(同じ語語の位置で、その時により誤り方が異なる傾向)がともに認められます。

dysarthriaはタイプにより誤りの一貫性が高いもの(麻痺性)と一貫性が乏しいもの(失調性)とがあります。

dysarthriaでは、単音節の繰り返しで構音の速さ・正確さ・リズムのどれかに異常が必ず現れるのに対して、純粋発語失行では、単音節の繰り返しで開始時つまずきがあってもいったん繰り返しが可能になると正常な速度・正確さ・リズムになります。これに比べて3音節の繰り返しは発語失行では非常に困難となります。

失調性ディサースリアでは、3音節の繰り返しで、初めは可能でも続けるに従いリズムが乱れ不正確になるのが特徴です。

失語でも伝導失語などではこの3音節の繰り返しが困難になります。

発語失行と失語が合併した場合、軽度および中等度の発語失行患者については、重度の失語がない限り、発語失行の診断は比較的容易です。Wertzらの“発語失行の4症候

     努力と試行錯誤と探索を伴う構音動作と自己修正の試み
     正確なリズム、ストレス、イントネーションの範囲と思われないプロソディーの異常
     同じ物を繰り返し発話するときの構音の一貫性の欠如
     発話開始の困難

をもとに発語失行を診断すればおおかたは間違いないとされています。
なお重度の発語失行患者については、これら特徴は当てはまらないことが多いです。

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