複合性局所疼痛症候群 (complex regional pain syndrome, chronic regional pain syndrome:CRPS)





複合性局所疼痛症候群 (complex regional pain syndrome, chronic regional pain syndrome:CRPS)

●複合性局所疼痛症候群とは、外傷などによる組織損傷後に、その原因事象の程度とは不釣合いに強くかつ長期に渡って持続し、原因事象と直接因果関係のない浮腫・皮膚血流変化や発汗異常を伴う慢性疼痛症候群であり、時に重度の運動障害をきたす。
●従来、四肢の外傷後、その部位や程度とは一致しない激しい慢性の疼痛を生じ、浮腫や血管運動異常など交感神経症状を伴うものを反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy:RSD)と呼び、外傷が神経損傷に及ぶ場合をカウザルギー(causalgia)と呼んでいた。1994年の世界疼痛学会では両者を統合して、複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome, chronic regional pain syndrome:CRPS)とし、RSDをtypeⅠ、カウザルギーをtypeⅡとした。
●医療行為に伴う報告事例:神経近傍を穿刺する手技(動脈穿刺、神経麻酔時)、静脈穿刺時、鎖骨下静脈穿刺時、静脈点滴、造影CT、ペースペーカー植込み時など
●静脈穿刺における発生頻度:軽症も含めると静脈穿刺の約6000人に1例、重症例は150万人に1例

複合性局所疼痛症候群を防ぐための対策
●手関節付近での穿刺はさける
●必要以上に深く穿刺しない
●同じ箇所を何回も穿刺しない
●神経刺激症状が出現したらすぐに抜針する

複合性局所疼痛症候群(CRPS)の診断基準
次の①、②、③を満たすこと。
① 障害の程度とは一致しないような痛み、異疼痛(allodynia)、痛覚過敏
② 痛みのある部分にある時点で浮腫、皮膚血流の変化、汗腺刺激性の活動を示す状態が発生すること
③ 痛みと機能不全の程度を説明するような他の状態がないこと 上記の痛みに関係した神経の障害がない場合はtypeⅠ(RSD)、ある場合はtypeⅡ(causalgia)と分類される